「べらぼう」蔦重、ついに覚醒!吉原者が“作り笑顔”で市中の地本問屋たちを確実に刺し返す!【前編】

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「べらぼう」蔦重、ついに覚醒!吉原者が“作り笑顔”で市中の地本問屋たちを確実に刺し返す!【前編】

「汚ねえやり方もありだって教えてくれたのは、西村屋さんなんで」……

耕書堂に文句を付けに来た地本問屋・西村屋(西村まさ彦)に、にこやかに言い返した蔦屋重三郎(横浜流星)。そして、同じく地本問屋・鶴屋(風間俊介)とは、静かな「微笑み」バトル。

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第20話『寝惚けて候』では、いよいよ、蔦重による市中への反撃が始まりました。

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耕書堂の主人となってからは、着物姿も風格が増し髷もきれいに整い、貫禄が身に付いてきた蔦重。

NHK大河ドラマ「べらぼう」公式HPより

今回は、「策士ぶり」が光るようになった蔦重、新しく目覚めた「狂歌」の魅力、心強き味方・太田南畝(おおたなんぽ/桐谷健太)の登場などに注目。「来し方」を振り返りつつ「行く末」を考察してみました。

「ふざけんじゃねえ…やったのみんな俺だろ!!」の反撃よ、今!

地本問屋・西村屋との確執は、『雛形若菜(ひながたわかな)』から始まりました。

呉服屋が売り込みたい着物を遊女に着させ、カラーの錦絵にした画集です。呉服屋にとっては着物の広告になるので「入銀」(本の購入予約者が先にお金を払う)させるという仕組み。遊女にとっても、自分の宣材になる写真集のようなものなので、顧客である呉服屋の旦那に入銀をねだります。

このアイデアは、平賀源内(安田顕)からヒントをもらい、蔦重が企画して本として形にします。ところがさっそく呉服屋に営業をかけても、知名度の低い蔦重が作る本には、なかなか話に乗ってくれません。

その頃、すでに有名だった西村屋が「一枚かませてくれ」といい、参加します。

有名な西村屋が参加したことで呉服屋たちも、次々に入銀を快諾。素晴らしい本ができあがるのですが、「西村屋」と「耕書堂」の連名で、江戸市中で本を売ることに鶴屋も鱗形屋(片岡愛之助)も反対します。そして、耕書堂の名前を外し「西村屋ひとり版元」で売ることになってしまいました。

亡八の旦那たちさえ「おめえさえ手を引けば丸く収まる」と言い出す始末。

「雛形若菜の初模様 金屋内うきふね」

アイデアも制作もすべて自分がやったのに、手柄だけを横取りされた蔦重。

「ふざけんじゃねえ…ふざけんじゃねえよ!やったのみんな俺だろ!!」の叫びは今だに忘れられ得ません。

200年以上経過した、令和の現代でも「無名の人間の企画や手柄を横取りする」というのは、出版業にかぎらず慣習のようになっているところがありますよね。蔦重の憤りがリアルに伝わってくる場面でした。

今回、策士・蔦重は、西村屋が作り続けている『雛形若菜』に対抗し、売れっ子絵師・鳥居清長そっくりの画風歌麿(染谷将太)に遊女の絵を描かせ、入金の値段も半額にしその名も『雛形若葉』として呉服屋の旦那にガンガンセールスをかけ、顧客を奪っていきます。

鳥居清長が描いた「雛形若菜」で花魁を描いた。最も人気のある花魁雛鶴(右から2人目)

『雛形若菜』の入銀キャンセルが続く中、さらに、西村屋は『吉原再見』を作らなければならないのに、二の次にして「改め」(新情報を収集して編集し直す)を疎かにし、妓楼屋から(たぶん、わざと?)渡された古い情報をそのまま載せクレームの嵐を受けてしまうという始末。

そこで、蔦重に「ずいぶんと汚ねえまねを」と文句を言いに、耕書堂を訪れたところ蔦重に返されたのが冒頭の言葉です。

「汚ねえやり方もありだって教えてくれたのは西村屋さんなんで」

手柄をすべて横取りされ、悔し泣きした蔦重を思い出すと、胸のすく思い。やり手になっていく新生・蔦谷重三郎の誕生を感じました。

「蔦谷さんが作る本など、何一つ欲しくはない」の言葉に微笑みバトル

さらに、鶴屋の「蔦谷などすぐ潰れる」と言う言葉を間に受け、耕書堂の本を置かなかった市中の本屋たちは、最近の蔦重の快進撃を知り怒り心頭になり、鶴屋に抗議します。

彼らが蔦重の味方になることを懸念して「耕書堂の本を置いていい」と認めます。

その「お礼」にと、わざわざ鶴屋を訪れる肝の太い蔦重ですが、鶴屋は「蔦谷さんが作る本など、何一つ欲しくはない」と、口元だけ笑みを浮かべ宣告します。

その「にべもない言葉」を受け、ふと視線を畳の上に落とす蔦重……と思いきや、口角を上げ、ふっと微笑み返します。「わかりました。鶴屋さんが取引したいと思えるような本を作るべく、精進します」と、堂々と澱みなく言い返しつつ、ぱぁ〜と花が咲いたような余裕の笑顔を返したのでした。

