AIの力を利用して動物たちの言葉を理解しようと試みる研究者たち
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悲しいことに動物は人間の言葉を話すことができない。動物たちの言葉(鳴き声)や仕草がわかったら、もっとより良い共存の形を営めるだろう。
そこで登場するのがAIだ。英セント・アンドリューズ大学のクリスチャン・ルッツ教授が率いる国際的研究チームは、さまざまな言語を翻訳してくれるAIを使って、動物たちの言葉の解読に挑んでいる。
『Science』(2023年7月13日付)に発表された論文によると、AIの発展のおかげで、クジラ・カラス・コウモリといった動物たちの言葉の解読に、もうすぐ挑戦できるところまで来ているのだという。
・動物たちの言葉を理解するには?
動物たちは鳴き声や仕草で仲間同士でどんな話をしているのか? そんな彼らとおしゃべりできるようになる日は来るのか?
こうした想像は、動物好きな人ならきっとワクワクすることだろう。
だが残念なことに、動物の鳴き声や仕草の意味が書かれた辞書は存在しない。犬や猫の言葉を翻訳するアプリやツールなどは存在するが、精度が高いわけではない。
もしも彼らがどんな話をしているのか真剣に知りたければ、観察と実験を繰り返して動物のコミュニケーションを解読するしかない。
実際そうした研究も着実に進んでいるが、それはとても根気のいる作業だ。
鳥・クジラ・サルといった高度なコミュニケーション能力のある動物たちの”言葉”を録音して、その意味を分析するのはとても時間がかかる。
たとえその言葉の意味がわかったとしても、それを聞き分けるのは経験豊富な動物学者だって苦労する。
だが外国語をいともたやすく翻訳してしまうAIなら、動物の言葉を人間にわかるように通訳しれくれるかもしれない。
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・AIに動物の言葉を解読させる試み
AIの機械学習は、データに隠されたパターンを認識し、そこからコンテンツを作り出す強力なツールだ。AIチャットボットなどを通じて、そのことを実感している人はたくさんいるだろう。
そこでセント・アンドリューズ大学のクリスチャン・ルッツ教授らは、音声や映像として記録された動物のシグナルをAIに分析させ、そこにどのような意味が込められているのか解読しようとしている。
このとき一つ大きな問題となるのは、AIが機械学習をするには膨大なデータが必要になることだ。
たとえば、ChatGPT-3では、数千億の「トークン」(単語に相当する)を使って学習している。
この研究に参加する言語科学者ダミアン・ブラシ博士(ハーバード大学)は、その量について「チャールズ・ダーウィンの『種の起源』と同じ長さの本200万冊以上に相当」すると説明する。
それに匹敵する野生動物の言葉のデータを集めるには、何かクリエイティブなアイデアが必要になる。
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・AIを使った動物の音声解読プロジェクト
現在、いくつかの種では、そうしたデータを集めるための大規模な取り組みが行われている。
たとえば「Project CETI」では、マッコウクジラが主な研究対象だ。
研究チームの1人で、Project CETIのAIを担当するマイケル・ブロンスタイン教授(オックスフォード大学)は、こう説明する。
マッコウクジラの豊かなコミュニケーション行動すべてを把握するために、生物からヒントをえたタグや水中ロボットなど、さまざまな方法を駆使しています
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また、こうした研究でカギとなるのは、コミュニケーションの文脈を理解することだという。
「動物の会話を理解したいのなら、誰が誰に対して、どのような環境や社会のもと話しているのか知る必要があります」と、コウモリの声を研究するソニア・ヴェルネス教授(セント・アンドリュース大学、マックス・プランク心理言語学研究所)は説明する。
「機械学習は、動物がどのようなシグナルを使い、そのシグナルが何を意味しているのかを発見する手助けをしてくれます」
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同じく研究チームのメンバーであるセント・アンドリューズ大学のアザ・ラスキン氏とキャサリン・ザカリアン氏は、失われたカラスの声を取り戻そうとしている。
彼らが設立した「Earth Species Project(ESP)」では、絶滅の危機にあるハワイガラスの鳴き声のバリエーションを解明しようとしている。
ハワイガラスの生き残りは、サンディエゴ動物園の施設で飼育されている。こうした地球最後の個体の鳴き声を、機械学習によって過去の音声記録と比較するのだ。
ESPが目指すのは、こうした研究を通じて失われた鳴き声を復活させることだ。「こうした文化的な復興は、この研究がもたらす恩恵の最たるものです」とラスキン氏。
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絶滅の危機にあるハワイガラス / image credit:public domain/wikimedia・動物の言葉がわかれば、人間とより良い共存ができる
また、動物の言葉やコミュニケーションの理解が深まれば、彼らの飼育環境もっといいものにしたり、野生生物をもっと効果的に守ることができる戦略を考案したりできると期待されている。
動物たちの声に耳を傾けることで、彼が今幸せなのか、それとも不幸せなのか知ることができるからだ。
だがザカリアン氏の望みは、ただ動物の言葉を解読するだけでなく、それによって人類全体の文化をもっと優しいものにすることだ。
「最終的には、同じ地球で一緒に暮らしているさまざまな生き物を、もっと尊重するような文化へと変えていきたいと思っています」
研究者の熱意が実を結び、いつか動物たちの言葉や仕草の意味を理解できる日がくるかもしれない。
最初は高度な知能とコミュニケーションを持つ動物たちが対象だが、いずれは身近な存在である犬や猫のペットなどの気持ちがわかるようになれば胸熱だ。
References:Science / The code breakers: Harnessing the power of AI to understand what animals say / written by hiroching / edited by / parumo
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