「べらぼう」はやっぱり面白い!総集編の予習にもう一度見たいあの場面10選&魅力3選を振り返る
令和7年(2025年)NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」とうとう終わってしまいましたね。夏ごろからロスを覚悟しておりましたが、やっぱり残念でなりません。
それにしても、本当に面白かったです。毎週々々、蔦重(蔦屋重三郎)を見守りながらお江戸の片隅にいるような感覚を味わえました。
今回は一年間の感謝を込めて、大河べらぼうの魅力や名場面などを振り返りたいと思います。
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みんなで作った本を手に取り、喜ぶ蔦重。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。🄫NHK
本作の魅力はたくさんありましたが、特筆すべきは以下のポイントではないでしょうか。
①欲よりも、志に生きるカッコよさ儲けたい、楽したい、得したい……誰もが欲望を追求していた泰平の時代。もちろん蔦重も人並みの欲望はあったでしょう。
しかし彼の原動力は常に「生まれ故郷の吉原や、お江戸ひいては日の本をよくしていきたい」という心意気でした。
まさに「書をもって世を耕す」蔦屋耕書堂の精神を地で行く純粋さが、視聴者に活力と勇気を与えてくれたのではないでしょうか。
蔦重ほどの度胸も才覚もありませんが、微力を尽くして少しは世の役に立つ人生を送りたいものです。
②個性的な仲間たちと助け合う板元(出版事業者)である蔦重は、劇中でさまざまな絵師や戯作者たちと出会い、その才能を世に送り出しました。
常に斬新な発想で「そうきたか!」と世を驚かせ、一人ひとりの個性に合わせた演出でライバルたちを出し抜いていく姿に、視聴者も喝采を贈ったことでしょう。
時には意固地になったり、対立してしまったりする場面もありましたが、最後はみんなから慕われながら屁!コールと拍子木でオチがつきました。
最大のライバルであった鶴屋さんや定信までも魅了していく様子は、本作でも有数のハイライトと言えるでしょう。
③創作は大変だけど、やっぱり楽しい!劇中では蔦重が自分で本を作り上げ、完成した本を手にとって「まるで夢の中にいるみてぇだ」と満面の笑みを浮かべる場面がありました。
自分や仲間たちの思いを、手に取れる形にできた瞬間の喜びは、創作者にとって何物にも代えがたいものでしょう。
もちろんその道のりは、決して平坦ではありません。面白い案思を練り上げる大変さはもちろんのこと、絵師や彫師や摺師といった技術者たちとの協力が不可欠です。一枚の絵や一冊の本には、多くの思いが込められていることが、本作を通じて感じられました。
娯楽作品を消費してばかりではなく、自分も作り手に回ってみたい……本作を通じて、そんな思いを抱いた視聴者も、少なくないのではないでしょうか。
もう一度見たい!あの場面10選
吉原を散策する源内先生。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。🄫NHK
叶うならば、もう一年間べらぼうを放送して欲しい!と言いたいところですが、せめてこれだけでもまた見たい!名場面をピックアップしました。総集編でも見られるでしょうか。
※今回は市中サイドのみとり上げ、城中サイドは割愛しました。
一、源内先生の吉原散策※第2回放送「吉原細見『嗚呼御江戸』」
吉原細見『嗚呼御江戸』の序文を依頼された源内先生が、夜風に当たろうと御座敷を抜け出して遊郭を散策する場面。
一口に遊女と言っても、美人から獅子鼻、虫食い栗まで実にさまざま。しかし不思議なもので、彼女たちは全員、誰かにとっては「いい人(伴侶)」なのです。
女性に興味がない源内先生だからこそ注げる、人類愛的な優しい視線が深く印象に残りました。
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松葉屋の計らいで、鳥山検校に身請けされる瀬川と二人きりになった蔦重。ここで吉原の夢を語り、20年越しの思いを通わせるひとときに涙した視聴者も少なくないことでしょう。
幼き日の赤本『塩売文太物語』はじめ、本がつないだ二人の関係は、まさにソウルメイトと呼ぶにふさわしいものでした。
まさかここから一時であっても二人が一緒になるとは思いませんでしたが……最後にはそれぞれ幸せになれたようで何よりです。
「おさらばえ」二人をつなぐ夢の先には…【大河べらぼう】3月9日放送の解説&振り返り 三、吉原俄の神隠し※第12回放送「俄なる『明月余情』」
