「ここは誰も排除しない場所なんです!」なすびさん(23)「秘境と呼ばれるビルを撮った女の巻」珍談案内人・吉村智樹のこの人、どエライことになってます! (2/2ページ)
ただ、刺激的なポスターやオブジェ、タトゥーを入れた人も写っているため、実は一度、印刷を断られているんです」
20代の若さながら、印刷所も躊躇する写真集をよくぞ上梓したと、多くの称賛の声が挙がっている。最近は外国人観光客が、この写真集を手に三ツ寺会館を訪れるという。ウワサは海外にまで広がっているのだ。
なすびさんは長崎県出身。空間デザイナーの父、ハウステンボス専属カメラマンをしていた母のもとで育ち、なんと9歳でカメラの操作を覚えた。高校時代に外海海岸の教会群を撮影した写真が県展で入選し、そこから破竹の勢いで、さまざまな新人賞を獲得した。
写真の勉強のため故郷を離れ大阪芸術大学の写真学科に入学。知人に連れられてやって来たのが、この三ツ寺会館。建物の古さと独特な雰囲気に初めは抵抗感があったが、自由に過ごす客たちの人柄にひかれ、いつしか従業員になった。
「プロレス、競馬、麻雀、政治、宗教、音楽、みんな誰に気兼ねすることなく好きな話をしている。私は知り合いがまったくいない大阪に一人で出てきて、孤立感があったんです。けれども三ツ寺会館は、どんな人も排除しない。そこに救われました。そして次第に愛着が芽生えたんです」
生きづらいと感じているあなた、一見、近寄りがたいこのビルに、探し求めた止まり木があるのかも。
よしむら・ともき「関西ネタ」を取材しまくるフリーライター&放送作家。路上観察歴30年。オモロイ物、ヘンな物や話には目がない。著書に『VOW やねん』(宝島社)『ジワジワ来る関西』(扶桑社)など