『豊臣兄弟!』また“弟”に裏切られるのか…織田信長と浅井長政の絆を狂わせた絶望の謀反を考察

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『豊臣兄弟!』また“弟”に裏切られるのか…織田信長と浅井長政の絆を狂わせた絶望の謀反を考察

「浅井長政、謀反にございます!」

とうとう、聞きたくなかった知らせが。

NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」の第13話『疑惑の花嫁』のラストシーン。「我が忍びからの知らせが!」と、柴田勝家(山口馬木也)からもたらされた、「浅井長政(中島歩)謀反」の第一報。

ここ数回、長政とお市(宮﨑あおい)の夫婦愛や、深刻なブラザーコンプレックスを抱いている織田信長(小栗旬)が、長政への信頼と愛情を深めていく様子が丁寧に描かれていました。

暖かな「光」に満ちていた分、これから始まる奈落の「闇」を想像すると身震いが。

長政の武将像にはいろいろな説がありますが「豊臣兄弟!」では義理に厚く、知勇に優れ、お市を愛し、信長の信頼と愛情を得た苦悩のイケメン・プリンスとして描かれています。

裏切るほうも裏切られるほうも辛い、断ち切られた「兄弟の絆」を考察してみました。

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人間不信の信長が、義弟・長政に本音を語るようになったのに。 NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより

信長が長政に寄せた信頼と「弟」への兄弟愛

政略結婚ではあるものの、お市を娶り同盟関係を築いた織田と浅井。

11回『本國寺の変』では、結婚を「初陣」と捉え心を開かないお市に対し、長政は手に大火傷を負ってまで「本気の愛」を伝え夫婦の距離は一気に縮まりました。

12回『小谷城の再会』では、長政の嫡男・万福丸(近江晃成)と長女の茶々に囲まれ、幸せそうなお市の姿を見ることができました。そして、「この世に穢れなきものがいるとしたら、それはそなたじゃ。」という、信長の長政に対する最高の口説き文句を聞きました。

このドラマの信長は、豊臣兄弟の絆の強さを羨んでいたり、鉄砲の稽古中に秀吉が倒れたときは慌てて駆け寄たり、お市に責められると何も言い返せなかったりと、とても人間味のある人物として描かれています。

なかでも、「兄弟の絆」に強いコンプレックスと羨望を抱き続けている様子がたびたび描かれてきました。

謀反を企てた弟・信勝を殺し、人間不信という大きな傷を背負った信長。事切れた信勝を抱きしめて「なぜじゃ。なぜじゃ、信勝」という慟哭は忘れられません。

この「なぜじゃ」は、誰がどう分析して説明しても、信長は直接信勝の口から聞かないかぎり、永遠に納得できないでしょう。「なぜじゃ」と苦しみ人が信じられず「兄を裏切らない弟」という存在に羨望を抱いていた信長。

政略結婚で義弟となった長政の、素直で実直な人柄やお市に対する偽りない愛情を知り、さぞかし嬉しかったことでしょう。

本音を漏らす信長

今回、信長は、近江・常楽寺で相撲会を催しました。

ちなみに、史実でも「三度の飯よりも相撲が好き」といわれていた信長。JR安土駅に設置された力士像の石碑には、「元亀元年(1570)3月1日、信長が近江国中から相撲取りを集めて常楽寺で相応大会を行った」旨が刻まれています。

安土城築城後は、天正6年(1578)〜天正9年(1581)にかけて毎年相撲大会を催していたそうです。

滋賀・JR安土駅「安土と相撲」像。左下に信長の相撲大会を開いたことを綴った説明が。photo-ac

ドラマでは、信長が長政と相撲を取り「お主、手を抜いたろう!」といちゃもんをつけて、何度も投げ飛ばします。こんなに心の底から楽しそうな信長、初めてみました。

「手など抜いておりませぬ!」と、倒されても起き上がり愚直なまでに向かってくる長政に、誠実さや真摯さを感じ「この男は信頼できる」と思ったのではないでしょうか。

「とうとうワシには勝てんかったのう」という信長に、擦り傷を作りボロボロに疲れ果てた長政は「だから、私は始めから手加減などしておりません!」と怒るのですが、「まあそう怒るな」という信長。

「つい楽しくての。またこうして『弟』と相撲が取れるとは」と。この信長の『弟』という言葉は、悲劇へのフラグ。

握り飯にかぶりつく長政の姿に、昔子供の頃悪さをして庭に縛られているとき、弟の信勝が握り飯を食べさせてくれたことを思い出す信長。

くったくのない長政に、ただひたすら自分を慕っていた幼い信勝の姿が重なるのでしょう。過去失った「弟の信頼と命」が、再びこの手に蘇った……二度と取り戻すことのできないものを取り戻せた感慨はいかばかりだったことか。

兄を裏切らない「弟」ができたと思っていたのに。NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより

覚悟を見せる長政に万福丸への配慮を伝える

相撲のあと、朝倉討伐を告げる信長。

「我らは朝倉とは古くからのよしみがあります。我が息子、万福丸も人質にとられているので、討伐に異を唱える家臣もおりましょう。その者たちはこの長政が説き伏せまする」と長政。

