悪役扱いされがちな政治家・山県有朋、“近代陸軍の父”が背負った4つのレッテルの真相

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悪役扱いされがちな政治家・山県有朋、“近代陸軍の父”が背負った4つのレッテルの真相

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山県有朋(やまがたありとも, 山縣有朋)は日本の近代陸軍を作った人として知られていますが、ドラマや小説では悪役として軍国主義の象徴のように描かれることが多いです。

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では、その実像はどのようなものだったのでしょうか。

山縣有朋(Wikipediaより)

山県有朋は一八三八年に長州藩で生まれました。若いころから軍事に関心が高く、明治新政府になってからは陸軍の建設に携わります。

岩倉使節団が欧米を回っている間、留守の政府で陸軍卿として徴兵令の実務を担当しました。

その後、内務大臣や内閣総理大臣、枢密院議長などを歴任しています。

軍人としても活躍し、日清戦争では第一軍司令官、日露戦争では参謀総長を務めました。

つまり、明治から大正にかけての日本の政治と軍事の両方で、常にトップに近い立場にいたということです。これはとても珍しいことで、普通は政治の人か軍事の人のどちらかですが、山県は両方を任されたのです。

4つのレッテル

しかし、山県は歴史の中で悪役としてのレッテルを貼られてきました。そのレッテルの原因は主に4つです。

まず1つ目は汚職疑惑です。一八八四年の山城屋事件で、山県は軍の資金を民間の商人に貸し付けて失敗し、損失を出しました。これに対して薩摩出身の軍人たちが金に汚い長州人だと批判したのです。

2つ目は日清戦争での独断専行です。

一八九四年の日清戦争で、山県は第一軍司令官として出征しました。このとき、大本営の命令を無視して自分の判断で行動したとされています。

これが原因で、後の日本陸軍に現場の判断を優先するという悪習ができたと批判されることになります。

3つ目は軍閥形成軍部大臣現役武官制です。山県は陸軍の人事を掌握し、自分の派閥を作りました。

また、軍部大臣は現役の武官でなければならないという制度・軍部大臣現役武官制を作り、軍部が政治に介入しやすくなったと批判されています。

4つ目は自由民権運動への弾圧です。山県は超然主義を掲げ、議会や政党を軽視する姿勢をとりました。国民の政治への参加を認めず、専制的な政治を行ったというのです。

自由民権運動を牽引した板垣退助(Wikipediaより)

これが専制政治家というイメージを強めました。

こうしたイメージが、山県有朋の悪役像を作ってきました。しかし、実際の歴史を見てみると、これら4つのレッテルは単純すぎることがわかります。

戦争は回避しようとしていた

まず山城屋事件についてですが、これは確かに失敗でした。

しかし、当時の日本は財政的に厳しい状況にあり、軍の資金を有効に使おうとした結果、悪徳商人に利用された側面があります。

つまり山城屋事件は、彼一人が私利私欲で汚職を働いたというよりも経済政策の失敗だったと言えるでしょう。

日清戦争での独断専行についても、当時の通信事情を考えると無理のない話でした。戦場にいる司令官は、本国からの命令を待っていられない状況だったのです。

現地の状況を最もよく知っている司令官に判断を任せるのは、軍事的には合理的なことでした。

日清戦争における日本軍歩兵の一斉射撃(Wikipediaより)

これは、後の軍部暴走とは別の問題です。山県が軍を掌握していた時代を見てみると、満州事変のような軍部暴走は起きていません。

むしろ山県はロシアとの協調を模索し、戦争回避に努めていたのです。軍閥そのものが軍部暴走につながったわけではありません。

政党政治への意外な評価

政党政治についても、山県は完全に否定していたわけではありません。ただ今は時期尚早だと考えていただけで、政党政治の有用性は理解していました。

その傍証となるのが、原敬との関係です。山県と原は対立的な関係にありましたが、山県から原に対する信頼は生涯変わらなかったと言います。

そして原が暗殺されたとき、山県は深く悲しみ、寝込むほどの衝撃を受けました。山県は単なる反政党の専制家ではなく、政治家としての力量を認める柔軟さを持っていたのです。

原敬(Wikipediaより

歴史的人物の評価は、後世の政治状況によって歪められることがあります。特に戦後の日本では、軍国主義への反省の文脈で、山県有朋は軍部暴走の源流として過度に悪役化されました。

しかし、実像を見てみると、山県有朋は近代日本の制度を作った制度設計者であり、懐の深さも持ち合わせていた人物だったのです。

参考資料:浮世博史『くつがえされた幕末維新史』2024年、さくら舎
画像:photoAC,Wikipedia

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