あの伝説のレスラーに偶然出会いすぎる話

私事ですが、最近一方的に「キラーカーン」をよく見ます。
先週、3月11日放送の「水曜日のダウンタウン」(TBS系)の企画「オファーがないだけで人知れず眠っている歌うまタレント存在する説」でキラーカーンをテレビで見た翌日に、箱根でカーンを見た。まさか、そんな場所で。
そして今週飲み会の場所に行ったらカーンさんのお店だった。
考えてみれば、私の人生は「キラーカーンを偶然見かける人生」だ。
忘れもしない高校生の冬。私は地元の「戸倉ショッピングセンター」に「週刊ゴング」を買いに行くために雪道を歩いていた。
ふと向こう側の歩道に目をやってギョッとした。キラーカーンが歩いているのだ。
え?
歩みも思考も止まった。どういうことかわからなかった。ここは長野県の戸倉上山田という町だ(現・千曲市)。温泉街としてそこそこ有名だが普通の町。
そんな田舎にキラーカーンが歩いている。間違えようのない風貌とデカさ。そしてさらに驚くのは買い物袋をさげている。明らかに「住人」の気配。
結局誰も信じてくれなかった。キラーカーンを見ただけならともかく、どうやらこの町に住んでいるらしい、という私の説を。
しかし数年前、プロレス専門誌を読んだらそこで真実が語られていた。
聞き手が「引退後、中井にスナックを出しましたね?」と問うと、カーンさんは
《いや、その前にちょっとブラブラしていたんですよ。長野の上山田温泉にいる自分の知り合いが、大きいスナックをやっていて、そこから声が掛かったんです。“週末だけでいいから手伝ってくれ”って言われてね。》(「Gスピリッツ vol.5」)
週末ヒロインならぬ、週末カーンだったのだ。
《あの頃はバブルだったから、上山田温泉も観光客が多かったわけですよ。で、旅館でどんちゃん騒ぎした後、芸者さんたちが二次会で歌いに行こうとスナックにお客を連れてくるんです。“プロレスのキラーカーンがやっている店があるから、みんな行きましょ。本人もいるから”って言ってね。でも客は何も知らないから、“ふざけたこと言うなよ。何でキラーカーンがこんな上山田にいるんだよ。まだアメリカにいるよ”とか言うわけです。》
そりゃそうだ。観光客が信じるわけがない。
で、芸者さんはそのギャップを利用して客にある提案を持ちかけるのだという。
《それで芸者さんは“じゃあ、もしキラーカーンさんがいなければ、私が全部おごるわよ”と言うわけですよ。そうすると客も“じゃあ行こうか”ってなるでしょ。芸者さんもお客を連れてくれば、花代って1時間でいくら取れるし、しかも俺が店で“いらっしゃいませ”ってやれば、みんなウワーって驚くわけですよ》
ウワーどころじゃない。プロレスファンである高校生の私だって驚いたのだから。
そんな思い出があったのだが、最近また一方的によく見かける不思議。
私は「キラーカーンに会うか会わないかの人生なら、会う人生」らしい。
プチ鹿島PROFILE
1970年5月23日生まれ。お笑い芸人。オフィス北野所属。時事ネタを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。ラジオ番組「東京ポッド許可局」(TBSラジオ)、「荒川強啓のデイキャッチ」(TBSラジオ)、「キックス」(YBS山梨放送)ほか、TVや映画など多方面で活躍中。

「教養としてのプロレス」(プチ鹿島/双葉社)
2014年8月7日発売 新書判304ページ
今もっとも注目すべき文系芸人・プチ鹿島氏による初の新書が双葉社より発売! 「どの週刊誌よりも売れていた」という90年代黄金期の週刊プロレスや、伝説の編集者・井上義啓氏の週刊ファイトなどの“活字プロレス”を存分に浴びた著者による、“プロレス脳”を開花させるための超実践的思想書。 「半信半疑力を鍛える」「グレーゾーンを許容する」「差別に自覚的になる」等々、著者が30年以上に及ぶプロレス観戦から学びとった人生を歩むための“教養”を、余すところなく披瀝。すべての自己啓発本やビジネス書は、本書を前に、マットに沈むこと必死!
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