『豊臣兄弟!』小栗旬が演じた“人間・信長”の心に残る感動の名場面8選!新解釈「本能寺の変」が胸を打つ理由
大河ドラマ「豊臣兄弟!」。
レジェンドとなりそうな新しい解釈の『本能寺の変』で、視聴者を魅了した織田信長(小栗旬)の退場に、SNSでもロスを感じている人はたくさんいるようです。
今回の大河は、あくまでも小一郎(仲野太河)が主人公で、兄・秀吉(池松壮亮)との『兄弟』の絆がテーマ。
そのためか、織田信長は従来の暴君・魔王のイメージを全面に打ち出すよりも、弱み・葛藤・孤独など人間味が色濃く描かれていました。
初回から一貫してぶれない人間像で最期まで惹きつけてくれた小栗旬さん演ずる織田信長は、新しい「人間・信長」として心に刻まれ続けるのではないでしょうか。
今回は、評判になった「印象に残る名場面」を史実も入れつつ振り返りたいと思います。
最期、トラウマとなっていた弟の幻影が信長の前に現れた(NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより)
大嫌い!と言わても。「兄を裏切らぬ弟」が嬉しい…第6話『兄弟の絆』。
大沢次郎左衛門(松尾諭)を調略する作戦で、人質を買ってでた秀吉。けれども、信長は次郎左衛門を罠にはめ始末するつもりでした。人質となっている秀吉の命はおかまいなし。
さらに信長は「次郎左衛門を斬れば、お前を侍大将にしてやる」と小一郎に伝えます。
小一郎に「兄を裏切るよう」に詰め寄る信長。(NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより)
そんな信長に向い、どストレートに「あなた様のことが “大嫌い” になり申した!」と言い放った小一郎。
「大沢殿の命は兄の命、わしはどんなことがあろうと兄者を裏切りませぬ!」
殿に向かってなんたる暴言と周囲はいろめき立つものの、信長は小一郎を斬ろうとしませんでした。
この回で、信長は、謀反人だった実の弟・信勝(中沢元紀)を成敗したことで人間不信になっていたことがわかります。
結局、小一郎も次郎左衛門も許した信長。
信長は、唯一心を許せる相手・お市(宮﨑あおい)に「兄を裏切る弟を見てみたかった」と言いつつ、ご機嫌な様子。「兄を裏切らぬ弟は実在している」と嬉しく感じているのがわかりましたね。
このドラマでは、信長のこんな弱点も表現するのか……と感じた回でした。
史実でも、信勝は一部の家中の者に指示されるも、激しい織田家内部の抗争で兄に敗れました。兄弟姉妹合わせ20人以上もいたといわれる信長。信勝はすぐ下の弟と推測され、若い頃は仲良しだったのかとも思われます。
信長は、殺した弟とまだ仲良しだった頃の記憶や斬ったときの苦悶の表情を、ことあるごとに何度も思い出し、そのたびに苦しむのでした。
何度も何度も信長の脳裏に蘇る信勝の亡霊。これもまた『兄弟』の形。(NHK「豊臣兄弟」公式サイトより)
汚れなき者・長政を弟として心から信頼を寄せる…第11話『本圀寺の変』。
「豊臣兄弟!」で帰蝶をあえて登場させないのは、「心を許せる相手は妹のお市だけ」にして、信長の孤独感を際立たせるためだったそうです。
お市は、兄のため男に生まれ「弟」でありたかったと願うほど兄が大好きでした。
織田家のため覚悟して浅井家に嫁いだお市。最初は夫・浅井長政(中島歩)を敵認定していました。
ある日、長政の父・浅井久政(榎木孝明)がお市の手鏡を勝手に捨て、焚き火にくべる事件が発生。長政は素手で手鏡を拾い上げ大火傷を負います。お市は、不器用な愛情を注いでくれる夫に愛を感じるのでした。
そして、第12回『小谷城の再会』。
信長は長女の茶々が生まれたお市を尋ねます。火傷が治らずまだ包帯で覆われた長政の手をみて、信長は長政のお市に対する愛情に感謝しつつ「この世に穢れなきものがいるとしたら、それはそなたじゃ。」といいます。
純粋な長政が、義理とはいえど弟になったことが嬉しかったのでしょう。
「この信長のセリフはキザ過ぎ!」という声もありましたが、実際、信長はそういうところがありました。
