『豊臣兄弟!』迫る「桶狭間の戦い」史実では藤吉郎と小一郎はどのような役割を果たしたのか?

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『豊臣兄弟!』迫る「桶狭間の戦い」史実では藤吉郎と小一郎はどのような役割を果たしたのか?

戦国大名・織田信長(演:小栗旬)の名を一躍、天下に知らしめた合戦、それが1560年(永禄3年)に起きた「桶狭間の戦い」です。

駿河・三河・遠江を領有し、「東海道一の弓取り」と称された今川義元(演:大鶴義丹)は、信長が統一したばかりの尾張へ侵攻。信長にとって、この戦いは家中の存亡を懸けた、避けて通れぬ決戦でした。

大河ドラマ『豊臣兄弟!』第3回「決戦前夜」では、その「桶狭間の戦い」を目前に控えた決戦前夜の様子が描かれました。

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本稿では、織田家の危機に直面した信長が抱いた覚悟に迫るとともに、この歴史的な戦いにおいて、藤吉郎(後の豊臣秀吉/演:池松壮亮)と小一郎(後の豊臣秀長/演:仲野太賀)が実際にどのような役割を果たしていたのかを紐解いていきます。

大河ドラマ「豊臣兄弟!」公式サイトより

史実では桶狭間に参戦した可能性が低い小一郎

「桶狭間の戦い」において、藤吉郎(豊臣秀吉)・小一郎(豊臣秀長)兄弟は、いったいどのような活躍をしたのでしょうか。

『豊臣兄弟!』を楽しみにしている方の夢を壊すようで恐縮ですが、まず冒頭でお断りしておかなければならない点があります。それは、弟・小一郎についてです。

定説では、小一郎が藤吉郎の家臣となるのは「桶狭間の戦い」の翌年のことであり、この合戦当時は、まだ郷里の村で農業に従事していたと考えられています。したがって、小一郎が「桶狭間の戦い」に参戦したとする説は、史実としてみれば可能性が低いと言わざるを得ません。

史実では「桶狭間の戦い」当時は農民であった小一郎。(大河ドラマ「豊臣兄弟!」公式サイト)

『豊臣兄弟!』第3回において、小一郎が藤吉郎とともに「桶狭間の戦い」に臨む場面が描かれていますが、それは史実というよりも、物語を盛り上げるための演出、すなわちフィクションとして受け止めて楽しみましょう。

ただし、小一郎がこの戦いの直後に藤吉郎のもとへ身を寄せ、武士としての道を歩み始めたことを踏まえれば、農民という身分でありながら、何らかの形で「桶狭間の戦い」に関わっていた可能性を完全に否定することはできないとも思われます。

藤吉郎は槍働き以外活動で戦いに貢献

一方、兄の藤吉郎についても、「桶狭間の戦い」における具体的な働きは、実のところよく分かっていません。この戦いが起きた頃、藤吉郎は織田信長に仕えてからおよそ2年が経過しており、その身分は足軽組頭程度であったと推測されています。

では藤吉郎が、足軽大将のもとで足軽たちを率い、長槍を手に戦場を駆け回っていたのかといえば、どうもそうとは考えにくいのです。

城戸小左衛門と槍を合わせる藤吉郎。(大河ドラマ「豊臣兄弟!」公式サイト)

『豊臣兄弟!』では、藤吉郎は武芸の鍛錬を怠らぬ人物として描かれています。第1回「二匹の猿」では、斎藤家の間者・横川甚内(演:勝村政信)を真っ向から斬り倒す場面が描写され、返り血を浴びたその表情に、従来の「豊臣秀吉像」とは異なる凄みを感じた方も多かったのではないでしょうか。

戦国時代は言うまでもなく、ひとたび合戦の戦端が開かれれば、身分の如何を問わず、常に討ち死にの危険が付きまといました。しかも、白兵戦が主流であったこの時代においては、戦場に身を投じるという行為そのものが、きわめて過酷なものであったのです。

だからこそ、足軽階級の雑兵の中にも、日頃から刀槍の技を磨いていた者は少なくなかったでしょう。藤吉郎もまた、そうした一人であった、そのような解釈を、このドラマは示しているのだと思われます。

戦いに対する信長と織田家中の覚悟とは?

藤吉郎が仕えた織田信長の死生観を語る際、しばしば引き合いに出される有名な逸話があります。それが、「桶狭間の戦い」に出陣するにあたり謡ったとされる「人間五十年、化天のうちをくらぶれば夢幻の如くなり。ひとたび生を受け、滅せぬ者のあるべきか」という一節です。

戦場とは、まさに生と死の境界線上にある場所でした。信長はその現実を誰よりも強烈に自覚し、覚悟をもって戦に臨んでいたのではないでしょうか。

生と死を分かつ覚悟と緊張感を抱きながら戦いに臨んだ信長。(大河ドラマ「豊臣兄弟!」公式サイト)

そして信長にとって、「桶狭間の戦い」は避けて通ることのできない戦いでした。尾張統一を果たしたとはいえ、なお敵対する勢力を多く抱えるなど信長の基盤は不安定であり、その状況下で今川義元が兵を進めてくることは、ある意味では必然であったといえるでしょう。

東海道一の弓取りと称された今川義元。(大河ドラマ「豊臣兄弟!」公式サイト)

第3話「決戦前夜」では、義元出陣の報を受けて開かれた軍議の席で、佐久間信盛(演:菅原大吉)、林秀貞(演:諏訪太朗)、柴田勝家(演:山口馬木也)、佐久間盛重(演:金井浩人)ら重臣たちが、籠城か野戦かをめぐって激論を交わします。

しかし、そうした議論をよそに、信長は「何もせぬ」と答え、やがて浮かぬ顔の重臣たちと宴を楽しむのです。これは「桶狭間の戦い」を描く場面において、「敵を欺くにはまず味方から」という趣向で、しばしば用いられてきた演出でもあります。

ところが実際の織田信長とその家中は、常に生と死を分かつ覚悟と緊張感を抱きながら、戦いに臨んでいたのです。

そして、そのような信長のもとに身を置いていた藤吉郎だからこそ、今川家との戦について「信長は負けない」と、小一郎に対して確信をもって言い切り、信長には「殿は絶対に負けませぬ」と言うことができたのだと考えられます。

また、信長のそうした姿勢こそが、時に「冷酷と評されるほどの厳しさを帯びた信長像」へと結びついていったのではないでしょうか。

さて、次稿では「桶狭間の戦い」において、藤吉郎が果たした役割について、史料を手がかりに考察していく予定です。どうぞご期待ください。

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