2027年大河で注目、小栗忠順は“隠れた英雄”か、混乱の元凶か?幕末の貨幣改鋳が招いた光と影
大河ドラマとしては第66作目となる2027年の大河ドラマ「逆賊の幕臣」では、幕末の武士・小栗上野介(忠順)の生涯が描かれることになっており、主人公・小栗忠順役は松坂桃李さんが演じます。
横須賀製鉄所の建設に尽力し、日本の近代化を先取りした人物として知られる小栗ですが、その実像は単なる“先見の明を持つ改革者”だけでは語れません。
幕末の幕府財政が崩壊寸前に追い込まれる中、小栗が手をつけたのは、貨幣そのものの価値を変えるという大胆な政策でした。
それは幕府を延命させ、近代化の資金を生み出す一方で、物価高騰や社会混乱を招く危険な賭けでもありました。
今回は、幕末財政を揺るがした「改鋳」という仕組みから、その実像に迫ります。
改鋳という魔法幕末の江戸幕府は、長年の財政難に加えて開国後の軍艦購入や防衛整備で支出が急増し、いよいよ追い詰められていました。
そこで幕府が頼ったのが、江戸中期から続く貨幣改鋳という手法です。
これは金貨の中身を薄くし、価値はそのままにして差益を得るという、いわば貨幣の魔法でした。元禄八年に荻原重秀が行った改鋳では、なんと五百万両もの収入が生まれたとされます。
荻原は「貨幣の価値は国家が決めるもの」という考えを持っており、素材が劣っていても流通させる大胆な発想を示したわけです。
ところで、そもそもこの手法が成り立ったのは、鎖国体制のもとで金銀銅の流通を幕府が独占していたからです。
もし諸藩が自由に採掘したり、外国との貿易を盛んにしていれば、品位の低い貨幣はすぐ信用を失っていたでしょう。
しかし幕府が流通を握っていたため、改鋳貨幣は市場で受け入れられ、財政の柱となりました。
こうした経緯が、のちに小栗上野介が放つ大胆な一手の土台となっていきます。
二分金の衝撃幕末に入ると、幕府財政はもはや従来の改鋳では立て直せないほど悪化していました。
そこで登場したのが、勘定奉行として財政を担った小栗上野介です。
まず小栗は、万延元年に万延二分金という新しい金貨を鋳造します。この金貨は従来の金貨より金の含有量が大幅に少なく、なんと六〇%しかありませんでした。
減らした分がそのまま幕府の収入になる仕組みです。
さらに驚くべきはその発行量で、万延二分金は五千万両分も鋳造されました。それまでの金貨鋳造量が数百万両規模だったことを考えると、まさに桁違いです。
小栗はこの差益を使い、横須賀製鉄所の建設を計画したとされます。これは日本の近代化に向けた重要な投資で、幕府の将来を見据えた政策でした。
とはいえ、もちろん金の含有量が少ない貨幣が大量に出回れば市場は混乱します。小栗もその危険性を理解していたと考えられますが、財政再建のためにはこの手しか残されていなかったのでしょう。
混乱の代償万延二分金の大量発行は、幕府財政を一時的に救った一方で、社会に深刻な影響を与えました。
金の含有量が減った貨幣が広がると物価は急騰し、米価は万延元年から七年間で十倍に跳ね上がります。庶民の生活は苦しくなり、諸藩や商人からの反発も強まりました。
小栗はこの政策によって恨みを買い、倒幕運動の一因になったとも言われています。
しかし客観的に見れば、小栗の政策は幕府財政を延命させ、日本の近代化に必要な基盤を整えるための苦渋の選択でした。
その後、横須賀製鉄所も日本の造船技術を支える重要な施設となり、小栗の先見性は高く評価されています。
幕末の混乱の中で、小栗上野介は財政再建と近代化の両立を目指し、批判を受けながらも大胆な政策を実行しました。
財政難の中で国家の未来を見据えて行動したという点で、小栗は“隠れたヒーロー”と呼ぶにふさわしい人物だったと言えるでしょう。
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画像:Wikipedia
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