夫・秀吉の浮気に悩む寧々に対し「この前会ったときよりも、そなたはもっと綺麗になった」……など書く、繊細でキザなところのある人だったのです。(下の写真参照)
寧々宛の織田信長筆仮名消息(wiki)。後半になると文字が詰まっているのが分かります。
無防備なまでの、長政に寄せる信長の愛情。その先の未来を知っているだけに、裏切られた時に信長がどうなるのか、誰もが不安を覚えたのではないでしょうか。
無防備なまでの素直に自分の気持ちを述べる信長。(NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより)
「弟」と再び相撲ができる喜びに溢れていた…第13話『疑惑の花嫁』。
長政と相撲をとる信長は、「お主、手を抜いたろう!」といいつつ何度も長政を投げ飛ばし心の底から楽しそう。
「手など抜いておりませぬ!」と、倒されても起き上がり向かってくる長政。愚直なまでの誠実さや真摯さを感じ「この男は信頼できる」と思ったのでしょう。
「つい楽しくての。またこうして『弟』と相撲が取れるとは」といいます。
「この戦が終わったらまた相撲を取ろう」。
けれど、浅井家が織田に離反したことでそれは叶わぬ「夢」となってしまいました。
魔王として恐れられた信長の、こんなに嬉しそうな表情は初めて。信頼できる「弟」の存在に焦がれていたからと思うと信長の心情が切なかったですね。
史実でも知られている、信長の相撲好き。単なる勝敗だけではなく体と体がぶつけて競い合うことで、相手の体格・体力・闘いのセンス・気力など全てを推し量ることができたからと言われています。
何度も自分に全力で立ち向かってくる長政の愚直さを愛した信長。NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより
「弟」の裏切りに闇堕ち寸前を秀吉の愛に救われる…第14話『絶対絶命』。愛する長政に裏切られたと知った信長。
「なぜじゃ。なぜじゃ。……なぜじゃ、長政ぁ!」の信長の慟哭が、今だに目と耳に焼きついています。
最初、柴田勝家(山口馬木也)がもたらした「浅井長政謀反!」の知らせに、「それは我らに加勢するため……ふっ、長政め、あれほど動くなと申したのに」と、笑う信長がほんとに切なかった。
心から信じた「弟」の裏切りを受け止められず、「なぜじゃ。」を繰り返し、手負の獣のように荒れ闇堕ちしそうな信長を救ったのは、秀吉でした。
浅井・浅倉同盟軍が襲ってくる前に、一旦逃げようと提案する家臣らに「長政が首この手ではねてくれるわ。」と、宣言する信長。
「気を鎮めて」という明智光秀(要潤)を蹴り倒した挙句、「公方の飼い犬ごときが指図するな」と刀を向けるほど荒れ狂います。
そこで秀吉は、いきなり「殿〜!」と叫び、刀で自分の足を突き刺し「この猿、うっかり傷をおってしまった。これでは動けないので、わしがここに残りまする。殿は京へお戻りくだされ」といいます。
「殿さえご無事なら、我らは何度でも蘇りまする」と笑顔を見せる秀吉に、完全に毒気を抜かれた信長。秀吉の全力の愛が心を癒やします。
秀吉に自分の鎧を渡し「京で宴の支度をして待っておる。」という信長の頬を伝う一筋の涙。信長の涙を初めて見た回でした。
長政がなぜ信長を裏切ったのか理由は明確になっていません。さまざまな説がありますが、太田牛一の『信長公記』では、「信長は、長政謀反の知らせをすぐに信じなかった」と記述しています。それだけ、義理の弟だった長政を非常に信頼していたのは事実のようです。
近年では、長政の離反は単純な裏切りではなく、家臣団の意向・織田勢力の拡大への警戒・地理的な安全保障の問題など複数の要因が重なったものと推測されています。
「公方の差金か!」と光秀を責めまくる信長。(NHK「豊臣兄弟」公式サイトより)
血のつながった妹や姪に責められると弱い…唯一、心を許せるお市には弱い信長の姿も、たびたび描かれていました。
お市に不義理を責められたり、茶々に気を遣って話かけるも「茶々はそんな弱虫ではありませぬ」と、キッと睨みつけられたり。
「あちゃ〜」となる信長は、とても人間味がありました。
史実でのお市は、教養や品格があり、乱世を生き抜く知性を持ち、大名家の人間としての気丈さや胆力があったといわれています。
