【豊臣兄弟!】直の願いは生き続ける…小一郎が誓った“直が見たかった世”は「平和令」の伏線か
「直、わしは兄者とともにもっと強うなる。強うなって、『お前の見たかった世』を作ってみせる」
稲葉山城改め「岐阜城」に立ち、眼下に広がる景色を眺めながら亡くなった直(白石聖)に誓う小一郎(仲野太賀)。その隣には、同じ景色を見詰める直の姿がありました。
「わたし、すごいなあ。小一郎ならきっとそう言うと思った」……何度も出てきたお得意のセリフを言う直。小一郎にやっと笑顔が戻りました。この場所で生かすための言葉だったのですね。
今回のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」第9回『竹中半兵衛という男』。
『豊臣兄弟!』直を失った小一郎は何を誓ったのか――竹中半兵衛の知略と斎藤龍興の末路…第9回振り返り副題の通り、豊臣兄弟が「三顧の礼」で調略に成功した半兵衛が主役でしたが。(かなりの変わり者でした)
弟の痛みに涙を流す兄・藤吉郎(池松壮亮)、「負け犬の遠吠えが棘のように刺さって抜けぬ」と、小一郎の言葉に心を動かされ織田家に仕えることを決めた安藤守就(田中哲司)はじめ美濃三人衆の決意。そして、大切な娘・直と交わした『賭け』を伝えに来た坂井喜左衛門(大倉孝二)。
いずれも胸熱な場面で、先週に引き続き心揺さぶられる展開でした。
いつも小一郎の背中を押し『豊臣秀長創世記』を作ってきた直。前回、理不尽に殺されただけに、どうなるのだろうと思っていましたが。
喪失感から立ち直れなかった小一郎も、喜左衛門から『父と娘の賭け』を聞かされ、「強くなって、『直が見たかった世の中』を作る!」と誓い再始動します。自分の魂の中に直の居場所をしっかりと作ったのでした。
今回は、
▪️心から弟を心配した『兄の涙』
▪️小一郎を甦らせた『父と娘の賭け』
▪️亡くなっても小一郎を支える『直の言葉』
を考察してみました。
※合わせて読みたい記事:
『豊臣兄弟!』直(白石聖)が救った少女は何者?この悲劇は“刀狩り”の伏線か?小一郎の後悔と転機
父に「小一郎という人間」を伝える直。NHK大我「豊臣兄弟!」公式サイトより
失意の弟を気遣うも耐えきれず陰で涙を流す兄今回、冒頭から、兄・藤吉郎に泣かされました。調子がよくてウソつきで人たらしの策略家で、冷徹な一面もある藤吉郎。直が殺された悲劇に黙々と耐える弟に、次々と用事を押し付けていました。
偵察に出かける小一郎の後ろ姿を見送りながら、「強い男じゃのう。許嫁が亡うなったというのに」という蜂須賀正勝(高橋努)に、「そう見えるか?」と淡々と返します。
と思いきや。
突然、声が震え表情が揺らぎ「わしにはあやつの悲鳴しか聞こえぬ。何かをしていなければ立っていられぬのじゃ」……といい、涙を流す姿に泣かされました。
「だから無理難題を押し付けて生きる張り合いを与えるのじゃ。そんなことしかできぬ。情けない兄じゃ」と。
何の邪念もウソも計算もない、ただひたすらに弟を心配する兄の姿。こんなに弟が大好きだったから、失った晩年の秀吉は抑制が効かなくなっていく、という未来への布石の始まりなのでしょうか。
財産、信用、地位ほか、失って耐えられないものはいろいろありますが、どう努力しても絶対に取り戻せないのが『命』。消えた命だけはどんな技術を用いても、どんなに金を積んでも、どんなに悲しんでも元に戻せません。
「喪失感に襲われた弟は、失望のあまり侍を辞めるかもしれない。自害するかもしれない。隙だらけなので敵に命を奪われるかもしれない。」と、心配したことでしょう。
前回、8話の『墨俣一夜城』で、作戦に失敗して戻ってきた弟と再会したとき、「命があっただけで大手柄じゃ!」と「生きて戻ってきたこと」を褒めていた藤吉郎を覚えていますか。
