大河『べらぼう』の浮世絵に撮影協力している「アダチ版画研究所」とは?浮世絵のあれこれも聞いてみた

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大河『べらぼう』の浮世絵に撮影協力している「アダチ版画研究所」とは?浮世絵のあれこれも聞いてみた

いよいよ「べらぼう」も終盤ですね。なんだか重三郎が空回りしてきた感が否めませんが、ここから畳みかけるように様々なことが動き出すでしょう。

さて、べらぼうに出てくる数々の浮世絵。そこに撮影協力している工房をご存じですか?それは「アダチ版画研究所」。彫り・刷りを担っている日本で唯一の「浮世絵工房」で、江戸時代からの手法を守って一色ずつ版を彫っているのはここだけです。

JR目白駅から徒歩10分の住宅地の一画にあり、浮世絵というと想像しがちな長屋のような風情ではなく(当たり前)、モダンな建物。もちろん職人さんはここで働いています。

こちらで行われた見学会の様子を、ご紹介します。見学会はギャラリー内で行われ、予約制です。

彫りは時間がかかるので、摺りのみの実演。職人さんを囲みつつ40人近くがじっ…とその手をみつめる。摺りを見ながら、見学会の質問をそばにいる親方が答えてくれます。その時の質問を抜粋します。

目から鱗のあれこれ!「見当」や「やわら」って何? 雲母刷り(きらずり)はどうやって刷る?

写楽によくみられる「雲母刷り」。

雲母刷りの例(東洲斎写楽、三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛、寛政6年〈1794年〉)Wikipediaより

雲母(うんも)という岩石の粉末を、染料や膠と何日間か煮詰めて絵具を製造し、刷るのではなく、刷毛で紙にじかに塗るそうです。なので近くで観察すると刷毛跡が見えます。

浮世絵の大きさは決まっている?

現代でA4やB5などと紙に一定の大きさがあるように、浮世絵にも「大判」「中判」など規定の大きさがあります。ですが刷る前の紙は、おおまかに切ってあるそうです。

なぜ多色刷りする時、ずれないのか。

「見当」という目印を版の四隅に彫り、そこに紙をあてがいます。版木の四隅の下には固定のための濡れ雑巾がおいてあり、職人さんは「やわら」と呼んでいました。ちなみに「見当をつける」とはここから生まれた言葉。

見当(紙を当てる目安の凸)は、版木に二カ所。右下と中央下。何故かというと木も紙も若干伸びるから、左右に見当をつけると、どちらに合わせていいかわからなくなり、ずれるのだそうです。

一作品に使う版木の数は?

江戸時代…といっても長いですが、裏表に彫って、5枚の桜の木を使っていたそうです。幕府の贅沢禁止令のためではなく、単に節約とスピード作業のため。

紙を見れば売れ筋がわかる!?小ネタがざくざく 実際に刷る前の準備は?

紙は刷る前に湿らせておく。ちょうどよく湿らしておく加減を掴むには三年かかる。刷る色の順番に決まりはない。

江戸時代の初刷りはいい紙を使うが、人気作品になると地元産の粗悪品を使うようになる。なので粗悪品の紙を使った浮世絵ほど、当時売れた作品だということがわかる。

水で版木を湿らし、刷毛で伸ばし、水を含ませた筆で絵の具をつけて版木に載せ、別の刷毛でまた伸ばす。

グラデーションはどうやってつける?

馬のしっぽの毛を束ね、サメの皮で毛先を割り枝毛状にした刷毛を使っている。その刷毛に絵の具をつける按配で、色が決まります。刷毛自体に色がグラデーションとして定着するまで、何枚もためし塗りをするそうです。7、8回刷らないと、顔料と同じように発色しないそうです。

パレットで混色するのではなく、版木の上でグラデーションを作るんですよね。
拝見すると、刷毛の上から中腹にかけ薄くするなど、職人技としかいいようがありませんでした。

刷り上がった物を触らせてくれましたが、色を乗せるという感覚ではなく、紙に対して「色を染める」という感覚を受けました。顔料は全く手に付きませんでした。

広重と北斎の作品の違い

広重は効果的な赤の使い方をする。北斎はピンポイントの赤の使い方はしない。広重はグラデーションを多用する技巧派、北斎はは多用せず、構図も色もかっちりと決める傾向にある。ちなみに彫り師を指名できたのは葛飾北斎だけと言われているそうです。

墨版以外の色版の彫り方の手順をまとめると

①まずは下絵を貼り付け、墨版(絵の輪郭となる部分)を彫る
②墨版を色版の版木分だけ刷る
③刷った墨版の紙を版木に貼り付け、出したい色の部分だけ凸にして残す
④③を繰り返す

昔は下絵は墨版に貼り付けてその上から彫ってしまうので、手元に残りにくい。それを考えると、現在残されている江戸時代の版木や浮世絵は、とても貴重なことがわかります。

見学会は不定期のようですが、みなさんも現代の浮世絵の技の髄に触れてみてはいかがでしょうか。

アダチ版画研究所

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