実在した豊臣秀吉のミイラ――出土するもたちまち崩壊…神になろうとした天下人の痛ましい末路

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実在した豊臣秀吉のミイラ――出土するもたちまち崩壊…神になろうとした天下人の痛ましい末路

神になりたい

豊臣秀吉が亡くなったのは慶長三年八月十八日で、享年六十二歳。当時、日本中の武将の多くは秀吉の命で朝鮮に出兵しており、秀吉の死は撤退が完了するまで極秘とされました。

そのため、天下人にふさわしい盛大な葬儀は行われず、内々の仏事だけで済まされました。

しかし水面下では、秀吉の遺言を実現するための動きが進んでいました。秀吉は死後に神として祀られることを望んでおり、朝廷に新八幡という神号を求めていたのです。

豊臣秀吉(Wikipediaより)

そもそも八幡神は武家の守り神であり、軍神でもあります。その八幡の名を得ることは武家の頂点に立つことと同じ意味を持っていました。

朝廷からの返答を待たぬまま、京都・阿弥陀ヶ峰では社殿の工事が急ピッチで進められます。徳川家康をはじめ多くの大名が社殿に入る様子を見て、神道家の梵舜は「何かおかしい」と日記に記しました。

翌年一月に朝鮮からの撤退が完了すると、ようやく秀吉の死を公表します。

そして建造中の社殿は秀吉を祀るためのものだと説明され、神号は「新八幡」であると豊臣家は既成事実化を図りました。

しかし朝廷はこれを拒絶します。理由の一つは、神祇官の頂点に立つ吉田兼見が反対したためで、八幡は仏教色が強いので神号としてふさわしくないとしたのです。

代わりに提示されたのが豊国大明神という神号でした。日本の古称・豊葦原中津国に由来する格の高い名でした。

秀吉の死後、ご存じの通り豊臣家と徳川家の対立は激化し、二度の大坂の陣を経て豊臣家は滅亡します。

徳川家康は豊国大明神の神号を廃止し、豊国社の建物も破却しようとしました。

しかし秀吉の未亡人・高台院が「壊すのではなく、荒れるままにしてほしい」と願い出たため、建物は放置されます。

やがて秀吉の遺体を納めた甕を埋めた墳墓も、徳川家を憚って馬塚と呼ばれるようになり、豊国社は荒れるに任せて放置されます。十七世紀後半には廃屋と化していました。

そこは天下人の墓所とは思えない荒れ果てた状態で、まさに盛者必衰を象徴する場所となっていたといいます。

状況が変わったのは明治維新後でした。

慶応四年、明治天皇の大坂行幸をきっかけに豊国大明神の神号が復活し、明治十三年には京都に豊国神社が再興されたのです。

現在の豊国神社(Wikipediaより)

さらに明治三十三年、黒田長成ら豊臣家ゆかりの大名の子孫が中心となり、秀吉の墓碑を整えるための豊国会が結成されました。

ここまではいいのですが、この豊国会がとんでもないことをしでかします。

ミイラ発見!しかし…

この豊国会が墓碑を整えるための整備を進めていた最中、なんと秀吉の遺体を納めた甕(かめ)が出土しました。

蓋を開けると、そこには西向きに鎮座した秀吉のミイラがあったと記録されています。

しかし、ここで取り返しのつかない事態が起こります。意図せずして墓荒らしのような形になってしまったわけですが、豊国会の関係者たちは甕から遺体を取り出そうと試みたのです。

そのままにしておけばよかったのに、ミイラはたちまち崩壊してしまいました。

豊国神社の豊臣秀吉像

もしも科学が発達した後世に発見されていれば、秀吉の健康状態や死因、当時の保存技術など、多くの情報が得られた可能性があります。

しかし、崩壊した遺体は絹の布に包まれて桐箱に収められ、銅製と石製の箱で二重に覆われて再び地中に戻されました。その後は再調査も行われていません。

秀吉の遺体は、再び静かに眠りについたまま、現代に至っています。天下人のミイラが実在し、しかも一度は人の目に触れたという事実は、歴史の中でも特異な出来事です。

豊国神社 住所:〒605-0931 京都市東山区大和大路正面茶屋町 交通:京阪電車「七条」下車 徒歩約10分、バス「博物館三十三間堂前」下車 徒歩約5分

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※参考資料:堀江宏樹『日本史 不適切にもほどがある話』三笠書房、2024年

※画像:Wikipedia,photoAC

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