安倍晋三の「A」はアドルフ・ヒトラーの「A」芥川賞作家の野心作 (2/2ページ)
日本の国土でありながらアングロサクソン系の人種に支配され、英語が話されている。もともとの日本人は「旧日本人」と呼ばれ、スラム街めいた「居住区」に追いやられて暮らしている一方で、アングロサクソンではない「旧日本人」の「A」が対外的な傀儡のように首相を務めている。この設定はフィクションとはいえ、社会への強い問題意識を感じます。
田中:タイトルがタイトルですからね。当然問題意識はあるのですが、それは社会に何かを問うということではなくて、「私には今の日本、あるいは戦後の日本全体がこう見える」というものを極端な形で提示したものです。だから、「社会と切り結ぶ」というよりは寓話に近い。
そういう意味では、この小説を読んでくれた方の目に今の日本がどう映るのかなという興味はありますね。
――社会に対する積極的なメッセージはないにしても、このような問題意識をうかがわせる作品を書かれたのは初めてではないですか?
田中:そうかもしれません。ただ、僕は今の首相と同じで下関が地元ですから、子どもの頃から、たとえば今の首相のお父さん(故・安倍晋太郎氏)も首相候補と言われた政治家でしたから、政治的な匂いは感じていました。
そういう経験を小説の形で出すとどうなるのかと考えた時、小説を政治と対峙させて何かを訴えかけるというのではないにしても、政治を小説の側に引きずり込んで一つの作品にするというのは、案外現代の他の作家はやっていないんじゃないかと思ったんです。