【豊臣兄弟!】“信じる”が貫いた神演出…闇落ち寸前の信長を救った藤吉郎、第14話を考察

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【豊臣兄弟!】“信じる”が貫いた神演出…闇落ち寸前の信長を救った藤吉郎、第14話を考察

「なぜじゃ。なぜじゃ。……なぜじゃ、長政ぁ!」

NHK大河ドラマ「豊臣兄弟」第14話『絶対絶命』のオープニングは、先週のラスト「浅井長政、謀反」の一報から始まりました。

凍りついたように表情を変えない織田信長(小栗旬)からの、鎧を身に付けた浅井長政(中島歩)の後ろ姿。「戦の支度が整った」の知らせを聞き、両手を組み「すまぬ…」と悲しげにつぶやいてからの「出陣じゃ!」の声に「もう、絶対に後にはひかない」という覚悟を感じます。

「お〜!」の勇ましい声をバックに、クローズアップされるボロボロ涙をこぼして泣く茶々の姿は、今後の彼女の人生を知っているだけにより切ない。

普段は冷静で気丈なお市(宮﨑あおい)の不安げな表情を初めてみました。

「豊臣兄弟!」では、制作側のコンセプト通り、いつも登場人物の人間らしさ・感情・表情が丁寧に描かれています。

ドラマのベースにあるのは『兄弟の絆』ですが、今回は「信じる」がテーマに流れていました。

▪️信じた『弟』の裏切りを受け止められず、手負の獣のように荒れ狂う信長。

▪️信長を体を張っていさめ「信じられる家臣がいる」という光を見せた藤吉郎(池松壮亮)。

▪️「だれも信じてはくれない」という竹中半兵衛(菅田将暉)の心のシャッターを開けた豊臣兄弟。

▪️半兵衛の戦略を「信じよう!」する弥助(上川周作)、甚助(前原瑞樹)の豊臣家兄弟。

▪️いつも適当なのに、藤吉郎の圧倒的な信じる力で意に反してプラセボ効果を与えてしまっている徳川家康(松平洸平)などなど。

さまざまな「信じる」があった中で、今回は信長と藤吉郎を中心に振り返って考察してみました。

娘をあやしながら心配そうな表情を浮かべるお市(NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより)

「裏切り」を信じることができなかった信長

謀反の知らせを、「ありえん、朝倉の流した偽りじゃ」と一蹴する信長に、「小谷城では皆が戦の準備をしている」と、かぶせる柴田勝家(山口馬木也)。

けれど、「それはおそらく、我らに加勢するためであろう。ふっ、長政め、あれほど動くなと申したのに」という信長が切な過ぎました。

「俺のために動こうとしている。しょうがないやつだなあ」と、自分自身にそう信じ込ませようとしているようで。

実際、『信長公記』によると長政の離反を聞いたとき、信長はすぐには信じなかったといいます。

「然れども、浅井は歴然御縁者たるの上、あまつさえ江北一円に仰つけらるるの間、不足これあるべからざるの条、虚説たるべき」

(とはいっても、浅井は歴然たる御縁者である上に、さらには江北一円を任せられているのだから、不足するところなどあるはずがない。謀反などこの話は嘘に違いない。

といったところでしょうか。

また、『毛利家文書』(毛利家に伝来した古文書・系図類の総称)にも、「信長は、長政を非常に信頼していたために謀反の一報を聞いたときに「虚報」だと疑った」……とあるそうです。

『信長公記』に関しては、「信憑性がある」説と「信長を持ち上げているだけの創作物」説がありますが、この大河ドラマでは、「裏切りの知らせなど、到底信じることはできなかった」信長が描かれています。

※左ページ「江北の浅井備前守長政が掌を返し、敵方についたという報であった。信長公ははじめこの情報を信じなかった。浅井は歴とした織田家の縁者であり」の部分

『信長公記』巻三(加賀市立中央図書館所蔵) 出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100108970

お市の「手紙」が「小豆袋」へとつながる展開

長政の謀反の知らせを信じようとしない信長に、勝家が差し出したのがあの「お市からの両方の口を紐で縛った小豆袋」でした。

「みよ、まことに浅井が寝返ったなら、このように気が利いたものを送ってくるはずはない」という信長。

けれども、竹中半兵衛に「それは我らのことでは。両方の口を縛ってあるのは『袋のネズミ』だと」といわれ、藤吉郎に「お市さまのせいいっぱいの知らせでは」といわれ、カッとなり「こじつけじゃ!」と袋を握りしめて破り捨てます。

破れた紙袋を見た小一郎は、紙の端に「市」の名前があるのを見つけます。

それは以前、お市が政略結婚で浅井に嫁ぐ前に、長政宛に文を書こうと思うも何も書けないと、小一郎に相談したときの手紙の紙でした。

久々に小一郎が小谷城で幸せそうなお市に再会したとき、「もう白紙の文はご無用でございますね」と尋ねると、「そうじゃな」と穏やかに笑っていました。

小一郎だけが知っていたお市の心情。あのときの手紙の紙が「小豆袋」として使われるとは……。

「この白紙の手紙は、浅井と織田の間で胸引き裂かれる思いで、殿に窮地を知らせるお市さまの心そのもの。それを無駄にしないで逃げてくだされ」と、説得します。

以前、「お市と浅井長政の夫婦仲は今度どうなる?」という記事でご紹介したのですが、この逸話は『朝倉義景記(朝倉家記)』に記されているものです。

袋ヘ小豆ヲ入、其袋ノ跡先ヲ縄ニテ結切リ、封を付テ信長ヘソ贈ラレケル

とだけなのですが。(現在では「江戸期に創作されたエピソード」という解釈がされています)

