『豊臣兄弟!』姉川は“地獄”だった…お市・長政・小一郎の「覚悟」で新しい局面に突入した第15話を考察

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『豊臣兄弟!』姉川は“地獄”だった…お市・長政・小一郎の「覚悟」で新しい局面に突入した第15話を考察

「ここは地獄じゃ」

殺された人間が流した血で、赤く染まった姉川の水や河原。それを映したように空も赤く染まりました。

NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」第15回『姉川大合戦』で描かれたのは、信長の戦歴のなかでも指折りの激戦といわれる「姉川の戦い」。

「裏切ったものの末路は地獄」という信長の(小栗旬)の言葉のように、姉川は地獄絵図と化しました。

浅井軍は引いたと知らせが入り織田軍は勝どきをあげるも、明智光秀(要潤)も柴田勝家(山口馬木也)も、拳は振り上げず重い表情。

そして今回、初めて人を斬り、その衝撃と高揚感からか次々と敵を殺した小一郎(仲野大河)は、呆然自失状態になり刀を鞘に収めることもできません。当然、勝どきは耳にも入っていない様子。

戦場に残ったのは、血を流し続ける骸と引き裂かれた旗だけ。

「ほんとに、わしらは勝ったのかなあ」と呟く藤吉郎(池松 壮亮)。
「わからん。わからんけど、これは地獄じゃ」と泣く小一郎。

武力で平定していく戦いは、敵も味方も、最前線にいる者が命を落とし「地獄」を生む。その現実を目の前に突きつけられ座り込む、兄弟の後ろ姿が印象的でした。

今回、随所に散りばめられたそれぞれの「覚悟」

「もう後戻りはできない」と、覚悟して新たな局面に突入した小一郎と藤吉郎の兄弟、浅井長政(中島歩)とお市(宮﨑あおい)の夫婦を中心に第15回『姉川大合戦』を考察してみました。

姉川の合戦で「地獄」を見る豊臣兄弟。(NHK大河『豊臣兄弟!公式Xより)

「もう後戻りできない」修羅の世界に踏み出す小一郎

前回の『絶対絶命』で、敵にとどめをさせなかった小一郎。「次の戦いで人を殺す前フリ」と思った人は多かったようです。

予測通り、大ピンチに陥った兄の命を助けるため小一郎は初めて人を殺しました。一度人を斬ったあと、タガが外れたかのように斬って斬って斬りまくります。

けれど、死ぬ直前に「おっかあ……」叫んだ敵の言葉に、思わず振り返りました。殺した相手にも、無事を祈る家族がいることを思い出したのでしょうか。

農民だった小一郎は、「戦いで百姓が殺される」時代を憎み、「百姓が作った米がなければ生きていけないくせに威張っている侍」が大嫌いでした。

織田の家臣になってからも、死よりも名誉を選ぼうとする将軍・足利義昭(尾上右近)に「百姓は名誉のために自ら自死を選ぶようなことはせん!みっともなくても生き延びてくだされ」と説得しました。

「命を大切」にしてきた小一郎が、初めて、兄の命を守るためには他人の命を奪わなければ、生きていけないことを実感したのでしょう。戦いが終わり我に戻り、涙をボロボロ流します。

姉川の合戦で、小一郎は「もう後戻りはできない」世界に踏み出しました。

史実では、秀長の初陣は、美濃の鵜沼城攻めだといわれています。

史料『武功夜話』によると、鵜沼城開城後に秀吉が斎藤龍興の家老・長井隼人正道利の急襲を受けて、死を覚悟するほどの窮地に陥ったときに駆けつけた秀長に救われ「地獄で仏とはこのこと」とあるそうです。

このときが「兄の命を助けるために敵を殺す」経験が初めてだったかどうかは不明です。

目がいってしまっている小一郎が次々と人を斬っていく。(NHK大河『豊臣兄弟!公式サイトより)

