【豊臣兄弟!】残酷な史実の前フリに…浅井長政(中島歩)のお市(宮﨑あおい)への“誠実な愛情”を考察
「そなたは織田と浅井を結ぶ架け橋じゃ」。
長身のイケメンでシュッとしていて優しい……ただそれだけの「物足りないお人」ではなく、誠実な愛情と漢気を見せた浅井長政(中島歩)。
兄のため男に生まれ「弟」でありたかったと願い、「兄のような人が好み」と言い切っていたお市(宮﨑あおい)の心を動かしました。
戦いで勝ち進むだけが「強き武将」ではない。愛する人の心を体を張り守ることも強さだというところを見せてくれた長政。
さらに、「潔う死んで満足するのは侍だけ」「公方様。無様でも生き延びてくだされ!」という小一郎(仲野大河)の言葉に涙を流す足利義昭(尾上右近)。
大ピンチに駆けつけた兄・藤吉郎(池松壮亮)と抱き合う小一郎の兄弟の絆。
大河ドラマ「豊臣兄弟!」第11回『本圀寺の変』。今回も、さまざまな展開がありました。
『豊臣兄弟!』小一郎の“僧侶の変装”や説得は史実?「本圀寺の変」の実際…第11回振り返り・解説そんな中から、史実では悲劇の未来が待つだけに胸キュン過ぎた浅井長政とお市の夫婦の絆、小一郎の中に息づいている直(白石聖)の願い「生きていること」、思わず涙した二つの場面を振り返ってみました。
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浅井長政のイケメンぶりと優しさにキュンとするもクールに振る舞うお市。NHK大河『豊臣兄弟!』公式サイトより
過去一番の「胸キュン武将大賞」浅井長政前回、戦国武将オールスターズが登場し新章に入った「豊臣兄弟!」。
さまざまな話題が1話に凝縮され笑いあり涙あり感動ありが特徴ですが、制作統括の松川博敬チーフ・プロデューサー曰く、戦国時代のドラマは「男社会」中心になるので、「意図的に女性を増やした」とのこと。
「子どもも楽しめて、歴史初心者にも分かりやすく、家族で見られるドラマにしたいというのは最初からのスローガン…(中略)…歴史への入り口になったりするような作品になればいいなと思っています」ということだそうです。
オリジナルキャラや逸話が苦手という史実派もいるようですが、個人的には、それらの創作が「次への話へと紡いでいく役割」を果たしているのが、ドラマの面白いところだと感じています。
根底に流れる「兄弟の絆」や「生きていれば十分」というテーマがブレないので、ぐっときたり胸キュンだったり涙したりする展開も楽しめるもの。
今回、一番の「胸キュン大賞」だったのは、なんといっても浅井長政(中島歩)でしょう。
今回の胸キュン大賞、浅井長政。NHK大河『豊臣兄弟!』公式サイトより
せっかく買った「鏡」を渡せない「お優しいお方」「兄上とは違って、私のタイプではない!」と言い切っていたお市でしたが、実際に会った長政がイケメンの上に優しい男性だったことにときめいた様子。
けれども、兄譲りのツンデレで素直ではないお市は、政争の道具として浅井家に嫁いだ以上「胸キュンなどしている場合ではない!」と、気持ちを引き締め距離感を持って接することに決めたようです。
一方、そんなお市の心情を察していた長政。信長から頼まれた土産の箱をお市に渡します。中に入っていたのは真紅のふさが付いた美しい鏡。
それを見た瞬間、長政の表情が「あぁ…」というように曇りそっと目を逸らしたのが気になったのですが。すぐその理由がわかりました。
「兄に何かを買うてもらったことなどほとんどありませぬ」と、鏡を手に取り愛おしそうに撫でるお市はとても嬉しそう。こんな表情を、長政は初めて見たのではないでしょうか。
「すまぬ、私は忙しさのあまりに気が回らなかった」と詫びる長政。「そのような気遣いはいりませぬ。武功をあげることが何よりの手土産。戦に出たら私のことなどお忘れください」と答えるお市、冷たい声色。
