名ばかり将軍たちの悲哀…室町幕府はなぜ ”ゆるブラック企業” 的な存在に?トップの無力ぶりを検証

Japaaan

名ばかり将軍たちの悲哀…室町幕府はなぜ ”ゆるブラック企業” 的な存在に?トップの無力ぶりを検証

「将軍」と聞くと、天下を治める絶対的な存在を想像しがちですが、室町時代の将軍たちはちょっと違いました。命令を出しても従ってもらえず、自分の立場すら守れない。周囲に気を遣い、権力を持っているようで実際には動かせない。――そんな「将軍が将軍じゃなかった時代」が、室町幕府の本質かもしれません。

この時代の将軍たちの姿を現代の感覚でたとえるなら、名刺の肩書きは立派なのに実務はすべて部下任せ。責任だけ重くて裁量のない“ゆるブラック企業の社長”のような存在です。

なぜ、将軍が将軍らしくふるまえなかったのか?

室町時代のしくみと歴代将軍たちの動きから、その理由を見つめ直してみましょう。

足利尊氏の幕開けは理想的だったはずが…

足利尊氏(Wikipediaより)

1338年、足利尊氏が室町幕府を開いたとき、そこには武士の手で秩序を取り戻そうという明確な目的がありました。

鎌倉幕府を倒したあとの「建武の新政」では、天皇による政治が期待されましたが、武士たちの現実とそぐわず、尊氏はその反動として新たな政権を打ち立てます。

ところが、始まって間もなくから問題が山積みでした。

弟の直義(ただよし)との対立、そして天皇が二人並び立つ「南北朝時代」の到来――。
すでにこの時点で、「将軍は政権の中心にいても安定して力をふるえない」構図が生まれていたのです。

義満の一時代を除いて、将軍は形だけの存在に

金閣寺

三代将軍・足利義満は、南北朝を統一し、日明貿易を始め、金閣寺も建てました。この時代だけは、将軍が政治・外交・文化すべてにおいて実権を持っていたといえます。しかし、それ以降の将軍たちは違いました。

政治の主導権は「管領」や「有力守護大名」といった家臣たちに握られ、将軍は儀礼的な存在になります。「将軍なのに、政治の舵取りができない」状況が当たり前になっていったのです。

社内トラブルから内乱へ──応仁の乱の構造

将軍家のなかで起きた跡継ぎ争いが、のちのち全国規模の戦争にまで発展することになります。とくに八代将軍・足利義政の時代に起きた「応仁の乱」(1467〜)は、その典型例です。

ごちゃごちゃして分かりにくい!、室町時代「応仁の乱」発生のきっかけと経緯、その結末を総まとめ

これは本来、義政の後継をめぐる家の中の問題でした。ところが、将軍の権威が弱く、家臣たちがそれぞれ自分の主張を通そうと動いた結果、京都を中心に長期戦へと突入。

もはや将軍は戦乱を止めるどころか、ただ見ているだけの存在になってしまいました。

家臣が将軍を「すげ替える」時代に

室町幕府の後半では、将軍が力を持たずに“立てられる存在”となり、家臣たちの都合で将軍が交代させられる「すげ替え」が行われるようになります。

たとえば、十代将軍・義稙(よしたね)は何度も将軍の座から追われ、復帰してはまた追放されるという“リピート就任”すら経験しています。

極めつけは、十五代将軍・足利義昭。織田信長に担がれて将軍となりますが、のちに信長と対立し、京都から追放されてしまいます。

流浪と反逆!室町幕府のラスト将軍・足利義昭の苦難と悲劇に満ちた壮絶人生【前編】

この時点で、将軍職はもはや「実権あるリーダー」ではなく、「使えるかどうか」で価値を決められる道具のような扱いだったといえるでしょう。

形式と実態がズレた組織の末路

こうした将軍たちの姿は、現代における“役職だけが立派な社長”に重なる部分があります。肩書きはあるけれど、実際の決定権は部下が持っている。責任だけは残り、信頼や実行力がともなわない。

それが“ゆるブラック企業”的な組織体質だったとも言えるのではないでしょうか。

けれども、このような不安定な時代の中で、地方の武士たちは自ら動き出す力を育てていきます。こうして「下剋上」が進み、やがて戦国時代が幕を開けていくのです。

将軍が将軍でいられなかった時代の意味

室町幕府は、将軍という制度がありながら、将軍がリーダーシップを発揮できない時代でした。けれどもその矛盾と混乱のなかから、「リーダーとは何か」「名目と実態はどうあるべきか」という問いが浮かび上がります。

この時代の将軍たちをただ「無力だった」と見るのではなく、時代の流れや制度の限界を映し出した存在として見ると、歴史の見え方が変わってきます。

“肩書きがすべてではない”。そう語りかけてくるような、静かな重みが室町将軍の背中にはあったのかもしれません。

参考文献

呉座勇一 著『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』(2016年 中央公論新社) 山田徹(他)著『鎌倉幕府と室町幕府 最新研究でわかった実像』(2022年 光文社) 渡邊大門 編『諍いだらけの室町時代 戦国へ至る権力者たちの興亡』(2022年 柏書房)

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

「名ばかり将軍たちの悲哀…室町幕府はなぜ ”ゆるブラック企業” 的な存在に?トップの無力ぶりを検証」のページです。デイリーニュースオンラインは、室町幕府足利尊氏室町時代将軍カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る