『豊臣兄弟!』お市と浅井長政の夫婦愛は今後どうなる?柴田勝家との再婚・悲劇の運命までを考察
NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の第10話『信長上洛』でついに、お市(宮﨑あおい)が結婚しました。「この婚礼は私の初陣じゃ」というお市の声、「私は信長(小栗旬)の妹。この結婚は私の戦いでもある」という思いなのでしょうか。
「初陣」という言葉通り、ここから、戦国一の悲劇の美女といわれたお市の激動の人生が始まります。
兄に戦略をアドバイスしたり、戦の支度を手伝ったり、兄の労をねぎらったりと、常に寄り添っているお市。「兄弟の絆」がテーマに流れる「豊臣兄弟!」では、信長とお市の「兄妹の絆」も描かれています。
聡明で唯一信長が心を許せる存在が妹のお市。(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)
「帰蝶」の不在で信長とお市の絆を強調する「お市が帰蝶ポジション」「なぜ帰蝶が不在?」という声もあがっていましたが、制作統括の松川博敬チーフ・プロデューサーによると、
「 “豊臣兄弟”の兄弟を立たせるため、秀吉と秀長、信長と市の対比を描く上で信長の孤独というものを設定…(中略)…唯一、本音を話せる人物が、ふたりきりの兄妹である市だけというふうに見せたかった。」
とのこと。
お市が浅井長政に嫁ぎ、夫とも仲良く、3人の娘に恵まれたとき「信長がさらに孤独になることを際立たせたい」という狙いがあったそうです。
また、「戦国時代は『男社会』と描かれがちなので、意図的にメインキャストに女性を増やした」そう。
「子どもでも楽しめて、歴史初心者にも分かりやすく、家族で見られるドラマにしたいというのは最初からのスローガンです。」とのことです。
実際、SNSでも「戦国時代は苦手だけどこれは女性キャストが魅力的」「わかりやすく、歴史初心者を置いていかない」「歴史に詳しくなくても人間ドラマが面白い」という声もよくみかけます。
大河ドラマは、脚本・映像・音楽・美術・演者ほか、さまざまな要素が融合した『総合芸術』です。
史実があいまいな部分を大胆にドラマティックに脚本で膨らませて、「お市と長政の夫婦の絆」「お市と信長の兄妹の絆」を、これからどうエンターテイメントとして表現してくれるのかを楽しみたいと思います。
激動の人生を生き抜くまでを演じる聡明な宮﨑・お市
史実では、永禄10年(1567/婚姻の時期に関しては諸説あり)、信長は北近江の大名・浅井長政と同盟を締結すべく、妹のお市を長政のもとに嫁がせます。この時21歳ほど。非常に美しい姫として評判が高かったそうです。
「豊臣兄弟!」で初めて宮﨑あおいさんのお市が登場したとき、幼く見える「パッツン前髪」が話題になっていました。これまでの大河で登場したお市といえば、北川景子さん、鈴木保奈美さんなど目鼻立ちがはっきりしたイメージが強いよう。
ベビーフェイスのお市に違和感を抱いたり「『篤姫』(2008)のイメージが強すぎる」という声も見かけました。
10代前半の姫から最後は夫共に自害…というお市が年齢を重ねていくさまを演技力の高さで知られる宮﨑さんがどう演じていくのかも見どころでしょう。
政略結婚とはいえど長政とは夫婦仲がよかったと伝わるお市。(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)
長政の「イケメン」説は義に厚いまっすぐな生き方や愛情深さから?一方、浅井長政を演じる中島歩さんは、NHKでは朝の連続ドラマ「花子とアン」(2014)や「あんぱん」(2025)、大河では「青天を衝け」(2021)などの経験があります。
ちなみに、中島さんは明治時代の小説家・国木田独歩の玄孫(ひひまご/5世)で、そこから「歩」の一文字をもらったそうです。
長政は、戦略家でかつ勇猛果敢な武将で、スラリとしたかなりのイケメンだった……といわれています(ゲームや漫画などではそうなのですが)。
けれども、「高野山持明院に伝わる肖像画の写し(昭和2年頃の作品)」(※下の画像を参照)では、イケメンというよりも、ぽっちゃりした色白の餅肌で可愛い感じ。
原本は天正17年(1589)、長政の十七回忌に描かれたそうです。実際に長政に会った人から風貌を聞きながら描いたのだとしたら……だいぶ現在の創作物のルックスとは違うのも面白いところです。
長政のイケメンというイメージは、義に厚いまっすぐな生き方、身内や部下への愛情深さなどから来ている(内面がイケメン)という推測もあります。
領民からも名君と慕われた長政。実は甘酸っぱい「和りんご」が大好きだったとか。長浜市木之本町古橋の三珠院より和りんごが贈られ、長政が寺院に礼状を送ったことが古文書で確認されているそうです。
現在、「小谷城和りんごを復活する会」では、この長政が好んだ和りんごの栽培に成功。和りんごを使ったお菓子や飲み物なども開発し、浅井長政の歴史的背景の商材を使ったお土産として喜ばれているようです。
「豊臣兄弟!」では、聡明なお市と愛情深い長政は仲のいい夫婦として描かれていくような気がします。
史実通りの悲劇を迎える前に、仲よく二人が和りんごを食べている、そんな平和な姿を見たいなと思いました。
長政が恩義ある朝倉氏側について信長が大ピンチに
元亀元年(1570)、信長・徳川連合軍VS朝倉義景が交戦状態に。信長は長政に、お市と結婚する際の条件として「朝倉氏を疎略にしない」と約束をしていました。