吉原名物・俄祭りの喧騒にまぎれて「神隠し」に遭ってしまった、うつせみと新之助。一度足抜けに失敗しているから、まさか本当に去ってしまうとは思わなかったことでしょう。
うつせみの背中を押してやった松の井の心意気、そして足抜けの代償として源内からエレキテルを強奪するいねのしたたかさも見どころでした。
まるで最終回のような見せ場として、視聴者の心に残っています。
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行方不明となっていた唐丸改め捨吉(歌麿)を引き取りたいと申し出た蔦重に対して、駿河屋の親爺様は激怒しました。
いつもならただ見守るばかりだったふじが、ここで初めて親爺様に啖呵を切ります。このギャップに目を見張り、蔦重を思う心意気を讃えた視聴者も少なくなかったことでしょう。
その後はまたいつもの控えめな態度に戻りましたが、もう一回見たかったですね。
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蔦重にとっては本屋としての師匠であり、またライバルでもあった鱗形屋孫兵衛が、恋川春町をめぐって和解する場面に心打たれた視聴者も少なくありません。
色々あっても、共に本を愛し創作に情熱を注ぐ同士。鱗の旦那から赤本『塩売文太物語』の版木を贈られた時の喜びが、画面を通じて伝わるようでした。
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吉原者が本屋を名乗るなど、まして日本橋に店を構えるなど言語道断……物語前半における強敵の一人であった鶴屋さんが、灰捨て競争を通じて蔦重のペースに巻き込まれ、ついには仲間入りを認めるハイライトです。
あの扇屋宇右衛門が感涙にむせび、駿河屋の親爺様がこれまでの非礼をお詫び申し上げるほどの感動が、視聴者にも伝わりました。
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自分の画風を追求する中で妄想にとらわれ、心身を病んでしまった歌麿。そこへかつての師である鳥山石燕がやって来ます。
「待っておったぞ、三つ目!」
見えないモノが見える者は、そのモノの姿を絵に描いてやる務めがある。この言葉を受けて、身近な命への興味に目覚めた歌麿は、文字通り当世一の絵師に成長していくのでした。
『べらぼう』幻覚に苦しむ歌麿、妻となる”きよ”と出逢い、師匠・石燕との再会でいよいよ覚醒か 八、新之助の決起※第33回放送「打壊演太女功徳」
神隠しに遭って以来、地方で農民として暮らすも天明の大噴火で焼け出され、蔦重の元へ転がり込んだ新之助とふく夫婦。やがてとよ坊も生まれますが、貧困の中で命を落としてしまいます。
至極まっとうに生きて来た報いがこれか……世に対する怒りからついに天明の打ちこわしが幕を開けたのでした。
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田沼政権が崩壊し、松平定信の白河政権が誕生。いわゆる寛政の改革に対する反発から好色本を出版した蔦重は、身上半減(全財産の半分没収)の刑に処されます。
それでも悪びれない蔦重は「身を半分ってのは、タテですかヨコですか?」「何がまっとうな本づくりなのか、お奉行様がたと膝詰めでお話したい」と命懸けの減らず口を叩きました。
おていさんに引っぱたかれ、鶴屋さんにキレられ……少しは反省したでしょうか。
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源内生存騒ぎから始まったチーム写楽。本作では定説の斎藤十郎兵衛だけでなく、複数絵師説が採られました。
これまで「鬼の子」として疎外されていた歌麿が、みんなと一緒に写楽となったことで、永年のわだかまりが解けたようです。
最後に蔦重を「義兄さん」、おていさんを「義姉さん」と呼ぶ姿は、憑きものが落ちたように感じられました。
「べらぼう」瀬川が登場!写楽=斎藤十郎兵衛説 採用、蔦重が遺したもの…最終回の内容を解説 番外編「駿河屋の階段転がし」駿河屋の親爺様と言えば、階段転がし(仮称)がおなじみです。流石に後半は見なくなりましたが……。
たいてい蔦重の不始末に対してですが、一度鶴屋さんを転がした場面では、多くの視聴者が胸すく思いだったかも知れませんね。
もっと見たかったですが、他にも転がして欲しい方はたくさんいました。一度体験してみたいという方は……いないですよね?
なぜ視聴率ワースト2位に!?
