【未解決事件の闇10】女性編集者失踪・ミャンマー逃亡説の検証で難民キャンプを訪問 (2/2ページ)
バンコクから長距離夜行バスに乗り、タイ北西部のメーソットへと向かった。ここはすぐ隣がミャンマー(ビルマ)の国境となっている。
15年もの歳月が流れていたからか、すでに難民キャンプは統廃合されていた。そこでモケキャンプにいる人間が多く住む、さらに山奥のキャンプを訪ね、手がかりを探すことにした。
そこは町から隔絶された山の中の急斜面に張り付くように、立ち並んでいた。タイ国軍か警察による検問を超えると、キャンプの入り口に辿り着いた。そこには見張り小屋があり、中からアーミージャンパーを着た浅黒い男が何人か出て来た。
ラコエと辻出さんが写っている15年前のモケキャンプでの写真を見せる。すると、そのうちの一人が言った。
「たぶんここにはいないな。別のキャンプかアメリカに移住したんじゃないかな」
男の話を聞き、なんと突飛なとも思った。しかしすぐに思い直した。事前に読んできた支援団体の資料によると、UNHCRの手引きで7万人の難民がアメリカに移住したと書いてあったことを思い出したからだ。
キャンプの中から呼ばれて出てきた、仙人のような白いひげの長老にも写真を見せたが、心当たりはないという。
写真はキャンプの中でまわして何かわかったら、連絡してくれることになった。僕は英語で自分の住所を書き、ラコエという男の説明と彼を探している旨を書いて、キャンプの人間に託した。
その後、返事を打診する手紙をキャンプ宛てで送料と封筒をつけて送ってみたが、返事が来る様子はない。
いったいラコエはどこへ行ったのだろうか。市民権をとったと言われるバンコクに住んでいるのだろうか。そしてメッセージの謎を解く意味を彼は知っているのだろうか。辻出さんがラコエに恋心があり、こっそりタイに渡り、彼と逃避行をしたということはないのだろうか――。
Written&Photo by 西牟田靖