約145万年前、ヒトがヒトを解体していた痕跡を発見。共食いをしていた可能性
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今から145万年前、ヒトがヒトを解体し、空腹を満たすためにその肉を食べていたのかもしれないという痕跡が発見された。
ケニア北部のトゥルカナ地方で発掘されたヒトの左足の脛骨には、いくつもの傷が残されている。
アメリカ国立自然史博物館をはじめとする古人類学者チームがこれを分析したところ、その傷が石器によって付けられたものであることがわかったという。
『Scientific Reports』(2023年6月26日付)に掲載された研究は、当時のヒトがヒトを食べていたことを示す、最古の事例であると報告している。
・145万年前の人骨に残された傷
問題の人間の化石は、ケニアのナイロビ国立博物館に所蔵されているものだ。それはヒトの左足の脛骨で、脛や膝の部分がしっかりと残っている。
アメリカ国立自然史博物館の古人類学者ブリアナ・ポビナー氏らは、元々大昔の人間がどんな動物に食べられていたのか知るためにこれを調べてみた。
ところが、その骨に残されていた傷跡は動物に食べられたというよりも、道具で切断されたようなものだったのだ。
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ケニアのナイロビ国立博物館に所蔵されている145万年前のヒトの脛骨には傷跡があるのがわかる/ image credit:JENNIFER CLARK
その骨の傷は何によって付けられたのか?
この謎を解くために傷跡を3Dスキャンしてモデル化し、石器・動物の歯・動物に踏まれたなど、原因がわかっている他の骨の傷跡898点と比べてみた。
すると、ケニアの化石についていた11点の傷のうち9点は、石器によってついた傷跡とピッタリ一致することがわかったのだ(残りの2点は、おそらくサーベルタイガーのような大型猫科動物に噛まれたもの)。
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脛骨についていた傷跡の拡大図 / image credit:Briana Pobiner・ヒトがヒトを食べていた最古の証拠となる可能性
この化石が誰なのかははっきりしない。78万年前に焼き魚を焼いたことで知られる「ホモ・エレクトス」か、あるいは「ホモ・ハビリス」や「パラントロプス・ボイセイ」だったかもしれない。
またその骨に石器で傷跡をつけたのが、同種なのか、それとも別の種だったのかもわからない。
いずれにせよ、その切り傷がふくらはぎの肉付きがいい部分に集中していることから、石器でまとまった量の肉を削ぎ落とすときについた考えられている。
削ぎ落した肉は食べられていた可能性が高いという。
なぜ彼らは共食いを行ったのか?その理由ははっきりしないが、ポビナー氏らは、空腹を満たすためだったと推測している。
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3Dモデル化された骨の傷跡。その形状は石器によるものとピッタリ一致する / image credit:MICHAEL PANTE・空腹を満たすためではないとする説も
だが、「空腹を満たすために食べた」という説に対する異論もある。
カタルーニャ人類古生態学・社会進化研究所の動物考古学者パルミラ・サラディエ氏は、「足の骨の一部に石器で切り込みを入れただけでは、空腹を満たすために肉を切り取ったと断定できない」と反論する。
たとえば、なんらかの儀式のために肉を切り取った可能性や、戦いで破った敵の肉を口にした可能性、あるいはあくまで補助的な食料として食べた可能性など、いろいろなケースが考えられるという。
問題をより複雑にしているのは、この足の骨がもともとあった状況がよくわからないことだ。
この骨は、堆積物が侵食されたおかげで見つかった。
約150万~160万年前の火山灰層のすぐ上にあったことから、その当時のものだろうと推定されたが、本当はその地層よりもう少し新しい地層に埋まっていたのではという意見もある。
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image credit:Briana Pobiner
今回と似たケースとして、2000年に、南アフリカで見つかった骨にもヒトがヒトを食べたらしい跡があると報告されている。
骨は150万年から260万年前のもので、その上あごにはやはり切り傷らしきものが残されている。この報告によれば、下あごを切除するために筋肉を切ったときについたものだという。
だが、こちらの化石もやはり、発掘される前に動物に踏みつけられたり、岩にこすりつけられたりしてついた傷ではないかと疑う声もある。
はたして古代の人間たちは人間の肉を食べていたのか?
決定的なことはまだわからないそうだ。
References:Early Pleistocene cut marked hominin fossil from Koobi Fora, Kenya | Scientific Reports/ written by hiroching / edited by / parumo
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