大切な小一郎がその「命」を失わないよう、できることをしながらも心配でたまらない…そんな兄の心情が伝わってきました。
農民同士の争いで失われた直の命。「侍のはしくれ」なのに直を守れず命を断ち詫びようとする弥助(上川周作)。悲しみで潰されそうな弟の命を心配する兄。
このドラマの根底に流れる『命』の重さを改めて感じる場面だったと思います。
直の父が小一郎に伝えたかった「賭け」とはオタクキャラで戦好きで変わり者の竹中半兵衛が、自らオファーした「三顧の礼」に応えて、調略に成功した瞬間。「うほほっ!」という感じでめちゃくちゃ顔に出る蜂須賀正勝も藤吉郎も、顔に驚きと歓喜の表情を浮かべたのに。小一郎は表情を失ったままでした。
美濃三人衆も味方に引き入れ大手柄をたてた小一郎は、直の墓参りに訪れます。ずっと忙しくしていたので、初めて墓に向き合ったのではないでしょうか。
故郷の中村にいたとき、直が小一郎に用事を頼んでは紐に付けた小銭を渡していましたね。前回、墨俣砦作りに出向く小一郎に、その小銭付き紐でおにぎり包みを結び渡していました。その紐付き銭と包みの布を墓前に置き、自分の刀を置く小一郎。
「手柄を挙げて褒美ももらったけれど。それがなんじゃ。まったく嬉しいとは思わん」「もうどうでもいい、お前がおらんのやったら。わしも少し休みたい」と、力無く報告します。そこに登場したのが、直の父親・坂井喜左衛門でした。
「死ぬんか!それとも侍をやめるってことか!」と声をかける喜左衛門に土下座して、直を守れなかったことを詫びる小一郎。「やめい!鬱陶しい。銭をよこせ!」という喜左衛門の言葉に当惑する小一郎。
喜左衛門は、小一郎を責めにきたのではありませんでした。実家に戻ってきたときに交わした、『娘との賭け』を伝えに来たのでした。
「無駄な殺し合いを無くす世」に賭けた直に誓う喜左衛門は、直と酒を酌み交わしつつ語り合ったときのことを小一郎に教えます。
酌をする直に「で?何が望みじゃ?お前が酌をするときは必ずおねだりをするときじゃ」という父。
小一郎との結婚を許してくれた父に「祝言に来て欲しい」と頼む直。「結婚を許したからもういいだろう!」と嫌がる父に食い下がります。
「小一郎は、みなが満足しないと気が済まない人だ」といい、「会ったら父様の話をよう聞いて、きっとお互いが笑える道を見つける。そして『これで万事円満でござる』と得意げにいうの。」と。
小一郎は、「争いごとは無くせなくても、無駄な殺し合いは無くすことができる。とことん話し合って、考え抜けば道はあると考える人だ」と父に伝えるのです。
けれど、父は「バカバカしい。そんな世など来るわけがなかろう」と返します。
その父に直は「できるほうに500文!わたしのへそくりすべてじゃ。」と賭けを申し込みます。「もしかしたら本当にそんな世ができるのでは?と、だまされたくなるのが私の旦那さまじゃ」と笑顔で父に言います。
顰めっ面をしながらも、直の言葉に耳をきちんと傾ける父。気が強くて親のいうことに従わない娘に閉口しつつも、意思をはっきり持つしっかり者の娘を誇りに思い、幸せになって欲しいのだな(けど、本当は結婚を認めたくない)という気持ちがじんわりと伝わってくる、いい場面でした。
話を聞きつつ呆然とする小一郎に「その様子じゃ、わしの勝ちじゃな。あやつも見る目がなかったのう」と帰ろうとする喜左衛門に、「まだ終わってはおりませぬ!その賭け、必ずや直に勝たせてみせまする」と泣きながら叫ぶ小一郎。
「おぬしが諦めたら、すぐに銭を取りに来るぞ!逃げるなよ!直と共に、ずっと見張っておるぞ。」と、涙を押し殺した表情で小一郎にはっぱをかけるのでした。
「しかと承知!」やっと号泣できた小一郎。「これで万事円満じゃ!」と言いながら大泣きするのでした。
