大名家の姫が夫を捨て親に勘当され、それでも起業し大成功!江戸時代を生き抜いた“とら姫”の破天荒な人生
親子の縁を断ち切る勘当(かんどう)と聞くと、たいてい素行不良なドラ息子を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし江戸時代には、やんごとなき姫君が勘当されてしまった事例もあったようです。
今回の主人公は皆川とら(みながわ -)。果たして彼女はどんな女性で、どんな生涯をたどったのでしょうか。
遠山秀友と結婚する皆川とらは生年不詳、常陸府中藩(茨城県石岡市)の第2代藩主・皆川隆庸(たかつね)と正室(石川康通女)の長女として誕生しました。
もし寅年生まれだから“とら”と名づけられた場合、他の兄弟たちとほぼ同年代の寛永3年(1626年)生まれと推測されます。
とら姫には兄の皆川成郷(なりさと)、弟の皆川秀隆(ひでたか)・皆川成之(なりゆき)がいましたが、正室から生まれたのは“とら姫”一人で、他はみな腹違いでした。
※『寛政重脩諸家譜』では兄弟たちの生母が「某氏」とあり、一人の女性が三人を生んだのか、それぞれ生母が異なるのかは不明瞭です。
やがて成長した“とら姫”は美濃苗木藩(岐阜県中津川市)の第2代藩主である遠山秀友(とおやま ひでとも)に嫁ぎました。
秀友は慶長14年(1609年)生まれで、とら姫とは10歳以上の年齢差があったと考えられます。
自分から夫を離縁する
現代の感覚では「茨城県から岐阜県へ嫁ぐのか。生活習慣の違いなど、慣れるのが大変そうだなぁ」などと思っていますね。
しかし当時、大名家の子女たちは徳川家の人質として江戸に住まわされることが一般的でした。
なので実際には、常陸府中藩の江戸屋敷から、美濃苗木藩の江戸屋敷へ引っ越したくらいの感覚だったことでしょう。
とは言え、たとえどれほどご近所であっても、嫁ぎ先に慣れる大変さは今も昔も変わりません。
遠山家でどのように過ごしていたか、詳しく記した史料はないものの、とら姫が大なり小なり苦労したであろうことは察しがつきます。
とら姫はどうしても遠山家に馴染めず、何と自分から秀友を離縁。さっさと実家へ帰ってしまったそうです。
秀友との間に子供がいなかったことも、夫婦不和の一因となったのかもしれません。
両親から勘当される当時の感覚では、妻の方から夫を離縁することは許されませんでした。しかも大名家の結婚は政略ありきでしたから、勝手に離縁されたら両家とも困ってしまいます。
両親も何とか思い直すよう、必死に説得したことでしょう。
しかし“とら姫”は頑として秀友との復縁を認めません。よほど遠山家が合わなかったようです。
あまりに頑固な“とら姫”の態度に、とうとう両親も匙を投げてしまいました。
「ならば勝手にせぇ。本日限りでそなたは勘当じゃ!」
かくして“とら姫”は皆川家を去ることになります。
京都で起業し、大繁盛
しかしいくら勘当したとは言え、大名家の姫君が野垂れ死になどしたら、離縁以上の不名誉です。恐らく皆川家から経済的支援があったものと考えられるでしょう。
とら姫は江戸から京都に移り住み、化粧品の販売事業を手がけたそうです。
元から化粧や美容に興味関心が高かったのでしょうか。好きこそ物の上手なれとはよく言ったもので、とら姫の化粧品事業はたいそう繁盛したと言います。
転んでもタダでは起きない強かさを発揮して、起業家として成功を収めた“とら姫”ですが、その後どうなったのかはよく分かっていません。
誰かと再婚したのか、あるいは独身をまっとうしたのか、今後の究明がまたれます。
とら姫(皆川とら)基本データ
生没:寛永3年(1626年)生?〜没年不詳 両親:皆川隆庸(たかつね)/石川康通女 兄弟:皆川成郷・皆川秀隆・皆川成之 伴侶:遠山秀友 子女:なし 身分:大名家子女→遠山秀友室→商人 出身:常陸府中藩(茨城県石岡市) 死没:不詳(京都か) 終わりに女子 母は康通が女。遠山刑部少輔秀友に嫁し、のち離縁す。
※『寛政重脩諸家譜』巻第八百六十二 藤原氏(秀郷流)皆川
今回は大名家の姫として生まれながら、両親に勘当されるも起業家として成功した“とら姫”について紹介しました。その生涯を振り返ると、かなり豪快な女性だったようです。
抑圧されていた女性が自己実現のために奮闘する、朝ドラのヒロインに打ってつけかもしれませんね。
他にも個性的な姫君のエピソードを発掘して、紹介したいと思います。
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『寛政重脩諸家譜 第5輯』国立国会図書館デジタルコレクション 橋場日月『戦国美麗姫図鑑』PHP研究所、2009年6月日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan



