2016年“第3次世界大戦”は始まっていた(6)「中東に近づくプーチン大統領」

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2016年“第3次世界大戦”は始まっていた(6)「中東に近づくプーチン大統領」

 王族による強い支配体制の崩壊で、生まれてきたのが、テロリスト集団ISだ。その主なターゲットになったのはシリアであった。

 シリアにおいてISは油田を中心とした資源がある都市を次々に確保、勢力を拡大していった。ISは原油という、容易な資金調達手段を手に入れたのだ。

 もちろんISの原油は、正規のルートで販売できないため、主に2つのルートで売られている。1つはトルコの大統領ルート、もう1つは、シリアの政府ルートである。「悪貨は良貨を駆逐する」の言葉通り、闇石油という安価な石油が生まれたことで、石油市場の価格は二重価格状態になってしまい、石油相場は破壊された。そこに中国の景気悪化・減速と需給バランスの急激な悪化、アメリカでシェールガスという、新たなエネルギー源が生まれる。この2つのことが同時に起きたことによって、石油価格は崩壊し、中東の経済モデルが完全に壊れてしまったのだ。貧困は王族の弱体化を意味し、さらなる紛争を生み出し、戦火はますます拡大していくだろう。

 その中東への関与をますます強めているのが、プーチン大統領(63)のロシアである。

 中東社会の中核・サウジアラビアは、これまで親米国として存在していた。ところが王族の世代交代などで権力関係が変わって、現在はアメリカからかい離しつつある。それを見たアメリカは、イランとの間で国交を復活させ、サウジが激怒した。この構図の中で、ロシアはサウジ、イラン両国に接近したのだ。

 ウクライナ問題と、続くクリミア独立により、アメリカはロシアに対して強い金融制裁をかけた。しかし、この金融制裁をひとつだけかけられなかったのが、エネルギー分野だ。ヨーロッパの原油、天然ガスの3分の1はロシア経由のパイプラインで運ばれている。これを止められれば、ヨーロッパ──特に東欧諸国は寒い冬を乗り切れない状況があるためだ。ロシアは中東における影響力を強めることによって、自国の資源価格のコントロールもできるというメリットを得ようとしている。ロシアによるIS討伐は、アメリカをはじめとする有志連合とは、同床異夢で行われているのだ。

 実は、資源問題の混乱を生み出したのは、日本である。

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