中身が腐ってたら教えてくれる?3Dプリンターでつくる「スマートキャップ」
3Dプリンターが“一家に1台”という時代は来ないと思う。紙のプリンターに対して、そこまでの需要があるとは思えないからだ。写真をプリントしてくれるように3Dプリントしてくれる店舗があったり、インターネットでオーダーして宅配便で届けてくれるサービスがあれば十分だろう。
とはいえ、3Dプリンターは、以前なら容易にはできなかったものを簡単に作ることを可能にした。今回紹介するのは、3Dプリンターで本体だけでなく電気回路も作る技術だ。そして、その技術を使って牛乳の劣化を検知する“スマートキャップ”を作ったという。
■ 3Dプリンターで電気部品を作る
発表しているのはカリフォルニア大学バークレー校のウェブサイトだ。バークレー校の技術者が、台湾の国立交通大学の協力研究者とともに、3Dプリンティングの新技術を開拓したという。その新技術とは、レジスターやインダクター、キャパシター、各種センサーといった電気的部品の製造も含むものだ。

この10年間、義肢や医療機器、玩具など、さまざまなモノを3Dプリンターで作る技術は発達したが、細かい電子部品を作ることはできていなかった。
ポリマー類は柔軟性があり、さまざまな形を成型するのに便利なので、3Dプリンティングにおいて有用な素材だが、電気をあまり通さないので、電子デバイス用には向かない。
その問題を乗り越えるために、研究チームはポリマーとワックスを使って成型することにした。そして後からワックスを取り除くと、チューブ状の空洞などができる。そこに金属の液体を流し込んで固めるのだ。なお実験では銀を使用した。

その金属の形状やデザインによって、電気部品としての機能が変わってくる。たとえば抵抗として作用する細いワイヤーとか、キャパシターを作るための平らな板といった感じだ。
■ 牛乳の劣化を簡単に検知
そして、それらによってなにか役に立つものを作れないかということで、考え出されたのが、牛乳の劣化を検知する紙パック用のキャップだ。
この“スマートキャップ”は、キャパシターとインダクターを使って共振回路を形成している。紙パックを振ると、牛乳がキャパシターの隙間に入り、電気信号となる。牛乳のなかのバクテリアが増えると、その信号が変化して電波の周波数が変わるため、ワイヤレスで劣化が検知できるというものだ。

この3Dプリンティングの技術を使えば、食品のパッケージに装備してもいいほど安価に電気回路を作ることができようになると思われます。店舗の食品棚にある食品の鮮度を、携帯電話でチェックできるようになるとしたらいかがですか?
と研究者のひとりLiwei Lin教授はいう。
正直にいって、食品の鮮度を検知するセンサーがそんなに必要だとは思わないが、じっさいこの“スマートキャップ”はあくまでもこの3Dプリント技術をアピールするための最初のサンプルにすぎず、“スマートキャップ”がこの技術の目的というわけではないようだ。
彼らの研究室は、現在エネルギー変換器を搭載した人体に埋め込むことができるデバイスなどの技術を研究している。血圧や筋肉の緊張や薬剤の濃度を検知できるようなものだ。
現在すでに身体に埋め込む各種小型デバイスの開発が進んでいるが、次に重要になるのは、それらを安価に作る技術だろう。そこを3Dプリント技術で改善すれば、埋め込みデバイスはさらに普及しやすくなるはずだ。