「お市を娶ったときからこのような日がくることは覚悟していました。存分におやりください。」と頭を下げます。

信長は、そんな長政の肩を叩き、「では、こたびの戦、浅井は近江を動かず我らの後方の守りに努めよ。浅井は朝倉討伐軍にくわわらずに状態を静観していればいい、そうすれば朝倉も万福丸には手出しはしないだろう。いずれ我らが救いだす。」という配慮を見せます。

深く感謝する長政に「この戦が終わったらまた相撲を取ろう」という信長と、握り飯を頬張りながら「つぎは私が勝ちまする!」と自信満々に答える長政。

その次の相撲は行われないことを知っているだけに、しんどい場面でしたね。

「長政のことしか見ていなかった」信長。

影響力を持つ父親・浅井久政(榎本孝明)にも根回しをしておけばよかったのに……とつい思ってしまいました。もしかしたら、信長自身は、家督をついだあとにも口出ししてくる鬱陶しい父親とやりとりする経験がなかったから、父親への根回しなどは思いつかなかったのでしょうか。

長政の父・浅井久政 NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより

「長政との約束」と万福丸救出の命を下す信長

お市を目の敵にし「女狐」呼ばわりする浅井久政。小谷城の本丸に入り込み長政を裏切らせるように仕向ける朝倉景鏡(池内万作)。

「万福丸を見捨てるのか。あの女狐のせいですっかり腑抜けとなったか」という久政も、「そういうことなら、その元凶を取り除いてしまえば、長政殿も昔のような武将に戻られますかな」という景鏡も、実にいやらしい。

長政「市には指一本触れさせぬ!」
景鏡「万福丸様はお見捨てになっても、お市の方様は助けたいと」
長政「そうは申しておらん!」
景鏡「では、どうなされます?今この場で、お決めくだされ」

そのあと、長政が苦悩する姿など余計な場面は一切描かず。

戦いの前の宴と豊臣兄弟へ万福丸救出の命を下し「長政と約束をした…」と藤吉郎に伝える信長の場面へ。

そこにいきなり「浅井長政、謀反にございます!」の一報。もたらしたのは、信勝を斬り将来お市の再婚相手になる柴田勝家。

一気に展開する速さが、逆に長政の苦悩を物語っていると思いました。

小谷城址の石碑 wiki

謎も多い浅井長政

実際、浅井長政という人は謎も多いようで、同盟を結んだ理由も諸説見受けられます。

個人的には今回のドラマで描かれているような「義にかたい愛情深いプリンス」説が好きです。(残された肖像画はぽっちゃり男子ですが)実際、「この豊臣兄弟で描かれている人物像が史実に近いのでは?」という意見も多数みかけます。

長政のそんな人柄が偲ばれるのが、家臣に宛てた手紙。

長浜城歴史博物館には、「姉川合戦の翌年、浅井長政が家臣の阿閉甲斐守に宛てた書状」が残されています。

阿閉甲斐守の子息・五郎右衛門尉をはじめ一族が討死したことを慰め、信長との戦いが終息したあかつきには、恩賞を与える

と述べている内容で、姉川合戦に関して長政が家臣へ宛てた感状で原本が残る唯一のものだそうです。

また、石川武美記念図書館蔵には、小谷城が陥落し自害する前日、長政は片桐直貞に当てた感状も現存しているそうです。

長政は自分に付き従ってくれた直貞に対し

「忠節抽ぬきんぜられ候」と忠義の心を称賛し、勇敢な覚悟に対する感謝の気持ちは書き尽くすことができない

と述べています。

非常に小さな紙にしたためられているのは、懐に隠しやすいように長政が配慮したのだろうと考えられているそうです。

主君が家臣に与える感状は、いわば次の就職先に向けての推薦状のような役割もあったとか。

自分が最期を迎える直前に、尽くしてくれた部下に感謝し未来を考慮する上司。

推せます。

滋賀県長浜市にある長浜城歴史博物館 (撮影:高野えり)

最期に

以前、お市が両方を紐で縛った小豆が入った袋を、信長に陣中見舞いとして送り、「朝倉と浅井に挟み撃ちされる」と知らせという逸話をご紹介しました。

『豊臣兄弟!』お市と浅井長政の夫婦仲は今後どうなる?柴田勝家との再婚・悲劇の運命までを考察

後世の創作といわれていますが、「豊臣兄弟!」ではこのエピソードはこの先、描かれるのでしょうか。

いずれにしても、信長の数ある戦いの系譜の中でも一、二を争う激戦「金ヶ崎の退き口」が始まります。

「豊臣兄弟!」ついに“金ヶ崎の退き口”が描かれる!次回4月12日放送のあらすじ&場面写真、相関図が公開

「またこうして『弟』と相撲が取れるとは思わなかった」が、「またこうして『弟』に裏切られるとは思わなかった」という最悪過ぎる展開に。

「なぜじゃ。なぜじゃ、長政」という激情は、信長をどのような行動へと進ませるのでしょうか。

ちょっとここで、超適当な徳川家康(松下洸平)と絶妙な表情をする石川数正(迫田考也)のコンビで「あれ、誰?」特集とか、OFFの日に街で食べ歩きを楽しむ竹中半兵衛(菅田将暉)とか、そんなスピンオフをやって、情緒を休憩させてほしいと思ってしまいました。

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