【べらぼう】歌麿の妻・きよの命を奪った瘡毒(梅毒)とはどんな病気?感染者の悲惨な末路と歴史

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【べらぼう】歌麿の妻・きよの命を奪った瘡毒(梅毒)とはどんな病気?感染者の悲惨な末路と歴史

NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の第38回放送「地本問屋仲間事之始」では、喜多川歌麿(染谷将太)の妻・きよ(藤間爽子)が瘡毒(梅毒)に侵され、ついに命を落としてしまいました。

最愛の伴侶を喪った現実を受け入れられない歌麿が「まだ(きよの姿は日々変化しているから)生きている」と言い張り、ついには「こうすれば『一緒に逝ける』って」と彼女の遺体から膿(うみ)を吸おうとする狂気に、多くの視聴者が胸を痛めたことでしょう。

きよの遺体を連れ去られ、腐敗で黒ずんだ(きよが寝ていた場所の)畳に縋りついた歌麿は、ついには自分ときよを引き離した蔦重(横浜流星)に殴りかかります。

果たして二人の関係は、今後どうなってしまうのでしょうか。

今回はきよの命を奪った瘡毒(以下、梅毒)の歴史をたどってみたいと思います。

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戦国時代にもたらされた梅毒

きよを看病する歌麿。ちなみに歌麿の妻(戒名:理清信女。寛政2・1790年8月26日没)が梅毒を患ったという記録はない。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。🄫NHK

日本で梅毒が登場したのは16世紀初頭、戦国時代初期の永正9年(1512年)。コロンブスによってヨーロッパへもたらされてから、およそ20年という早さでした。

戦国武将の中では浅野幸長・加藤清正・前田利長・結城秀康らが梅毒で死亡。性行為によって感染することが経験的に知られていたため、精力旺盛だった徳川家康は遊女や不特定多数の(身元が不明な)女性と交わることを自戒していたと言います。

江戸時代に入ると梅毒はますます猛威を振るい、一説では江戸在住者の梅毒感染者はおよそ半数にも及ぶと言われました。

現代ではペニシリンなどの抗生物質を用いた早期治療で全快するものの、そのような治療法のない当時は命を落としたり、慢性的な後遺障害をもたらしたりしたそうです。

その外見的な症状は劇中にもあった腫瘍や疱瘡など、悪化すると皮膚が崩れたり軟骨炎で鼻が欠け落ちたりする者もいました。

貧しい夜鷹(最下級娼婦)などは鼻が欠け落ちた者も多く、川柳に「鷹の名に お花お千代(お鼻・落ちよ)はきついこと」などと詠まれています。まったく笑いごとじゃありません。

現代も続く梅毒の脅威

梅毒患者の様子(画像:Wikipedia)

ちなみに梅毒という呼び名については、疱瘡がヤマモモ(楊梅)の果実に似ていたために楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれ、それが次第に「瘡毒」「梅毒」となったと言います。

他にも「黴瘡(ばいそう。黴菌による疱瘡)」が音の同じ「梅瘡」となり、また「黴毒(ばいどく)」が「梅毒」になったとも言われました。

一時期は症状が似ているハンセン病(性感染症ではない)と混同されたこともあり、ハンセン病を患った神父が姦淫の疑いを受けたこともあったそうです。

日本で初めて梅毒検査が実施されたのは万延元年(1860年)。ロシア海軍の要請を受けて、長崎海軍伝習所の松本良順(まつもと りょうじゅん)らが丸山遊郭で遊女たちの梅毒検査を実施しました。

日本に梅毒がもたらされて、実に三世紀半が経ってからのことです。

明治時代に入っても梅毒は猛威を振るい、例えば明治43年(1910年)には約10,160名の死者を出しました。

当時の死因として多かった結核・肺炎・脳出血・癌に続いて5番目に多くの犠牲を出したことになります。

21世紀の令和に入っても梅毒感染者は後を絶たず、令和4年(2022年)には現在の調査方法で初めて年間1万人超の感染者が確認されました。

500年以上にわたる日本人と梅毒の戦いは、まだ終わりが見えてきません。

終わりに

あまりにも辛いので、きよが全快?したオフショット写真を掲載。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。🄫NHK

今回はきよの命を奪った梅毒について、その歴史をたどってきました。

彼女は我が身を売って暮らしを立てざるを得なかったことから、悲劇的な最期を迎えてしまいます。

果たして再び狂気に陥った歌麿を、蔦重は救うことができるのか……歌麿が幸せを取り戻すことを、きよも願っているのではないでしょうか。

※参考文献:

クロード・ケテル『梅毒の歴史』藤原書店、1996年9月 福田眞人ら編『日本梅毒史の研究 医療・社会・国家』思文閣出版、2005年6月 梅毒の感染者数、初の1万人超えに 国立感染症研究所が速報値を発表ーライブドアニュース

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