「姉川大合戦」の中心にいたお市

合戦のシーンとは対極的だったのが、お市と長政の静かな会話のシーン。

長政「まことにそれでよいのか」

市「あなた様こそ、わたくしがここにいてもよろしいのですか」

長政「正直分からん。そなたにとって、何が一番よい道なのか」

市「わたくしではなく、殿にとって一番いい道をお選びください」

長政「わしは…わしは、そなたに側にいてもらいたい。このまま、ずっと」

市「打ち明けねばならぬことがございます。わたくしは兄に…」

長政「言うな。他の者に知れたら、そなたの命はない」

兄ではなく夫と共にいる覚悟を決めたお市。そこへ、柴田勝家が浅井家に送り込んでいた織田の間者(浦上晟周)を捕らえたという知らせが。

押さえつけられた間者は「信長様は裏切り者を決して許さぬ。たとえお身内とて同じこと。織田への忠義を忘れて身も心も浅井に絡め取られた哀れな女子よ!」と、お市を睨みつけながら罵りました。

思わずそばに寄りそうになるお市の手をつかんで止める長政。
「あのものはそなたを守ろうとしておるのじゃ。無駄にしてはならん」

「もう後戻りはできぬ」

秘密は明かさず、守るためにお市を罵倒しつつ殺された男。彼も間者の役目を担ったときから、あくまでも忠義を貫き通す覚悟を決めていたのでしょう。印象的な場面でした。

『おんな城主 直虎』で、直虎が(柴崎コウ)「地獄へ堕ちろ」「ようもここまで、我を欺いてくれたな」と、心にもない言葉で罵倒しつつ、兵ではなく自分の手で小野政次(高橋一生)を苦しませないように槍で刺した『嫌われ政次の一生』を思い出しました。

「共にいる」という、新しく困難な局面に立ち向かう覚悟を決めた長政とお市の夫婦。より絆が固く強くなったのを感じます。

お市と長政。二人でともにいることへの覚悟を決めた静かな場面。(NHK大河『豊臣兄弟!公式サイトより

『敦盛』の笛の音は、お市決別の覚悟の知らせ

部屋で笛を吹くお市のもとに、侍女が信長の軍勢が迫ってきたことを知らせに来ます。

「逃げたほうがいい」という侍女に、「先ほどの音色は兄が出陣のときに舞う『敦盛』の音色じゃ」といい、笛を吹き続けるお市。

笛の音が突然風を引き起こし、お市が側に置いたたくさんの秀吉からの手紙が飛ばされて、空中に舞い上がります。

兄がそばまで来ていることを知りつつ、「もう後戻りはできない」というお市の覚悟を託した笛の音色が、まるで届いたかのように信長、勝家、豊臣兄弟が映し出されました。

「豊臣兄弟!」の金ヶ崎の戦い〜姉川合戦は、ずっと根底にお市がテーマになっていました。

▪️「挟み撃ち状態」を兄に知らせたお市
▪️密告を告白しようとしたお市を制する長政
▪️お市を命をがけで守り切った間者
▪️嘘をついてお市を助けようとする豊臣兄弟
▪️お市を助けたい思いで間者を付けていた勝家

そして、「市が選んだことじゃ。であればわしも、もう容赦はせぬ」」という信長。

そんな織田と浅井の間で悩みゆらめくお市の感情が丁寧に描かれていたと思います。

兄や織田と別れる覚悟を伝えるお市の『敦盛』の笛の音(NHK大河『豊臣兄弟!公式サイトより

「男にはわからん」姉ともの言葉は伏線に

場面は変わり、屋敷で姉・とも(宮澤エマ)とその子・万丸(よろずまる/後の豊臣秀次)と遊ぶ小一郎。

無邪気に遊ぶ子どもの姿は、その先の悲劇の前触れで不吉な感じです。

長政の嫡男・万福丸も小谷城でかわいい姿を見せていましたが、「信長に捉えられて秀吉の手で磔の刑に処される」……という、残酷な運命が。(万福丸の悲劇はこちらの記事をぜひお読みください。)