直の墓のそばに刺さっていたのは、「豊臣兄弟!」のアイコンでもある「風車」。
この風車は、兄のシンボルが瓢箪なのに対して、小一郎のシンボルだそうです。
小一郎が「わしも疲れた」と呟いているとき、風車は止まっていました。けれども、喜左衛門が小一郎に語りかけているとき、時々、回っては止まり回っては止まり。
「これで万事円満じゃ!」と小一郎が言ったときには、まるで「そうじゃ!がんばれ小一郎!」とでもいうように、急にくるくる回り出したのも印象的でした。
小一郎と喜左衛門のやりとりを、離れた門のところで聞いていた藤吉郎。立ち去る喜左衛門に、弟に生きる目的を思い出させてくれたことに対する感謝を込めて、深く頭を下げながら肩を震わせて号泣していた姿も泣けました。
喜左衛門の言葉に心を奮い立たせられた小一郎。NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより
「みんなが幸せになるんが一番じゃろ」の原点に戻る初回『二匹の猿』が思い出されます。
百姓の信吉(若林時英)と源太(高尾悠希)が種籾で揉めているとき、両方の言い分を聞き、二人とも納得する案を出して仲裁し「みんなが幸せになるんが一番じゃろ」と言っていた小一郎の姿を。
根本的にそういう人だからこそ、直は一緒に村を出てきたのでしょう。
「無駄な殺し合いは無くすことができる」と、小一郎のような主張をすると、「バカバカしい。そんな世など来るわけがなかろう」と、喜左衛門のように返す意見の人もいるものです。
無駄な殺し合いのない世を小一郎が作ることに500文を賭けた直と、できないほうに賭けた父。けれども、実際に直は、その「無駄な殺し合い」がある世の中のために命を奪われました。
為政者が村の統治機構を満足にせず、地域の安全が確保されていない状況に目を向けなかったせいで。
喜左衛門も、最愛の娘が殺され、彼女の願いがどれほど重要なことだったのか、身に沁みて感じたのでしょう。
直の思いは、世界中で戦いや争いが起こり国内でも殺人や事件が起こる現代にも通じますね。
直への誓いはのちの「平和令」への布石か!?岐阜城から、眼下に広がる景色を見ながら、直に「強うなって、お前の見たかった世を作ってみせる」と誓う小一郎。「無駄な殺し合い」はせずに、皆が円満に解決できるような世の中を。
「小一郎なら、きっとそう言うと思った」と、背中を押す直の幻。
この先、もし自分を見失いそうになっても、きっと小一郎はこの時のことを思い出し初心に戻り、「直への誓い」を思い出すことでしょう。
豊臣秀長となり豊臣政権を支える重要なポジションになっても、この時の約束を絶対に忘れないで欲しいと思いました。
「小一郎ならそう言うと思った」直の言葉は生涯小一郎を支えるだろう。NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより
前回、農民の争いで殺された直の事件が「刀狩り」へと繋がったかもというストーリーの推測をご紹介しました。
『豊臣兄弟!』直(白石聖)が救った少女は何者?この悲劇は“刀狩り”の伏線か?小一郎の後悔と転機今回「直が見たかった『無駄な殺し合いがない世の中を作る』という誓い」は、小一郎の中にずっと息づいていて、刀狩令のほかにも大名間の紛争を禁止する「惣無事令」「喧嘩停止令」「海賊停止令」など、「平和令」と総称されていた私闘を禁止する法令を多く布告することに……そんなストーリー展開になる、布石なのかも。
いずれにしても、小一郎の中には直は存在し続けていくことでしょう。
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