「それはできぬ。私はそなたを思えばこそ戦える……織田殿のような強き武将になれそうもない。すまんな」といいつつ部屋を去る長政ですが、廊下を歩きながらふと立ち止まり、懐から布にくるんだ包みを出します。
中には信長の土産と同じ鏡が!それを眺めてため息をつく長政でした。
実は、「気が回らなかった」どころか、ちゃんとお土産を買ってたのですね。家臣に頼んだのではなく、自分で吟味してお市が喜ぶ顔を想像しながら一生懸命に選んだのではないでしょうか。(この中島・長政にはそんな誠実さを感じます)
けれども、信長の土産とかぶったうえにお市の嬉しそうな表情を見て「実は私も買ってたんだ」とは言えなくなってしまったのが切な過ぎました。
思わず、古いですが「惚れてまうやろう〜!」と叫びたくなった胸キュンな場面。そんな長政の後ろ姿を見て、「まこと、お優しいお方」とつぶやくお市の口調がちょっと冷たくて切ない。
「私は織田の人質。いざということもあるから決して心は許すまい!そもそも兄上と違い過ぎてタイプじゃないし!」と、頑なに心のシャッターを降ろしている感じがしました。
本当は自分も鏡のお土産を買っていたのに渡さない長政が切ない。NHK大河『豊臣兄弟!』公式サイトより
「人質とは思っておらん」に解けるお市の心お市が信長に鏡のお礼をいうために文をしたためているところに、長政の父・浅井久政(榎木孝明 )が登場。
婚礼の席でも「織田家の嫁など決して歓迎はしないぞ」感をひしひしと漂わせていましたが、文について「我が浅井の内情を知らせておるのではあるまいな」と嫌味をいいます。
一応、「戯言じゃ」というものの悪意を感じましたね。これが浅井家での日常なら、お市が心のシャッターを降ろしている気持ちがわかります。
ある日、廊下を歩いていた長政とお市は、庭で久政付きの家臣が焚き火の中に鏡を放り込んで燃やしている場面に遭遇。陰湿な嫌がらせです。
「何をしておる!」と叱責し「誰か水を!」と叫ぶ長政に「もうよい!」というお市。
「もうよいのです。いつまでも織田を捨てられぬ私が悪いのじゃ」と。静かに、けれども泣きそうなお市の表情を見た長政は、腕まくりして気合いを入れ、炎の中に手を突っ込み、素手で灼熱の鏡を取り出しました。
手は火ぶくれの火傷状態になり痛そうな長政に「なぜこのような真似を!」と慌てて問うお市に、「そなたの大切なものであろう」と答えます。
「捨てずともよい。わしはそなたを人質とは想っておらん。そなたは織田と浅井を結ぶ架け橋じゃ」
心のこもった長政の言葉に、おもわず声をあげて胸元に顔を埋めて涙するお市。
見ているほうも、二度目の「惚れてまうやろう〜!」な、胸キュン過ぎるセリフでした。
焚き火の前で地べたにしゃがみ込みこみ抱き合う二人に、ハラハラと雪が降りかかります。「雪がわしの手を冷そうとしてくれる。空もわしらの味方じゃ」と笑みを浮かべる長政の胸に顔を埋めるお市。
包み込むような大きな長政の愛情に、今まで気張っていたお市の心がするすると解けて「この人が好き」になっていくのが伝わってくる、尊い場面でした。
この後、この夫婦が迎える残酷な史実を思うと、史実のほうを変えて欲しい。
お市は、長政が取り出してくれた鏡を箱の中にしまいます。そして、長政のお土産の鏡は机の上に。織田の鏡と浅井の鏡、両方を大切にすることにしたお市でした。
実際に二人がどれくらい仲睦まじかったかという記録は残っていないそうですが、約4年間で三人の娘を授かっていることを考えると仲は良かったのでしょう。
信長からお市への土産を預かったとき、アウェーなお市を気遣い信長を小谷城に顔を出すように誘った長政。義理とはいってもこの兄弟の絆がずっと良好であったなら……と思ってしまいました。
長政の言葉と行動にお市の心もほどける。NHK大河『豊臣兄弟!』公式サイトより
