「まだ産める状態」である私たちの葛藤。モヤモヤの先にあるいくつかの人生とは『私、産まなくていいですか』書評 (3/3ページ)
■幸せは「産む、産まない」で決まらない
第二話では子どもを持った人が離婚する話、第三話では再婚した人たちが不妊治療にチャレンジする話が描かれる。子どもを持つか持たないか、その選択を決断した人々のストーリーだ。
本を読んでみるともちろん、子どもがいるから幸せ、子どもがいないから不幸せだとかは語りきれないことなのだということが分かる。子どもを産めない年齢になったとしても、犬を飼うのもいいし、先進的な不妊治療だってある。養子を持つという選択肢もある。
要は、これだけある選択肢の中から「自分に最良の選択」を選び抜かなければならないことが難しいのだなあと思った。今は昔より自由になって、子どもを持たないことで指される後ろ指の数は減っているのかもしれない。
だからこそ、本気で「持たない」と決めている人にとっては生きやすい社会になったのかもしれない。だけど、福沢諭吉も“自由は不自由の中にある”と言っていた。本当になんでも選べるとなってしまうと、全てに選択と決断、責任がついて回る。
しかしどの物語の中でも、登場人物たちが必死にもがいている姿には愛おしさを感じた。どんな選択をしても大変なことはあるのかもしれないが、だからこそ私たちは、どんな決断の先にもやるべきことをやれるのではないかと思う。
それと同時に、人同士のつながりの温かさも感じられる登場人物たちの関わり方に、甘糖さんの優しさも感じられた。子どもに関してどんな選択をしたとしても、私たちは一人きりになってしまうわけではない。だからこそ一人ひとり、自分はどうありたいのかは、じっくり考えてみてもいいのだと思う。
やってみないと分からないことは、手前でいくら考えてもきっと分からない。だけど、この本はその先の“一例”を教えてくれている。人生の選択に悩んだ時、人と人のつながりに温かさを思い出したい時に、手に取ってみてほしいと思う。
(ミクニシオリ)