「女性」を描き続けてきた30年間――唯川恵さんインタビュー(1) (2/2ページ)

新刊JP



唯川:最初の短編を書き始めたときから全編通したタイトルを考えていたのですが、なかなか決まらなかったんです。それで、「ろくろ首」をモチーフにした『悪魔の甘き唇』という短編の一行目に「男が現れたのは逢魔が時である」という言葉が出てきて、「あ、『逢魔』っていいな」と思ったんです。物語すべてに共通するのは、「魔と出会う」ことですし。

―― 「逢魔」は夜になる瞬間という意味ですね。

唯川:時間的な意味合いももちろんあるし、人間の世界ではない、なにか異形の世界に足を踏み入れるような意味だったり、もしくは人生の日の当たらない部分をのぞきみるような、そんな感じもします。

―― 装丁は桃色を基調に魅力的な装画が載っています。

唯川:これは「怪猫伝」をモチーフにした『漆黒の闇は報いる』を書いたときに、画家の新井由木子さんの描いていただいた挿絵なんです。とっても素敵だったので、そのときから単行本にするときには、ぜひ装丁にこの絵を使いたいとお願いしていました。

―― 『逢魔』は唯川さんにとって初めての時代小説となるそうですが、どうして時代小説を選んだのでしょうか。

唯川:一つ大きな理由としてあるのが、現代の恋愛小説を書くことに息苦しさを感じていたところがあります。現代の女性を描くとしても、その人を取り巻く環境や状況がとても複雑になっていて、それを無視することができません。例えば若い女性を主役に据えた場合、例えば就職難であったり、貧困であったりというのも一つ大きな要素として出てきます。どうしても恋愛に主軸を置きにくくなるというか、窮屈になってしまうんです。思いきり男女の恋愛を書くというのが難しい。また、若手の作家たちの小説を読んでいると、かなわないなと思うところもある。そんなことを編集者さんたちと話している中で、「時代物を書いてみたらいかがですか?」と言われて。

―― 新しいジャンルに挑戦することに、気負いはないのですか?

唯川:それはなかったですね。むしろ楽しかったですよ。時代物を書くときは、たくさんのことを調べるんですね。その時代ではどういうものを食べていて、時間感覚はどうで、どういうお店があったのか。そういった調べる経験はあまりなくて、初めてすることが多かったのですが、調べて理解して書くって難しいことではないんだなと思いました。

第2回「恋愛はそもそも理不尽で傷つけあうもの」につづく
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