岩井志麻子【いなかった幽霊】3/4
今ではすっかり大らかな熟女となったフユ子も、大人しい女子大生の頃があった。 その頃の妙な思い出といえば、近くの踏み切りであった事件と、それにまつわる怖い話をよくしてくれた老婦人だ。ところが、老婦人の死後に親しくなった近所の人や同じマンションの住人に聞いても、誰一人としてそんな事件は知らなかった。 老婦人の素性も、誰も知らなかった。老婦人と唯一つきあっていたフユ子ですら、考えてみれば姓しか知らない...