吉原の未来を背負い、日本橋を押し渡る忘八アベンジャーズ。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。🄫NHK
他にも名場面がてんこ盛りだった大河べらぼう。ですが、視聴率はワースト2位という結果になってしまいました。
他の作品と切磋琢磨しているため、順位がついてしまうのは仕方ないものの、ここでは視聴率が作品の魅力についていけなかった理由について考察していきましょう。
本作の舞台は、江戸時代後期という日本史ファンの中でも馴染みが薄い時代です。そのため、ある程度の予備知識を仕込んでおかないと、なかなか楽しめません。要するに、ちょっと敷居が高いのです。
「だからこそ楽しいんじゃないか」という方もいらっしゃいますが、多くの視聴者は大河ドラマを歴史学習の機会ではなく、娯楽としてとらえていることでしょう。だから気楽に見られない大河べらぼうは敬遠されたのかも知れません。
また派手な合戦や立ち回りがないことから画面映えに乏しく、見ていて退屈だという意見もありました。
そして次から次に新キャラが登場し、一人ひとりに感情移入できず、誰を追い駆けたらいいのかという感想もあるようです。髪型や衣服も変化をつけにくいため、見分けが難しい点もあるでしょう。
さらに江戸市中(蔦重たちの活動)や江戸城内(幕閣たちの政争)を行ったり来たりする場面転換の激しさから、必死に見ていないとストーリーについていけません。
加えて細かな描写や伏線が多く、それらは丁寧に回収されているため見ごたえはあるものの、やはり多くの視聴者はそこまで期待していないようです。
追加で「政治や陰謀も面白いけど、そこへ無理に蔦重をからませる≒物語のスケールを大きくすることはなかったと思う」という感想もありました。
せっかく本屋なのだから、巨悪を討つ展開に気を散らせるよりも、黄表紙や浮世絵の魅力を深掘りして欲しかったという意見には筆者も同意します。
物語は江戸市中での創作・出版活動をメインにして「何かお城の方で政治的な問題があるみたいだよ」くらいの距離感・温度感でも十分ではなかったのでしょうか。
筆者としては、ビジネスの心得や当時の商慣習や倫理・道徳などもしっかりと描き込むと、より味わいが深まるように感じました。
全体と通じて「通好みを志向した結果、多くの視聴者からは支持を得られなかった」といった印象を受けます。
それでもやっぱり「べらぼう」は面白い!
田沼政権の意志を受け継ぐ蔦重。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。🄫NHK
馴染みが薄い時代舞台⇒興味を持ちにくい 話が複雑すぎて追い切れない⇒飽きてしまう 画面が地味で退屈⇒飽きてしまう 無理に話のスケールを大きくしすぎ⇒好みが分かれる 作者や作品、江戸の世界観をもっと深掘りしてほしい……等々。とまぁ色々考察してきましたが、視聴率は別にして、大河べらぼうがとても面白い作品だという認識は微塵も変わりません。
毎週画面にかじりつかんばかりの勢いで視聴していた一人としては、主演の横浜流星はじめ出演されていた一人ひとりの演技を、味わい深く楽しめました。
本作はお茶の間で家族と流し見するより、映画館でじっくりと観賞するようなスタイルが向いているのではないでしょうか。
発信する媒体(大河・特別長編ドラマ・映画等)が違えば、評価≒視聴率も大きく変わったかも知れませんね。
12/29(月)はべらぼう納め!
夜22:05からはR1(ラジオ第一)でオーディオドラマも!NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。🄫NHK
さて、大河べらぼうの総集編が令和7年(2025年)12月29日(月)に放送されます。
<NHK総合/BSP4K>
12月29日(月)
12:15~ 巻之一 13:05~ 巻之二 13:48~ 巻之三 14:31~ 巻之四 15:20~ 巻之五<総合>
16:03~ 最終回!ありがた山スペシャル~Publicビューイング&トークショー~【出演】
横浜流星(蔦屋重三郎) 染谷将太(喜多川歌麿) 橋本愛(おていさん) 中村蒼(蔦屋次郎兵衛) 風間俊介(鶴屋喜右衛門) 高橋克実(駿河屋市右衛門) 鈴木奈穂子アナウンサー12月29日はべらぼう納め、思い残しのないようご視聴ください!
おわりに
こちらこそ面白い大河ドラマを、ありがた山の寒がらす!NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。🄫NHK
毎週楽しみにしていた大河べらぼうがあっという間に終わってしまいましたが、第1回放送「ありがた山の寒がらす」を視聴した衝撃が、つい先週のような気分です。
毎回視聴後は「蔦重は今ごろ何をしているんだろうか(とっくに死んでるよ)」とか「あの言い方はないだろう(放送内容の振り返り、反芻)」など、何かと蔦重たちについて考えていました。
たまにネット上で横浜流星の写真を見ると「何で月代を剃ってないんだ?」と思ってしまいますが、見慣れるのにはもう少し時間がかかりそうです。
それにしても、本作を通じて「合戦などなくても、生き様や創意工夫を通じて、いくらでも味わい深く人生を描けるのだ」と実感しました。これは幸運にも戦火を経験していない令和現代の私たちにも言えることではないでしょうか。
放送前に「大河べらぼうは合戦がないからつまらない」などという評判を見聞きしましたが、では私たちの人生は面白くできないのか?そんなことはないと思います。
視聴率の改善≒一般受けについては今後の課題と言えますが、様々な時代を描く大河ドラマの可能性を感じさせる名作となったのではないでしょうか。
今後は古代史や中世史(鎌倉中期~室町中期)、江戸中期や近現代の作品も期待したいですね。
とまぁとりとめもありませんが、これにて今年の大河ドラマ連載は幕引きとさせていただきます。一年間のお付き合い、誠にありがとうございました!(拍子木の音で緞帳が下りる)
完
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan










