親友か平安時代のBLか? 安倍晴明と深い仲だった笛の名手・源博雅が持つ不思議な能力【後編】
NHK大河ドラマ「光る君へ」で注目の陰陽師・安倍晴明(ユースケ・サンタマリアさん演)。
日本で一番有名な陰陽師として昔から大人気ですが、そんな晴明と友情ともBLとも感じさせるような深い関係にあるのが、貴族で管弦の天才・源博雅(みなもとひろまさ)です。
楽器の天才で貴族でありながらおおらかな博雅は、当時人々に恐れられていた鬼と楽器をめぐり腕を競い合う……など、不思議能力を持っていました。有名な話をご紹介しましょう。
【前編】の記事はこちら
村上天皇の時代、皇室に代々伝わる宝物「玄象」という琵琶が忽然と消えてしまいました。
かけがえのない琵琶が自分の代で失われてしまうこと、ならず者の仕業で壊されてしまうのではという、天皇の嘆きぶりと心配ぶりを目の当たりにした源博雅も、玄象の紛失には心を痛めていました。
そんなある日の夜中、平安京の内裏にある清涼殿に博雅が1人でいたとき、南の方角からかすかに玄象の音色が。もう一度耳を澄ませても間違いなく玄象の音色でした。
管弦の達人・博雅が、玄象の音色を聴き間違えるはずありません。
急いで清涼殿を出て、音色を追いかけ朱雀大路を南へと進みたどり着いたのは羅城門でした。
てっきり盗人が羅城門の楼上に座り、玄象を弾いているのだろうと想像していたものの、
到着すると博雅は「人間の弾いている音色ではない。これは鬼が弾いている」と気が付きます。
「いったい誰が弾いておるのだ。天皇が玄象を探している。この音が聞こえたのでここまできたのだ」と羅生門の楼門に向かって叫ぶと、なぜか、上から紐で吊るされた玄象がそろそろと降りてきました。上にいて玄象を弾いていた「何者か」が、返してくれたのです。
玄象をしかと受け取り無事内裏に持ち帰った博雅。天皇はもちろんのことみなに賞賛されました。
当時、荒れ果てていた羅城門に夜中に出向くという行動力、妖や鬼か強盗か正体も分からないまま話しかける度胸、かすかな音色で玄象と特定できる判断力……
博雅の管弦の達人といわれるだけの能力と豪胆さに、実は鬼も驚き感嘆して玄象を返却したのかもと想像してしまいます。
鬼と笛の腕前を競う
『朱雀門の月』(月岡芳年『月百姿』)朱雀門の鬼と合奏する源博雅 wiki
ある月の明るい夜。朱雀門の前を、笛を吹きながらそぞろ歩いていた源博雅は、直衣(のうし/公家の衣装)姿で笛を吹きながら歩いている男と出会います。
耳を澄ませてみると、言葉では言い尽くせないほどの美しい音色だったので近寄ってみたところまったく知らない人物でしたが、2人は向き合いお互いに言葉を交わすこともなく、一晩中笛を吹きあったそうです。
あまりに見事な笛なので交換してもらったところ、いままで博雅が吹いたことのないような名笛だったとか。
その後、月夜のたびこの人物と笛を吹きあっていた博雅ですが、「笛を返せ」といわれないまま手元に残していました。
博雅が亡くなってから、笛は帝に譲られましたが、名手たちに吹かせても、誰も吹けなかったそうです。
そこで、浄蔵という名人が、朱雀門まで出向き笛を吹いたところ楼上から「やはりその笛は銘品であるな」との声が聞こえてきました。その声は朱雀門の鬼で、実は笛は鬼のものだったということが分かりました。
この笛は「葉二(はふたつ)」と名付けられ、天下の名笛として藤原道長に伝わり御物となり、藤原頼道が平等院を造営した際に経蔵に収めたそうです。
日が落ちると漆黒の闇に包まれる平安時代。
人々に恐れている存在だった鬼が、実は風流を好み弦楽の達人で、人だろうが鬼だろう「美しい曲を奏でる相手」には臆することもなく魅せられていく源博雅。
そんな博雅の才能やおおらかな人柄に鬼も、そして晴明も魅せられたのかも……と想像できるような、エピソードでした。
名器「玄象」を奏でる順徳天皇(中殿御会図) 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)
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