瀬川の想いが結晶に!蔦屋重三郎『伊達模様見立蓬莱』はどんな物語か?実際の作品内容を紹介【大河べらぼう】
蔦屋重三郎(横浜流星)が「ある人と一緒に考えた」物語を、苦心の末に書き上げました。ある人とは、言うまでもなく幼馴染で初恋の瀬以(五代目瀬川。小芝風花)です。
恩が恩を呼ぶ物語の名は『伊達模様見立蓬莱(だてもよう みたてほうらい)』、これがサブタイトルの「さらば源内、見立は蓬莱」に回収されていました。
諸説ある平賀源内(安田顕)の最期を紹介。孤独と狂気にハメられた天才…【大河べらぼう】第16回放送レビューところでこの物語、どんなストーリーなのでしょうか。今回は『伊達模様見立蓬莱』を紐解いてまいります。
一、娘を吉原遊郭へ売った万右衛門
殺生をやめ、亀を商うようになった万右衛門。『伊達模様見立蓬莱』より
今は昔し、江戸は深川の万年橋(東京都江東区)で、万右衛門(ばんゑもん)という男がウナギやスッポンを商っておりました。
この万右衛門、生活に行き詰まった末に、心ならずも娘を吉原遊郭へ売ってしまったのです。
それからと言うもの、少しでも功徳を積もうと思ったか、殺生を一切やめることにしました。もちろん商売であったウナギやスッポンも殺さず、ペットとして亀を商うようになります。
※近くの富岡八幡宮で行われていた放生会(ほうじょうえ)で放つための亀(放し亀)かもしれません。万年橋の名前も「亀は万年」に由来するという説もあるようです。
ニ、娘は梅ヶ枝花魁の禿に
松葉屋で梅ヶ枝花魁の禿となっていた娘。『伊達模様見立蓬莱』より
いっぽう吉原遊郭へ売られた娘は、松葉屋の花魁である梅ヶ枝(うめがえ)付の禿(かむろ。遊女見習い)となっていました。
聞けば娘は梅ヶ枝から大切に育てられているそうで、万右衛門は感謝を伝えるために松葉屋を訪ねます。梅ヶ枝は万右衛門の親心を喜び、万右衛門に三両を包んだそうです。
三、買い受けた大亀を海へ逃がす
梅ヶ枝花魁から三両を受け取る万右衛門。『伊達模様見立蓬莱』より
ありがたく三両をもらった万右衛門は、それを元手に房総半島の山奥に棲む伝説の大亀を買い受けました。
三両もの大金をはたいて買った大亀ですから、投資を回収したいのが人情というもの。しかし万右衛門はこの大亀を海へ逃がしてあげたのです。
恐らく大亀は元々海にいたところを、人間によって無理やり山奥へ連れて来られたのでしょうね。
四、大亀が梅ヶ枝を身請け
胸に「梅可え(梅ヶ枝)」と刻んで身請けを申し出る大亀。『伊達模様見立蓬莱』より
万右衛門に逃がされた大亀は恩義を感じ、この恩義を返そうと人間に姿を変えました。そして千両もの大金で梅ヶ枝を身請けし、竜宮城へ彼女を迎え入れます。
しばらく竜宮城で大亀と楽しく暮らしていた梅ヶ枝。しかしある日、かつて間夫(マブ。真夫)だった千州(せんしゅう)が沖で釣りをしているところを見つけました。
五、結ばれた梅ヶ枝と千州
大亀に身請けしてもらった恩義は感じていても、自分の心に嘘はつけません。
本心を打ち明けた梅ヶ枝を大亀は許し、彼女の幸せを第一に考えて地上に帰すことにしたのです。
かくして松葉屋へ戻った梅ヶ枝は、楼主の媒によって間夫の千州と結ばれたのでした。
めでたしめでたし。
恩が恩を呼ぶ物語
物語に幕を引く作者(蔦屋重三郎?)。『伊達模様見立蓬莱』より
……というストーリーでした。
物語のヒロイン梅ヶ枝は五代目瀬川を連想させ、彼女を身請けした大亀は、五代目瀬川を身請けした鳥山検校(市原隼人)を連想させます。
鳥山瀬川事件(鳥山検校が五代目瀬川を身請けしたものの、程なく失脚した事件)によって、それまでの悪行三昧もあって散々に書かれた鳥山検校。しかしこの『伊達模様見立蓬莱』では恩に恩で報いる大亀として描かれました。
大河ドラマを振り返る
鳥山検校の思いを受け止めた瀬以。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。
瀬川「検校は亀の化身ってどうだい? 助けた亀が恩返しに来るんだよ。で、瀬川は身請けされて竜宮城に行くのさ」
蔦重「浦島太郎じゃねえか」
瀬川「で、そりゃあもう楽しく遊んで、マブのところに帰るのさ」
蔦重「……」
瀬川「よその人は検校を悪役に書けるけど、わっちにはできないよ。わっちはそりゃもう大事にされたからさ。巡る因果は恨みじゃなくて、恩がいいよ。恩が恩を生んでく、そんなめでたい話がいい」
※NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第14回放送「蔦重瀬川夫婦道中」より
布団の中で、こんなやりとりがあったのをご記憶でしょうか。
劇中において、蔦重は去ってしまった瀬川の思いを結晶させるべく、この『伊達模様見立蓬莱』を自ら書き上げたという設定になっています。実際の作者は不明ですが、そう思わせずにはいられませんね。
終わりに
『伊達模様見立蓬莱』は、耕書堂にて絶賛発売中。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。
物語も新章に入って、いつまでも瀬川々々とは言っていられませんが、瀬川と蔦重が見た夢の結晶として『伊達模様見立蓬莱』を紹介させていただきました。
この作品を仕上げたことによって、瀬川への思いも一区切りつけられたのかも知れません。
瀬川ロスを乗り越えて、ますます男ぶりを上げる蔦重の活躍ぶりを、これからも見守っていきましょう!
※参考文献:
『見立蓬莱』国立国会図書館デジタルコレクション日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan
