不動産アドバイザーに聞く。賃貸部屋の壁に穴をあけてもいい?

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同僚が賃貸の部屋を退去するとき、「画びょうの穴はそのままで、絵を飾るためにくぎであけた穴は修復代を請求された」と言います。部屋にできた傷などについて、住人がどこまで負担するべきなのか、トラブルになることが多いと聞きます。

そこで、「快適で安全な一人暮らし・女性の暮らし」をモットーに活動する不動産アドバイザーの穂積啓子さんに、その判断基準などの詳しい話を尋ねました。
不動産アドバイザーに聞く。賃貸部屋の壁に穴をあけてもいい?
■自然に発生する汚れや傷は、住人が弁償する必要なし

例えば、同僚が言う「壁に画びょうをさした穴」、「絵を飾るためにくぎであけた穴」の修繕費は、退去時に住人(借り主)が負担するべきなのでしょうか。穂積さんはこう説明します。

「壁紙に画びょうをさすことは、日常生活での通常の使用であり、自然な行為と考えられます。

また、絵をかけるときは、使用するフックによって壁穴の大きさが違ってくるでしょう。ごく小さな穴で用が足りるタイプなら、通常の使用と言えます。

日常生活で自然に発生する汚れや傷を、『自然損耗(そんもう。損傷のこと)』と呼びます。画びょうや絵画用フックの使用はこれにあたり、借り主は退去時に元通りに修繕する、あるいは元に戻すための費用を払う必要はありません。

誰しも、普通に暮らしていても発生する傷だからです」

■故意や過失、自然な使用を超える場合は弁償の必要あり

では、「通常の使用を超える範囲」の場合は、住人はどういう弁償を求められるのでしょうか。

「テレビや音響製品、棚、大きな額の絵など、重い物を壁にかけるためにくぎやビスであけた穴は、壁の下地板の張替えが必要な場合などがあります。そうなると、『自然な使用範囲を超えている』とみなされます。

また、住人が故意や過失で設備を壊した、日ごろの掃除を怠ったためにひどい汚れや色落ちなどが発生した場合も同様です。

住人が修繕にかかる費用を負担するか、修繕して入居時の状態に戻す必要があります。これを、『借り主による原状回復の義務』と呼びます」(穂積さん)

それらについて、住人は退去時に、家主側から請求されるまで気付いていない、なぜ弁償する必要があるのか理解していないことがあると思います。

「入居時、正式な契約の前に仲介業者の宅地建物取引士が住人に書類を見せながら、口頭で『重要事項説明』を行います。原状回復についての項目が必ずありますので、よく話を聞いて不明点は質問し、納得してからサイン、捺印をしてください。

また、入居中に設備の使用方法について迷った場合は、管理会社や家主に遠慮なく質問し、日時や内容、回答した人の氏名などを記録しましょう。のちのトラブルを避けることにつながります」(穂積さん)
■結露を放置して壁紙にシミやカビが広がった場合は?

ではここで、「日常的な使用の範囲」と、「日常使用を超える場合」の違いについて、事例をもとに穂積さんに解説してもらいましょう。

<ケース1>
ベッドを同じ場所に置いていたので、床がへこんだ

穂積さん「日常生活で生じる家具の設置跡やへこみは、元に戻す必要はありません。ただし、引っ越し中に付けた傷、飲みこぼしを放置して発生したシミやカビなどは不注意によるものとみなされ、住人が原状回復する必要があります」

<ケース2>
冷蔵庫の背面の壁紙が電気ヤケで黒ずんだ

穂積さん「ケース1と同じく、日常生活上で生じる汚れや変色は、住人が修繕費を払う必要はありません。壁に貼ったポスターによる壁紙の変色、日照りによる壁紙や畳の変色、フローリングの色落ちも同様です。

また、貼ってはがせるデコラティブシールの使用は問題ありませんが、退去時にはがして元の壁紙に戻す必要があります。このとき、壁紙を破る、汚すなどしないようにしましょう」

<ケース3>
結露を放置したら、壁紙にシミができた

穂積さん「日常の掃除を怠ったために、水回りの拡大したカビやシミ、使用後の手入れが悪くてこびり付いた台所のススや油、エアコンからの水漏れを放置して発生した壁の腐食などは、住人の責任とみなされます。劣化分の修繕費を住人が負担することになります」

■国土交通省が策定したガイドラインを参考にする

住人側が、「理由がよくわからない修繕費を請求された」と思った場合、どうすればよいのでしょうか。

「原状回復に関するトラブルは非常に多いのが現状です」と言う穂積さんは、こうアドバイスを続けます。

「国土交通省が作った、原状回復に関するトラブルについてのガイドラインを参考にしてください。同省がウエブサイトなどで発表しています。東京都や大阪府、埼玉県と千葉県と神奈川県の三県などはこれに準じる形で、自治体としてのガイドラインを設定しています」(下記参照)

さらに、住人が修繕費用を負担する場合でも、
「建物の築年数と耐用年数に応じて、負担する割合は変動します。もし、『金額に納得がいかない』、『理由が不明の原状回復費用を請求された』ときは、請求元の貸し主側(管理会社か家主)に内訳を明示してもらい、内容を確認してください。

原状回復に関する相談窓口を設けている自治体もあるので、もしものときには、居住する自治体の窓口に問い合わせてみましょう」(穂積さん)

退去時の部屋の損傷の修繕代は、「住人が自然に使用していたうえでの損傷かどうかで判断する」ということです。理不尽な請求には泣き寝入りすることなく内容をチェックし、同時に、日ごろの掃除も怠らないようにしておきたいものです。

参考:
国土交通省『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html

東京都『賃貸住宅トラブル防止ガイドライン(改訂版)』
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-4-jyuutaku.htm

埼玉県・千葉県・神奈川県『建物賃貸借の重要事項説明等について』
https://www.pref.saitama.lg.jp/a1106/takkensoudan-main/documents/467832.pdf

大阪府『賃貸住宅の原状回復トラブルを防止するために』
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/19432/00000000/osakaguideline.pdf

(藤井空/ユンブル)

取材協力・監修 穂積啓子氏。「安全で快適な一人暮らし」、「女性の安全な暮らし」をテーマとして活動する不動産アドバイザー。宅地建物取引士。コミックエッセイ『不動産屋は見た! 〜部屋探しのマル秘テク、教えます』(原作・文:朝日奈ゆか、漫画:東條さち子 東京書籍)の主人公のモデルとなった。テレビ、雑誌などメディアでも活躍中。

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