NHK大河ドラマ「べらぼう」公式HPより

大河「べらぼう」ドラマ特有の「光と影」の演出も効いて、お互いに静かにばちばちにやりあう場面は印象的でした。蔦重が、格段に、大人に、したたかに成長したのを感じます。

前回、完全に嫌われているのを承知で市中本屋の寄り合いに顔を出したときも、強心臓だなと感じましたが(でも、勢いよく襖を開ける直前に、自分を鼓舞するかのように口角を上げて、笑みを作っていましたね。)、今回も嫌われている鶴屋に直接単身で訪ねていく行動力とフットワークの軽さとメンタルの強さは、さすがです。

蔦重が満面の笑みを残して去った後、いつも不敵な鶴屋の「チッ」というちょっと悔しそうな顔も面白かったですね。

今回、「蔦重の耕書堂が出した本だから」という理由で取り扱えないことに不満を抱き蔦重の肩を持ち、鶴屋に掛け合うことに協力してくれたのが本屋・岩戸屋源八(中井和哉)です。

蔦重がお礼を言いつつ、売れる本をどっさり渡したついでに、「こんなのもどうです?」と手渡したのが、恋川春町(岡山天音)が描いた「100年後のお江戸」の本『無益委記(むだいき)』でした。

大河「べらぼう」に登場!恋川春町が江戸の未来を予想した「無益委記」実際の内容を全ページ紹介!

おかしな丁髷姿の男たちの絵を見て「おお!」と興味を惹かれた岩戸屋は、早速数十冊注文します。「ありがとうございます」とにこやかな蔦重。けっこう、したたかで人たらしな商売人の顔になってきたようです。

岩戸屋さんも、「面白い本は売って、たくさんみなに読んで欲しい!」という想いを持つ、“根っからの本屋”なんだなと感じました。

楠無益委記(恋川春町) 国立国会図書館,デジタルコレクション  URI https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100394876/

西村屋や鶴屋に対しての「煽り」の態度といい、すっかり、強気と自信が身に付いてきた蔦重。

ビジネスが絶好調なこと、弟のように愛する唐丸が生きて戻って来たこと、その才能をいかし歌麿として心強い相棒になってくれたこと、いろいろな人々が「チーム蔦重」となり盛り立ててくれることetc……そんな状況の変化が、蔦重に耕書堂の主人としての自信を授けたのだと思います。

17話から蔦重の新しい出版ビジネスの幕開けがスタートし、奇跡の唐丸との再会、敵対関係になっていた鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)との仲が修復、恋川春町(岡山天音)と組みヒット作を作れるようになりと、快進撃が続いています。

人気の狂歌師・太田南畝との出会いで新しい世界へ

さらに、今回は新しく「チーム蔦重」の大切な一員となる、寝惚け先生こと太田南畝と、「狂歌」という新しい世界との出会いがありました。これで蔦重の出版ビジネスは、さらなる飛躍を遂げることになったのでした。

大田南畝像(鳥文斎栄之筆、東京国立博物館蔵)

二人の出会いは、南畝が蔦重の本を自身の本で絶賛してくれたお礼を伝えに、南畝の家を訪れたことから始まりました。

これは史実でもその通りで、南畝の日記には、

「蔦屋の板にて 喜三二の作なりし故 蔦屋重三郎 大によろこびて はじめて わが方に 逢いに来けり」

と日記されているそうです。(「べらぼう紀行」より)
南畝のほうも、お江戸で有名になってきた吉原生まれの吉原育ち、若手の書店の主人蔦重に興味を持っていたのでしょうか。

「喜三二の作」とは、ご存じ朋誠堂喜三二(尾美としのり)の『見徳一炊夢(みるがとくいっすいのゆめ)』

本の売れ行きを心配していた蔦重でしたが、南畝が、ランキング本『菊寿草』でNo.1に推薦したおかげで、売れ行きは絶好調になりました。

その礼をするために、須原屋市兵衛(里見浩太朗)の仲立ちで牛込・御徒組屋敷まで足を運んだのでした。

見徳一炊[夢]喜三二 戯作 国立国会図書館,デジタルコレクション https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100394821/

もともと日本人は「◯◯番付」のようなものが好きだったようですが、現代にも通じる「今年人気のベストセラーランキング」のような本が、この時代から出版されていて、作り手もそれを見て一喜一憂しているのが、非常に興味深いですよね。

蔦重が訪れた太田南畝宅は、家具のない部屋、焼けたたたみ、障子の当て紙……みるからに「金がない」家に住んでいる様子。赤子をあやしながらガハハハハと笑っている姿は、とても「売れっ子」というイメージからは遠いものでした。ところが、この人物、とんでもない天才だったのです。

NHK大河ドラマ「べらぼう」公式HPより

そして、この南畝との出会いがきっかけで、めくるめく「狂歌」の世界に没入していく蔦重……

次回の【後編】に続きます。

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