長政にとって朝倉家は、浅井家を支えてくれた恩義ある一族。そのため、信長に反旗を翻し、信長は一時挟撃の大ピンチとなり撤退を余儀なくされました。
信長が先に約束を反故にして朝倉攻めをしたとはいえ、またもや「弟」という存在に裏切られることに。
ドラマでは、お市いわく「兄は、実の弟・信勝(中沢元紀)を殺したときの無念や絶望がトラウマになり人を信じられなくなった」とのことでしたね。
たぶん怒りが爆発する場面はドラマでも描かれるでしょう。ただでさえ怖い小栗信長が再び「弟の裏切り」にあったときの怒りぶりは、想像しただけで恐ろしいものがあります。
織田・徳川連合軍による「姉川の戦い」で長政は敗北、その数年後に難攻不落の堅城とされた山城・小谷城を陥落させられ、長政は自害を決意します。
お市も運命をともにすることを望むも長政は許さず、娘たちと共に織田家に引き取られていきました。
義理堅く知勇に優れ人望があったという浅井長政。(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)
兄を助けたお市の「小豆袋」の逸話長政が信長に反旗を翻し、信長を大ピンチに陥れたときのこと。
『信長公記』によれば、当初は、長政離反の知らせが入っても信長は信じなかったそうです。しかしながら相次いで同様の知らせが入り、ついに退去することを決断。この決断を促したのが、お市の「暗号」だったという逸話があります。
お市から信長の元に届いた陣中見舞い。それは「小豆の入った袋」でした。小豆が好物だった信長は喜んで受け取ったものの、袋の両端が紐で括られていることに違和感を覚えたとか。
これは「両方に出口がない=袋の鼠」という示唆ではないか。つまり「朝倉と浅井に挟み討ちにされる」というお市からの警告ではないかと察したというのです。
これは『朝倉義景記(朝倉家記)』に、短かく「陣中ノ御菓子 可被成候トテ袋、小豆ヲ入 其袋ノ跡先ヲ縄ニテ結切り封ヲ付テ信長へソ贈ラレケル」と記されています。(※下の画像の赤線部分を参照)
この逸話は大河『どうする家康』(2023)でも描かれてましたよね。お市の侍女が「おひき候へ いち」の文が入った小豆袋を持ち、浅井の小谷城から金ヶ崎への10里(約40キロ)を走り抜いて伝えるという描き方でした。
この逸話は面白いのですが、『朝倉義景記(朝倉家記)』に記述があるとはいっても明確な史実とはいいきれず、後世の創作といわれています。
ドラマでは、「口に出さずとも、お互いに何をいいたいのかピンとくる間柄」という絆の固い兄と妹の関係。あのお市なら考えそうだなとも感じます。
『豊臣兄弟!』では、この場面は登場するのでしょうか。
※赤線の部分に注目
『朝倉義景記』国立公文書館デジタルアーカイブ https://www.digital.archives.go.jp/file/1233813.html
福井県に伝わる「お市生存説」長政が自害し、天正10(1582)年6月2日の本能寺の変で兄・信長も亡くなり、36歳頃だったお市は、20歳以上も年上の信長の家老筆頭・柴田勝家(山口馬木也)と再婚。
実は秀吉が仲介だった!?お市の方と柴田勝家が結婚した理由その勝家も秀吉との賤ケ岳の戦いに敗れ、居城の北庄城に籠城。お市もともに自害の道を選びます。
激動の人生を歩んだお市ですが、実は「生存説」があります。
実は、北庄城が落城するときに、お市は城の裏手を流れていた足羽川から脱出し、現在の福井県坂井市三国町の勝久寺に逃げ潜伏。
その後、信長の支援者で織田家を財政面で支えていたという豪商・森田家に匿われたそうです。
さらに、旧浅井家家臣の手引きで近江国に移り、やはり浅井家の残党・浅井治郎左衛門の案内で伊賀の下友田に移り住み、53歳に亡くなったとのこと。
治郎左衛門は、荼毘に付されたお市の喉仏を保管し続け、今では三重県伊賀市の浄光寺にある浅井長政の供養塔に納められているという話があります。
この生存説の背景は、「それからのお市の方―北ノ庄落城異聞」の作者中島道子氏によると、浅井の残党が結束を維持していくためにお市伝説を作ったのではといわれています。
最後に実はお市に関する歴史的な資料は少ないそうです。そのためか、大河ドラマに登場するお市・信長像は時代とともに変化しています。
信長のキャラクターは冷酷な絶対君主から、近年では「繊細さや孤独を持ち合わせるカリスマ」というイメージに、お市は、悲劇の美女から、自分で生き様を選ぶ芯の強さ、知性の持ち主というイメージに変化しているそうです。
前項でご紹介したように、「豊臣兄弟!」は「男の数だけ女性もいる」という考え方で、女性のキャラクターもドラマティックに描いていくのがコンセプトのよう。「ばちばちの男同士の戦だけではない」のが、このドラマの魅力だと感じます。
お市と長政の関係、のちの柴田勝家との再婚など、どのように描かれるのでしょうか。(今のところ、勝家の隠しきれないお市に対する想いがちょいちょい顔にでていますね)今後の展開も見逃せません。
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【豊臣兄弟!】戦国の母・お市(宮﨑あおい) 自害で幕を閉じた悲劇と、三姉妹を生かすため選び続けた生涯参考:
福井県ホームページ「生存説が残り絶世の美女、お市」 浅井長政のすべて 小和田 哲男 著日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan


