【豊臣兄弟!】さよならの予感…蜂須賀正勝(高橋努)が秀吉に捧げた不滅の“友愛”と史実が伝える最期

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【豊臣兄弟!】さよならの予感…蜂須賀正勝(高橋努)が秀吉に捧げた不滅の“友愛”と史実が伝える最期

「その関白が、わしの惚れた男かどうかじゃ」

豊臣兄弟と共に長い道のりを歩んできた蜂須賀正勝(高橋努)ならではの、いや、正勝にしかいえない秀吉(池松壮亮)への問いが、胸に刺さりました。

NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」第36回『姫若子と鬼若子』。

秀吉の家臣であり昔からの友達でもある正勝が、歯に衣着せぬ言葉で「お前は変わってしまったのではないか?」と語りかけるシーンは名場面でしたね。

ワイルドで生命感に溢れ、声は大きいし動きも粗野だけれど、実は繊細な気遣いな人で、秀吉の怒りや悲しみを察知し受け止めてきた正勝。

その誠意ある言葉は嫌味なくすっと秀吉に届き、冷静さを戻す役目を果たしていました。

いよいよ、“さよなら”の予感がする蜂須賀正勝。

「豊臣兄弟!」での秀吉と正勝の絆の積み重ねがあってこその今回。史実も含めて振り返ってみました。

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「関白!!」と、秀吉が関白を狙っていることに仰天する蜂須賀正勝(NHK「豊臣兄弟!」公式サイトより)

秀長の思いをすぐに理解した正勝

天正9年(1581)、信長(小栗旬)が京都で行った華やかな軍事パレード『御馬揃え』。

見物客で賑わう京の町で、羽柴小一郎(仲野太賀)は長宗我部元親(磯部寛之)と出会いました。

艶やかな女物の着物姿の元親に驚き「なぜ」と質問した小一郎に、「このような姿でおるとなぜか、穏やかな心持ちになれるがじゃ。」と答えていましたね。

戦さ、戦さ、戦さ、で人を殺すことを何とも思わなくなる己を戒め、本来の自分を見失わないために“美しいものを纏う”という元親。

今回、小一郎は、長宗我部を倒す『四国攻め』の総大将でありながらも、「元親は民や家臣のことを考える心優しき人」と、豊臣に降伏し仲間になって欲しいと願います。

阿波一宮城を落とし、元親の家臣・谷忠澄(堀部圭亮)に元親が降伏するよう仲立ちを頼む一方、「一気に総攻めへ打って出るべし!」と盛り上がる秀吉・羽柴軍の説得を考えました。

「しかし、これ以上元親の攻略に時間をかけては上様が…」と甥の三好信吉(のちの豊臣秀次/山田涼介)が反対する中、「よ〜しわかった!」と秀吉を説得する役目を買ってでたのが正勝でした。

「元親を死なせたくない」という小一郎の胸の内をすぐに察したこともあるでしょう。

さらに、「今のいけいけドンドンになっている秀吉を説得できるのは自分しかいない」という思いと「今の秀吉は昔と変わってしまったのではないか?」ということを自分で確認したかったのではないでしょうか。

ここ数回、正勝は、出世街道を爆進し忙しくなっていく秀吉が我々から離れていく寂しさと危うさを感じでいるようでした。

全ての民の上に立つものに…変わりゆく秀吉

一方、秀吉は、京・妙顕寺城を訪れ、近衛家の前当主・近衛龍山(前久/前野朋哉)と面会。狙いは関白の座でした。

「帝の代わりとなって、全ての民の上に立つものになりたい」という秀吉。

一介の百姓だった青年が、国の最高権力者へとリーチをかけた瞬間でした。

そんな秀吉の前に現れた正勝は、秀吉が四国攻めに出張らず「弟の秀長に、このまま戦さを任せて欲しい」と頼みます。

「関白となる自分の戦さを日の本中が見ておる。手柄を上げなければならない!」と急く秀吉に、正勝は「懐かしいのおぉ」と、話を変えました。

「初めて出会った頃、おぬしら兄弟は離れていてもお互いのことをよぉ分かっていた。そこに惚れて力を貸すと決めたのじゃ」と一人語りをしつつ秀吉に近づきます。

穏やかな語り口調ながらも、誰にも話を遮らせんぞという静かな迫力があり、居並ぶ家臣たちは居住まいを正し圧倒されている様子。

「今はどうじゃ。あの頃と同じように小一郎のことをわかっておるか」と問うと、秀吉の目が左右に泳ぎます。

こんなふうに痛い部分を突けるのは正勝ならでは。

「関白になる……すごいのう。大したもんじゃ。」

「じゃがのう。わしにとってはもっと大事なことがある。その関白が、わしの惚れた男がどうかじゃ」

秀吉の目に浮かぶ涙。家臣の中には涙をこぼす人もいました。

出世することよりも、出会った頃の好きになった秀吉のままでいるほうが大切……という、深い愛情を感じる言葉。

忖度も遠慮もない直球の「お前はわしが惚れた男のままか?」と問いに、秀吉もさすがに心動かされました。

立ったままではなく、真正面に座り「三日待つ」と答えました。

「上様、ありがとうございます」と頭を下げた正勝の目からは一筋の涙が。

「忠義心」というより「友愛」が強い。

こんな正勝がもっとずっと秀吉の側にいたら。秀吉の暴走を支えてくれたのではないでしょうか。

蜂須賀正勝と豊臣兄弟の絆が結ばれた瞬間。(NHK「豊臣兄弟!」公式「X」より)

正勝の秀吉への思いがわかる名場面

正勝と秀吉の深い絆を感じる場面はさまざまありましたが、個人的に特に心震えた場面は二つでした。

第22回『播磨大誤算』。

秀吉は、尼子勝久(渡邉蒼)と山中幸盛(廣瀬友祐)が死守する上月城の救援を信長に依頼するも、切り捨てられてしまいます。

かつて自分を頼ってきた二人を見捨てるわけにはいかない、けれどもこのままでは秀吉陣営も全滅の危険も。

高倉山の陣で尼子軍が籠る上月城を見守りながら、一人粥を炊く秀吉の後ろに正勝は無言で控えていました。

「わしは……どうしたええんじゃ。」と声を震わせて泣く秀吉を慰めようとしたのか、正勝はそっと立ちあがり声をかけようとしますが口を真一文字に結び無念の表情を浮かべつつ何も言えませんでした。

涙を堪えていたのだと思います。

「助けてくれる」と自分を信じている相手を見捨てなければならない、そんな断腸の思いに苦しむ相手にかける言葉はありません。

突然降り出した雨に「熱い粥が冷めるではないか!」と天に向かって怒鳴る秀吉には胸が痛くなりました。

そこに竹中反兵衛が倒れたという報が。

「殿……潮時でございます。殿……」

慟哭する秀吉を見守っていた正勝だからこその、冷酷さや見捨てる感はないながらも決断を促す言葉。

土砂降りの中ひざまづいて、上月城に向かい土下座する秀吉。

「…引き上げじゃ!」

血を吐く思いで叫んだ秀吉の胸中は正勝だけが知り、同じ痛みを感じていたことでしょう。

そして、第28話『急げ!秀吉』。

備中高松城にて「信長討たれる」の小一郎からの手紙を受け取った秀吉は、あまりの衝撃に信じられず使者の前野長康(渋谷 謙人)にも黒田官兵衛(倉悠貴)にも「こんなことは信じぬ!」と激怒して当たり散らし、手紙を破り捨てます。

「この手紙が小一郎殿の筆跡であることは殿もよくわかっているはず」と、痛ましい表情を浮かべて静かに秀吉をなだめる正勝。

この受け入れ難い辛い現実を伝えたのが、もし官兵衛なら、クールに「情報のみ」が伝わったのかも。

正勝の言葉には、秀吉へのいたわりや思いやりが込められていました。

ある時は笑えて、またある時は涙を誘う。そして、ある時は「変わりゆく秀吉を案ずる」本音をこぼす。

そんな秀吉と正勝の関係を表現する数々の伏線があっての、今回の「わしの惚れた男かどうかじゃ」の名場面につながったのだと思います。

自分を信じてくれた尼子軍を救えない絶望で天に吠える秀吉と見守る正勝。(NHK「豊臣兄弟!」公式「X」より)

「長宗我部元親との降伏交渉」で重要な役割を

実際、天正13年(1585)の『四国征伐』の翌年、正勝は病にふせりがちになり京都で養生します。

一旦は回復して大阪に戻るも、5月22日、楼岸の邸宅で死去しました。

今回、ドラマで取り上げられた「長宗我部元親との降伏交渉」ですが、史実でも正勝は重要な役割を果たしたと伝わります。

秀長の指揮下で実質的な交渉役を担ったり、秀吉と元親のパイプ役を務め、元親の赦免を取り付けたり。その働きぶりに、元親側から謝意の書状が送られたそうです。

四国出兵の後、長宗我部元親から蜂須賀正勝に送られた書状。文中において元親は、秀吉の赦免が得られたことについて、正勝の取りなしによるものと丁重な謝辞を述べる。……中略……

そして元親は、今後においてより一層の「指南」を、正勝に望んでいるのである。四国に覇を唱えた大名が平身低頭して懇願するほどに、「秀吉の片腕」としての正勝の影響力は絶大なものがあったのだろう。(徳島市HP(長宗我部元親書状より)

正勝は、これらの功績から秀吉から阿波一国を与えられようとしたますが、「高齢で秀吉の側を離れたくない」と辞退し息子・家政に譲っています。

史実でも、秀吉は、正勝を「軍師」的な存在として黒田官兵衛と並び称されるほどの実務能力・交渉力を評価していたそうで、秀吉は生涯を通じて側近として重用していたようです。

『蜂須賀家記』や後世の研究などの細部では諸説がありますが、蜂須賀正勝の目付としての出征、木津城などでの説得開城、阿波拝領の辞退と家政への継承は、史実として比較的一致して伝えられているようです。

ドラマではワイルド感の強い、優しい武闘派にみえた正勝ですが、実際は武辺一辺倒の人物ではなく、調略・外交・実務に長けた「知将」とし評価されています。

秀吉の天下取りに、正勝の存在は不可欠だったのでしょう。

太平記英勇伝七十八:八菅與六正勝(落合芳幾作)(public domain)

最後に

ずっと活躍していた登場人物が一人減り二人減りと、寂しさがつのる「豊臣兄弟!」。

次回の予告をみると、正勝が持った器をポロリと取り落とす場面が。四国征伐後なので、いよいよ表舞台から去っていくのでしょうか。

主君に対等な立場でものをいえた「最後の豊臣の良心」。

今作の高橋努さんが演じる蜂須賀正勝は、本当によき人間・よき漢でした。

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参考:

『蜂須賀小六正勝』星 亮一

徳島市HP

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