夜這いで危機一髪!”神の斎垣”を越えた紫式部の弟・藤原惟規のエピソード【光る君へ】

NHK大河ドラマ「光る君へ」皆さんも楽しんでいますか?
まひろ(藤式部。吉高由里子)の弟として何かと比べられながらも、飄々とマイペースを貫く藤原惟規(高杉真宙)。
筆者は彼が大の贔屓で、いつも登場回や場面を楽しみにしています。
話を戻して、第34回放送「目覚め」では姉のコネによって六位蔵人となった惟規。まひろにこんなことを言っていましたね。
まひろ「いい人がいるの?」
惟規「俺、神の斎垣(いがき)を越えるかも!」
あらまぁ……っ!と言わんばかりのまひろでしたが、視聴者によっては「何のこっちゃ」だったかも知れません。
という訳で、今回は藤原惟規の夜這いエピソードを紹介したいと思います。
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まずは「神の斎垣とは何ぞや」問題から。
斎垣とは聖域の境界を示す垣根を指します。俗人である惟規がそれを越えるということは、中に入るという意味に他なりません。
話の流れからして、惟規の目当ては女性。神の斎垣を越えるとは、聖域の中にいる女性に夜這いをかけることです。
ここで言う聖域とは賀茂神社(上賀茂神社および下鴨神社の両社)を指しました。
そこで斎院(さいいん)を務める選子内親王(せんし/のぶこ)に仕える女房の一人と恋仲になった惟規は、夜這いを決行したのです。
「誰ですか!?」
女房の局に忍び込んだ惟規は、家人に見咎められてしまいました。
(野暮だなぁ、見逃してくれよ)
惟規は声を発しなかったため、怪しんだ家人は侵入者を逃がさないよう、門扉を閉めてしまいます。
さぁ困りました。このままでは帰れません。惟規は女房に頼んで選子内親王にとりなしてもらいます。
惟規の歌才に感心
選子内親王の計らいによって無事に解放された惟規。お礼の代わりと言っては何ですが、こんな歌を詠みました。
神垣(かむがき)は 木の丸殿(このまるどの)に あらねども
名のりをせねば 人咎めけり【意訳】ここは木の丸殿ではないのに、名乗らないと家主に咎められてしまうのですね。
木の丸殿(朝倉橘広庭宮)とは天智天皇の隠れ家。訪れる者に対して、必ず先に名乗らせていたという故事がありました。
転じて「名乗らなくてすみません。ちょっと訳があったものでして……」というメッセージになります。
故事を踏まえて歌を詠んだことについて、選子内親王はたいそう感心したのでした。
終わりにかくして難を逃れた?惟規。捕まらなくてよかったですね。
何かとボンクラ扱いされがちな惟規ですが、こうした機転はちゃんと利きました。
ちなみに惟規が神の斎垣を越えた相手についてはハッキリしませんが、一説には中将の君(ちゅうじょうのきみ)ではないかと考えられています。
※紫式部が彼女の手紙を入手していることから、惟規と恋仲であった可能性があるとか。
第34回放送「中宮の涙」では、このシーンが描かれるような予告があったので、楽しみにしたいですね!
※参考文献:
『平安文学研究 第66輯』平安文学研究会、1981年11月トップ画像 右:大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより
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