ドラマでは、手紙の紙をお市が保管していて、兄に窮地を知らせるメッセージとして使い、小一郎がその意味を察し信長を説得をするという流れ。大河ドラマにある「そう来たか!」な展開でした。

「市」の名前が書いてあった「小豆袋」(NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより)

身を挺し信長に「信じられる家臣がいる」を証明

小一郎の言葉を信じた信長。

「なぜじゃ。」と呟きます。

「なぜじゃ」「なぜじゃ」と信長がつぶやくたびに、長政との交流のシーンが流れます。

「兄上!」と明るく笑う実の弟・信勝(中沢元紀)の姿、背後からばっさりと斬られた信勝の姿、「兄上〜!」と叫びつつ投げられても投げられても自分に立ち向かってくる相撲をとったときの長政などの映像を、これでもかとかぶせてくる鬼演出でしたね。

「なぜじゃ、なぜじゃ、なぜじゃ」と、徐々に唇と振るわせて繰り返しつぶやき、「長政〜!」と、体を折って叫ぶ信長。

そして、何かを飲み下し立ち上がった信長(このときの『シャキッン!』という金属音が、実にダークサイド覚醒感がありました)は、「長政が首この手ではねてくれるわ。」と、宣言しました。

「ここは一旦逃げよう」と提案する家臣らに怒りは爆発。

家康の胸ぐらを掴むは、「気を鎮めて」という明智光秀(要潤)を蹴り倒した挙句、「公方の飼い犬ごときが指図するな」「公方が仕組んだことか」と刀を向けるほど荒れ狂います。

そんな様子に恐れ慄く家臣たちのなかで、信長の心情を誰よりも理解していた藤吉郎。

「殿〜!」と叫び刀で自分の足を突き刺す暴挙にでました。その行為に信長は呆気に取られます。

「申し訳ありませぬ。この猿、うっかり傷をおってしまった。これでは動けないので、わしがここに残りまする」と申し出ました。

「戦に最も大切なのはいかに勝つかじゃ。けれど、その次に大事なのがいかに負けるか。この戦は我らの負けにございまする。朝倉の追手はこの猿が止める。殿は、その隙に京へお戻りくだされ」と。

そして、「殿さえご無事なら、我らは何度でも蘇りまする。」と叫び、ニカっと満面の藤吉郎スマイルを見せます。

毒気を抜かれた表情ながら、みるみるうちに目に涙を浮かべる信長。

全身全霊で自分への「愛」を見せてくれた藤吉郎の行為にどれだけ救われたことでしょう。

人間臭過ぎるゆえデリケートで闇堕ちしやすい信長を、ずっと信じてきた藤吉郎だからこその「殿を信じてついていく人間はここにいます」という行為に、やっと自分を取り戻せました。

秀吉に自分の鎧を渡し、「ふたとき経ったら、すぐにわしのあとを追ってこい。京で宴の支度をして待っておる。朝倉のまぬけぶりを面白おかしくわしにきかせろ」という信長の目からは、一筋、涙が伝っていきました。

藤吉郎の信長への「愛」がすごかった。(NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより)

適当な家康を信じる藤吉郎だからこそ得られる効果

そんな藤吉郎に薬袋を差し出し「傷に塗れば痛みがやわらぐ」と渡す家康。

前回、名前も覚えていなかったくせに、今回は信長の暴挙を止めた藤吉郎に対するリスペクトの気持ちを持ったのかと、ジ〜ンと来たのですが。

史実では、健康オタクで漢方を愛用し自ら薬を調合していた家康。戦場では傷に必要な薬を常備していたものを藤吉郎に授けた……と、思いきや、まさかの痒み止めだったとは。

「懐のものを出せ」と無言で指図する家康に、「何言ってんだ、こいつ」な石川数正(迫田考也)の表情がよかったですね。

相変わらずタヌキですが、家康本人の意図とは異なり、彼の言葉を100%信じる藤吉郎はプラセボ効果を得るばかりなのが面白い。

いつも、適当な家康にとっては、なぜか自分を疑うことなく全力で感謝の気持ちをぶつけてくる藤吉郎や小一郎は、得体が知れず「あやつらが恐ろしい」ことでしょう。

いつも適当な家康を信じる藤吉郎。(NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより)

最後に

藤吉郎たちは、生きて戻ると信じていた信長。

京中の医師や薬師を集め、膳を用意し、女性を集め、ねぎらう用意していました。

自分を信じ救ってくれた藤吉郎に対する精一杯の感謝ともてなしに、信長がいじらしく感じます。

けれど、そんな一面を持ちながらも、将軍・足利義昭(尾上右近)に対し頭を下げ戦の失敗を詫びながらも、「体を休めて」という将軍に「どうか、ご安心くだされ。」といいつつ、頭を上げたときの小栗信長の血走ってぶっとんだ眼差しには戦慄が走りましたね。

さまざまな部分に散りばめられた断片が、あるとき一気に集約してひとつの物語を作る瞬間。それを、「あれがここにつながるのか〜!」と反芻する面白さが大河ドラマの魅力だと思います。

徐々に登場人物の個性や立ち位置などが明確になってきて、ますます面白くなってきました。

けれど、別れが近づいている長政とお市のこれからの展開を思うと、「これ以上先に進んでほしくはない」とか、「史実なぞ無視で、逃げ延びて」と思うのですが……いく末を見守りたいと思います。

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