小一郎は姉に、お市を織田に戻す方法を相談したのでしょう。

子が遊ぶ様子を眺めながら「無理よ。浅井様とのことだけじゃない。お市様が織田に戻るということはお子と別れるということでしょう。無理よ。男にはわからんかもしれんけど。

母・ともの的確な指摘。

お市を織田に戻そうと躍起になって案を考える男たちには、「母であるお市が、愛する長政の子どもを置いて自分だけ織田に戻るわけはないだろう」という発想がなかったようでした。

姉妹だろうが妻だろうが、人質になれ・政略結婚しろ・子を産め・やばい状況だから子を捨て戻ってこい……という、実に理不尽な時代です。

このドラマでは「男の武将の数だけその陰には女性がいる」という考えのもと女性も丁寧に描いています。

「戦国女性は、黙って涙を袖で押さえつつ、大人しく従う」だけではなく、「男にはわからん!」と、戦う「母の覚悟」も描いているのではないでしょうか。

※参考:

『豊臣兄弟!』息子3人を失い一族すべて処刑…豊臣秀吉の姉・とも(宮澤エマ) 激動の生涯

予告によると、浅井の忠臣・宮部継潤(ドンペイ)に、「藤吉郎の子を人質に寄越すなら織田につく」といわれ、藤吉郎は万丸を差し出そうとして、ともにブチ切れられるとか。藤吉郎は小一郎にともの説得を頼みます。

「死んでも万丸は手放さん」というともの声に、「わしらはもう百姓ではない。侍なんじゃ」という小一郎の声。

「あんたらが侍になったおかげで生活は楽になったけれども。我が子を差し出せなぞ、そんなこと承知できるかい!」と、ともにはブチ切れて欲しい……。

史実では、万丸ことのちの豊臣秀次は、元亀3年(1572)に宮部城城主・宮部継潤のもとに4歳のころ養子(事実上の人質)に出されています。浅井氏滅亡後は返してもらえると考えられていたものの、その後養子となりしばらく宮部吉継を名乗り、ついで三好廉長の養子となり三好信吉に。

さらに、秀吉が天下人への道を進み始め、側室淀殿の子・鶴松が亡くなると秀吉の養子となり豊臣秀次と名乗り、関白職を譲れますが。その後、地獄に突き落とされてしまいます。

無実ゆえの切腹!?妻子ら30余人が公開処刑、謎に包まれた戦国武将・豊臣秀次の切腹の真相

万丸の生涯を知っていると、無邪気に遊び回る姿が痛々しく感じてしまいますね。

こんな可愛い子どもを人質によこせなどと言われたら。(NHK大河『豊臣兄弟!公式サイトより

小一郎の“武士としての痛み”を共有していく慶

これから、「天下一統」を掲げる信長の戦いはおよそ4000人ともいわれる犠牲者を出した残酷な『比叡山延暦寺の皆殺し』へと進んでいきます。

けれど、そんな魔王も光秀に裏切られて京都本能寺にて自害……「戦いに勝者なし」という運命が待っています。

それに伴い、小一郎の人生も変わっていくのでしょう。

秀長の妻となった(吉岡里帆)は、まだまったく豊臣一家に気を許してはいないようです。

けれど、以前のトークショーで吉岡さんは「慶は武家の娘として育っているので、生死を身近に感じ、小一郎の“武士としての痛み”を共有できる人物だと思います」と語っていました。

非情な侍の世界に足を踏み入れた小一郎は、「もう後戻りはできない」と覚悟を決めつつ苦しみを背負っていくのかもしれません。

そんな、小一郎の心情を一番理解できるのは、侍の非情さを間近で見て育ち「覚悟を決めて嫁いできた」慶なのでしょう。

それでも、吉岡さんは「直さんの残した言葉がこの後の話でも受け継がれていく」ともいっていました。

直は「無駄な殺し合いは無くすことができる。小一郎はとことん話し合って考え抜けば道はあると考える人じゃ」という言葉を残しています。

そんな大切な部分は、無くさないで欲しいなと思いつつ、この先を見守りたいと思います。

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