「市が男なら良将になった」と信長が評価したというのは、江戸時代以降の読物をベースにした創作のようです。
ドラマのように以心伝心の兄妹だったか?は不明ですが、実際、信長は浅井家滅亡後に市や娘たちを速やかに救出し、手厚く保護している点を考えると、大切な存在だったのでしょう。
さまざまなことをずばり指摘するお市には弱い信長。(NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより)
粛清の重さに信長自身が疲弊…第25回『変事の予兆』。
安土城が完成した祝いの相撲大会で行った老臣のリストラ。謀反の疑いが理由でした。
「確たる証があってからでは死罪は免れぬ。今なら追放で済みまする」というお市だけが、信長の心を知っていました。
「役立たずの老臣など無用の極み。天下一統に情けなどいらぬ。血も涙もなき覇道の者、織田信長よ」といいつつも、瞳からは光が消えていた信長。
“情け”を捨てきれず矛盾や葛藤を抱える苦しみが複雑な表情に現れていました。
実際、この時「追放」となった3人の老臣、林秀貞・佐久間信盛・安藤守就は『信長記』ほかの記録では、野心や内通の疑いがあったと記されています。
また信盛に関しては、その働きぶりの不甲斐なさに叱責の言葉を連ねた『19ヶ条の折檻状』を突きつけたということも(『信長記』)。
ドラマでは、粛清の重さに信長自身が疲弊している様子が描かれていました。
粛清か温情か。信長の本心はお市だけが知る。(NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより)
「最後の晩餐」とは知らず「楽しかった」という信長…そして、第26回『信長を笑わせろ』。
「謀反の疑いあり」となった弟・信勝の息子、信澄に蟄居を命じた信長。信長の苦悩を察知した豊臣兄弟は、無理やり長浜城に招いて一家総出でもてなします。
笑ったタイミングで秀吉の「信澄を許してくれ」という申し出に激怒する信長ですが、「飲み比べで勝ったらそうする」といいました。
実際、信長は下戸だったという話があります。宣教師ルイス・フロイスの記録などでは、「信長は酒をあまり飲まなかった」とあります。ドラマでは、秀吉に負けると分かっていて、飲み比べをしたのかも。
これが、豊臣兄弟と最期の晩餐となったのでした。
翌朝、青空を見上げ「空のように切れ目のない世を作りたい」という信長に、「わしが太陽になって上様が作り上げたこの国を照らし続けまする」と答える秀吉。
この言葉は、最期を迎えた信長を救うことになりました。
安土城に戻った信長の「楽しかった」の一言が切なかったですね。
こんなに賑やかな宴会が「最後の晩餐」となる悲しさ。NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより
豊臣兄弟に救われた信長の最期…信長の人生最期となった『本能寺の変』。ずっとトラウマとなっていた弟・信勝の幻影が、切腹する寸前に目の前に現れました。弟に「我らの一生、ろくなもんではござらんでしたな」と言われ、ふっと笑った信長。
その途端、信長の脳裏には、豊臣兄弟たちの声と姿が浮かびました。
「青い空のように境目のない世を作りたい」という信長に、「わしが太陽になって、上様が作り上げたこの国を照らし続けまする」と誓った藤吉郎の姿と声が蘇ります。
「俺には、あとを託せる二人の『兄弟』がいる。ここで死ぬのは仕方ない、あとはお主らにまかせたぞ」、そんな思いで笑いながら「ぜひもなし」と言い、ニヤリと笑って切腹した信長。
本能寺での有名な信長のセリフをここで使うとは。新しい解釈の「本能寺の変」は、信長の姿とともに記憶に残り続けそうです。
最後に…まだまだ思い出のシーンはたくさんあります。冷酷で恐ろしい魔王という従来のイメージだけではなく、弱さや苦悩、迷いや涙などさまざまな表情を見せてくれた小栗・信長。非常に魅力的な信長像として、ずっと心に残り続けそうです。
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