第87回アカデミー賞、受賞者たちのスピーチ
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ジワジワくる
2月22日(現地時間)、第87回アカデミー賞の授賞式が盛大に行われました。受賞式の華やかさ、エンターテイニングの様子はいろいろなサイトで紹介されていると思うのでそちらを見て頂くことにして、ここでは受賞者によるいくつかのスピーチにスポットを当ててみることにします。

受賞者の誰もがユーモアをもって挨拶し、一緒に作品を作り上げた仲間や自身の家族に感謝の意を表しますが、最近の傾向ではノミネート作、受賞作は事実に基づいたもの、現代の実社会における問題提起をした作品が多いため、当然、その内容に触れることになります。
『Boyhood/6さいのボクがおとなになるまで』で最優秀助演女優賞に輝いたパトロシア・アークウェット
母親役を演じたパトロシア・アークウェットは最優秀助演女優賞を受賞しました。この映画は6歳の少年の成長と、少年の家族を12年に渡って描いた作品です。監督のリチャード・リンクレイターはハリウッドからはかけ離れた手法で、少年の実際の成長に合わせて12年間に渡って撮影し作品を完成させました。アークウェットは受賞スピーチの中で「命を生み出してきた女性たち、全ての納税者、この国の市民たち、私たちは全ての人々の平等のために戦ってきました。合衆国の女性は賃金の平等、平等の権利を得る時なのです。」と訴え、スタンディング・オベーションで受け入れられました。女性の社会進出が当たり前のアメリカでさえ、このような問題があるのです。
主要賞を独占した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
出典: YouTube
Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)/バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)は最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀撮影監督賞、最優秀オリジナル脚本賞と製作の主要部門を独占しました。そして、スタッフはアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ以下、多くがメキシコ人です。イニャリトゥは、「この受賞を我が母国に住むメキシコ人に捧げます。私たちにとって価値のある政府が創られることを祈ります。そして、この国に住む若い世代の移民たちが、先代が造り上げたこの素晴らしい移民国家において同様の尊厳、尊敬を以って受け入れられることを祈っています。」とメッセージを送りました。
『イミテーション・ゲーム、エニグマと天才数学者の秘密』で最優秀脚色賞を受賞したグラハム・ムーア
出典: YouTube
脚本家グラハム・ムーアは『The Imitation Game/イミテーション・ゲーム - エニグマと天才数学者の秘密』で最優秀脚色賞を受賞しました。ムーアは、いかに主人公のアラン・チューリング (天才数学者にして暗号解読の専門家、論理コンピュータの父。ゲイという秘密も持っていました。 当時、同性愛者はイギリスにおいても犯罪でした。)に共鳴したかを自身の過去を交えて次のように話しました。
『アラン・チューリングはこのようなステージに立って、こんなに戸惑いを感じるような魅力的な方々に接することはありませんでした。今、私はそうしています。それはとても不公平なことです。この場で私は申し上げたい。私は16歳の時に自殺を図りました。なぜなら、自分は変わっている、何か違う、どこにも属していない外れた存在だと感じていたからです。 そして今、私はここに立っています。自分は変わっている、何かが違う、どこにも溶け込めない、そう感じている子たちのために私はここにいます。そう、次はあなたの番、あなたがこのステージに立つ時、次の人にこのメッセージを伝えて下さい。変わり者でいいのです。他の人たちと違っていいのです。(あなたはユニークな存在なのです。)』
『Selma』はジョン・レジェンドとコモンの『Glory』で最優秀主題歌賞を受賞
出典: Washington Post (2015/02/22)
初めてマーティン・ルーサー・キングを主人公に映画化されたSelmaはGloryが最優秀主題歌賞を受賞しました。パフォーマンスを行ったジョン・レジェンドとコモンは受賞スピーチで現代のアメリカにあってももいまだに続いている人種間の危機、差別問題について訴えました。コモンは映画の中で描かれているマーティン・ルーサー・キングが市民権を訴えて行進した歴史的な場所、エドマンド・ペタス・ブリッジを訪れたことに触れ、「この橋の意義は人種、性別、宗教、性的指向を超越していることにある。この橋のスピリットはシカゴのサウスサイドでより良い生活を夢見る子供たち、フランスで表現の自由のために立ち上がっている人々、香港で民主主義のために戦っている人々をつないでいる。この橋は希望の上に築かれ、慈悲と共に溶接され、すべての人間への愛によって架けられている。」と鼓舞しました。
難病患者を扱った『博士と彼女のセオリー』と『アリスのままで』は最優秀主演俳優賞と最優秀主演女優賞
出典: YouTube.com
『The Theory of Everything/博士と彼女のセオリー』で難病、筋萎縮性側索硬化症 (ALS)を抱えて生きている有名な理論物理学者スティーヴン・ホーキングを演じたエディ・レッドメイン、『Still Alice/アリスのままで』でアルツハイマーにかかり、記憶を失っていく主人公を演じたジュリアン・ムーアは、それぞれ最優秀主演俳優賞、最優秀主演女優賞に輝き、それらの病気を患っている人々やその家族に受賞を捧げました。
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最優秀ドキュメンタリー賞にはエドワード・スノーデンを扱った『Citizenhour』
出典: YouTube
最優秀ドキュメンタリーはエドワード・スノーデンを扱ったCitizenfourが選ばれました。監督のローラ・ポイトラスは受賞スピーチで「エドワード・スノーデンが明らかにした秘密情報暴露は我々のプライヴァシーへの脅威を露呈しただけではなく、民主主義そのものに関わることなのです。我々に影響を及ぼす最も重要な決定が秘密裏に行われるなら、我々は権力のチェック機能を失うことになるのです。」と警告しました。

出典: article.wn.com
このように、受賞者たちは壇上で自身の政治的スタンスを明らかにし、メッセージを発信するのです。日本ではエンターテイメント、ショービジネスに関わる影響力のある人々が公の場でメッセージを伝えることがはばかられるという状況のようで、残念な限りです。
出典: YouTube CNN
そうそう、『Whiplash/セッション』で音楽大学の鬼教授を演じて最優秀助演俳優賞を獲得したJ. K. シモンズのメッセージもなかなかユニークでした。曰く、「両親に電話しよう。テキスト・メッセージやメールはだめだぞ。電話して愛していることを伝え、ありがとうと言うんだ。そして、君たちの両親がどれだけ子供達と話したかったかを聞くんだ。」

因みに僕自身が特に好きな作品は、バードマン〜、ボーイフッド、ザ・グランド・ブダペスト・ホテルです。アメリカではノミネート作はかなりロングランされていますし、既に公開が終わった作品も再映されるので引き続きチェックしたいと思います。
