日本人のDNAレベルに刻まれた雑煮を食べつくす「ご当地雑煮祭 2015秋」

お雑煮は正月だけじゃない! ご当地雑煮祭 2015秋

 寒くなってきたので、汁ものが恋しい。普通はここで“鍋”かもしれないが、あえての“雑煮”を提案したい。

 雑煮は、汁ものの中に地方ごとに特色のある食材とお餅が入っている究極のローカルフード。

 餅は丸か角か、焼くのか煮るのか、具は肉なのか魚なのか、どんな野菜を入れるのか、何の出汁を使うのか……などなど。地方によって、これほどバリエーション豊かな食べものも珍しい。

 ご当地雑煮祭り 2015秋 6種類のお雑煮と10種類の地酒で至福の乾杯を!

 基本はお正月に食べるハレの日の料理だが、そんなこと関係ないとばかりに、東京カルチャーカルチャーで、夏に続き第2回目となる「ご当地雑煮祭り 2015秋」が開催された。イベニア取材班は「雑煮がどれだけスゴイ食べ物なのか」ということを、実感することになる……。

「夏にお雑煮のイベントを開催して、かなり反響がありました。みんな正月に関係なくお雑煮が好きなんだな〜と思いまして、2回目の開催にいたりました」と東京カルチャーカルチャー・プロデューサーのテリー植田さん。

 今回は、閃き作家の高柳優さんのご当地クイズ・パズルもあるという。様々な方向から雑煮を楽しめるイベントになりそうだ。

 入場時に、参加者の出身地とふるさとのお雑煮のお餅のアンケートをとり、マップ化していた。「丸餅か、角餅か」、「焼餅か、煮た餅か」、それぞれ4タイプに分け、シールで色分けする。東京近郊などの東側は焼いた四角いお餅、西側は丸い煮たお餅と分かれる結果に。一目でお雑煮餅の分布が分かるのが面白い。

世界でひとり!? お雑煮マイスターによりセレクトされたお雑煮たち

 本日のお雑煮は、お雑煮マイスターである粕谷浩子さんのセレクト。粕谷さんの立ち上げたお雑煮研究所でパッケージ化された(または今後される予定の)お雑煮だ。

 粕谷さんは、日本、いや世界ただ一人のお雑煮研究家。親の転勤が多く、鳥取、北海道、新潟、静岡、広島など地方へ引っ越していた。そのたびに、さまざまなご当地のお雑煮に出会い、お雑煮のおもしろさに目覚めたそう。今でも全国各地をまわって、さまざまな地域のお雑煮を研究している。

 ちなみに粕谷さんの母方のご実家は香川県で、あんが入った餅入りの白みそ雑煮。父方のご実家は広島県、牡蠣のはいった豪華なお雑煮をよく食べていたのだとか。

 本日登場のお雑煮6種類を南から順に食べてみた。

[鹿児島県 焼きエビ雑煮]
干して焼いたエビとしいたけの出汁。九州の甘い醤油を使ったすまし仕立て。具はほうれん草、もやし、かまぼこなど。エビが香ばしく、出汁の甘さもよかった。具がもやしというのも新鮮。

[香川県 あん餅雑煮]
あんこが入ったお餅がイン。いりこ出汁、白みそを使用。最初はびっくりしたけど、あんの甘さと白みそのまろやかなしょっぱさが意外といける。会場からは「あり得ない!」「不思議〜」といった声も。筆者も初めて食べた。上にかかった青のりの香りが食欲を誘う。

 香川県は、昔から和三盆の産地。高級食材のため庶民は食べられないけれど、お正月くらいは食べたい! ということで餅の中に隠して食べていたのが起源だそう。様々な歴史が詰まったお雑煮、確かにおもしろい!

[奈良県 きなこ雑煮]
白みそ仕立て。具はお豆腐とにんじん。珍しいのが、汁の中のお餅を取り出してきな粉につけて食べるところ。これも初めての体験。粕谷さんいわく、お餅を取り出して食べることは、全国的にも割ある方法だそう。岩手では砂糖や出汁で味付けした「くるみだれ」につけて食べる地域があったり、福岡では、納豆につけて食べる地域もあったりするとか。雑煮、なんて自由なんだ!

[東京江戸雑煮]
昆布・カツオ出汁のすまし仕立て。鶏肉とにんじん、ほうれん草など。でっかい椎茸もイン。イベニア取材班2人とも(秋田&茨城出身)「一番、馴染みのある味だね」と意見が一致。

 ちなみに、本日一番早く品切れになったのもこちら。東京近郊の出身の人が多かったというのも理由のひとつかも。西のほうではみりんを使わないことが多いそうなので、そこが味付けにおける大きな違いのよう。

[新潟 新発田 鮭いくら雑煮]
鮭と、あえて火を通してトロッとさせたいくらが特徴。だいこん、にんじん、こんにゃくなどが入ってとっても具沢山。鮭といくらの贅沢コンビ。 本来はもっと具沢山、というこの新発田の鮭いくら雑煮。毎年1月に「全国雑煮合戦」がおこなわれる新発田市から、新発田商工会議所の青年部の方々が登場した。お雑煮で町おこしをしているという新発田市。タイ風、中華風、豪華なカニ雑煮、スイーツ雑煮まで実にさまざまな雑煮を開発している。これは、ぜひとも一度食べてみたい!

[帝京平成大学生によるココナッツカレー雑煮(リニューアルバージョン)]
これまた変わり種! カレーにお餅。確かにあわないワケはない。ただのカレーじゃなくて、海老出汁がしっかりでていて、うれしい意外性。前回の反省をふまえ、桜えびを増量したのがリニューアルバージョンだそう。

 栄養士を目指す若い学生さんたちが、雑煮の未来を変えていくんだ……! と勝手に期待。

 実食してみて気づいたのは、どの雑煮にも高い頻度でにんじんが入っていること。さまざまな出汁や調理法のなかで、色や固さ、味が違っていて、各々のお椀の中にひっそりと佇み、なじんでいた。雑煮とにんじんの切っても切れない関係がそこにはあるのかもしれない……。

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