「生きて帰ること」直の願いが小一郎の中で生きていたそして、今回、もうひとつ胸キュンで泣かされたのが小一郎の「本圀寺の変」での誠実な言葉でした。小一郎の中に直(白石聖)の願いは生きていると思わされた場面。
三好三人衆に襲撃され、小一郎と明智光秀(要潤)に「もはやこれまで。そなたらは逃げ延びろ。わしの命と引き換えに将軍殺しの悪名を、末代まで背負わせる。それを知らしめて欲しい」と覚悟を決めた足利義昭。
けれど、小一郎は、
「将軍殺しの悪名などすぐに忘れられてしまう。侍はともかく百姓にとっては誰が将軍様でもさして違いはございません。百姓はみな、その日その日を生きていくのが精一杯じゃ。潔う死んで満足するのは侍だけでございます。」
「百姓はどんなに不作でもどんなにひもじくても泥水すすっても生きようとする。なぜなら次の年こそ豊作になると信じているからじゃ。」
と誠心誠意語ります。
そして義昭に近づき「公方さま、豊作の世にしてくだされ。無様でも生き延びてくだされ」と説きます。
このドラマの根底にずっと流れている「生きて帰ること」。
直の「生きて帰ってくれば十分じゃ」
秀吉の「生きているだけでお手柄じゃ!」
というセリフを思い出します。
「わたしの身にもなってくだされ。ここで公方さまを死なせたら兄者からも殿様からも大目玉じゃ!」と、緊張感をほぐすところは小一郎らしい。
「なんじゃ、結局は自分のためか」と光秀に突っ込まれて「みなのためじゃ!」と笑いを導きます。小一郎の「みんなのため」は、直の「小一郎はみなが満足しないと気が済まない」と言っていた言葉と共鳴していますね。
公方さまが「こ、こんなこと、誰かに言われたの初めて……」みたいに受け止めて、笑いつつも涙をこぼす場面もよかった。
小一郎の心の中には、岐阜城の上で直の幻に誓った約束が息づいていました。「きれいごと」と言われようが、それが直が見たがった世界。こんな風に、たとえ結婚しても、直は小一郎の中に信念として生き続けて行くのでしょうか。
将軍の自分にも臆さずに物申す小一郎、タイミー「侍」を集めていかにも織田の軍勢が駆けつけてきたように図る藤吉郎の知恵、「絶対に兄者は助けに来てくれる」と固く信じている弟。
この兄弟が欲しいと願う義昭の気持ちもわかります。
もしかしたら、役立つというだけではなく、兄を妬ましく感じていた弟だった自分としては、この兄弟の絆の強さを側で見ていたいのかもしれません。
小一郎の「無様でも生き延びてくだされ」に涙する足利義昭。NHK大河『豊臣兄弟!』公式サイトより
最後に今回も、胸キュンあり、涙あり、「屁」騒動あり(「屁一郎!」と「へえ…」のくだりは、カチッ!となっている光秀以外、皆が思わず笑っていた場面も印象的)、知恵比べありetc。
今までの大河とは違い、柔らかく知的な義昭もいい感じですし、いかつい武将や百戦錬磨の堺の商人たちの中で、一服の清涼剤みたいに美しき竹中半兵衛(菅田将暉)もよき。
来週は、「稀代の悪女」茶々が爆誕する様子。のちに秀吉の運命を動かす茶々を藤吉郎が抱いている姿を見ると複雑です。
そして小一郎の正室となる慶(ちか/吉岡里帆)も登場するよう。まだまだ先にして欲しいと思いつつ。
【豊臣兄弟!】直亡き後、小一郎は誰と結ばれた?妻となる慶(吉岡里帆)と側室・光秀尼の生涯平和で幸せそうな場面も、その後の悲劇の前フリになっているのが大河ドラマのしんどいところ。
今回のラストシーン。「殿がお呼びです」と侍女に声をかけられたお市は、机の上に置いた長政のお土産の鏡に顔を写し、微笑んで大切そうにそ〜っと元に戻します。
初めて恋する女性の表情になったお市。どうが、このままであって欲しいと思ってしまうのでした。
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