年間150万トン「もみ殻」は宝の山になるのか 農家を悩ます“厄介者”を資源に変える挑戦 (2/2ページ)
もみ殻の発生量が少なくなる夏季には、地域で増加する放置竹林の竹や、ハウス栽培で生じるトマトの茎や葉などを回収。高速分解処理装置を用いてセルロースを抽出し、樹脂などへの利用を進めているという。また、抽出した素材については、プラスチックの使用量を抑えたカトラリーなどへの応用も試みている。
季節ごとに発生する異なる植物資源を活用することで、年間を通じた設備稼働につなげる狙いがある。一方で、植物によって成分や水分量が異なるため、素材の品質を安定させながらコストを抑えて量産するには、原料ごとの調整が必要となる。
素材製造に加え、受託研究や自治体との取り組みも抽出した粉体セルロースの製造・販売に加え、企業や研究機関からの受託研究、自治体などと連携した地域循環事業にも取り組んでいる。
具体的には、それぞれの地域で発生する未利用資源について、どのような成分を抽出できるのかを検証し、素材化や製品化の可能性を探るケースもあるという。農業残渣の活用は、単に素材を製造すれば成立するものではない。原料を継続的に確保する仕組みに加え、加工コストや物流、さらに完成した素材の利用先まで含めた設計が求められる。
特にバイオマス素材は、石油由来の素材と比較して価格面で不利になるケースもある。環境負荷の低減という側面だけでなく、実際の製造コストや性能面でどこまで既存素材に近づけられるかが、普及を左右することになりそうだ。
残渣をどこまで使い切れるか。循環モデルの次の課題
同社は今後、セルロース抽出後の液体に含まれるシリカ(ケイ酸)を農地へ還元する取り組みや、セルロースナノファイバー、バイオエタノール原料への応用も視野に入れている。農業廃棄物を余すことなく使い切る社会の実現を掲げ、フードテックと地方の資源を結びつける試みを継続する方針だ。
こうした未利用資源の循環事業が一時的な環境施策に終わらず、独立した産業として定着するかどうかは、今後の素材強度の向上や供給体制の安定化、そして市場における価格競争力の確保次第で輪郭が見えてくることになりそうだ。
【取材協力】
トレ食株式会社
代表取締役 沖村 智
https://syokulabo.jp/