北朝鮮の人権問題を担当する国連特別報告者が、金正恩第1書記に対して「人道に対する罪」を問う可能性を強調している。しかし金正日氏は、まだ30代の半ばでしかない。
実際のところ、その罪のほとんどは彼の祖父(金日成)と父親(金正日)によって重ねられたものだ。彼らは政敵や反対派を「血の粛清」でことごとく葬り去ってきた。
犠牲者の中にはもちろん、一般の国民も含まれている。
たとえば、黄海製鉄所の虐殺事件がそうだ。韓国の各メディアに掲載された脱北者の証言によれば、事件は次のような経過を辿った。
事件が起きたのは、北朝鮮が未曾有の食糧難「苦難の行軍」の真っ只中にあった1998年。その数ヶ月前、製鉄所の支配人らは、10万人近い従業員の食料を調達するため、圧延鉄板を中国に輸出してトウモロコシと交換しようと決断。圧延鉄板は軍需用であるため、中央政府に報告せず事を進めた。
中国への売り込みは成功裏に運び、黄海製鉄所所有の船は大量のトウモロコシを積んで戻ってきた。
ところが港に着いた瞬間、乗っていた幹部や乗組員全員が軍の防諜機関に連行されてしまう。従業員たちはトウモロコシの到着を喜ぶ一方で、逮捕情報に憤りを隠せなかった。
結局、幹部8人は公開銃殺されることになった。刑場に連行されてきた彼らは、目隠しをされた上にひどい拷問を受けたせいか、まともに歩けない様子だった。見守る人々の間から、「私腹を肥やすためじゃなかったのに銃殺はひどすぎる」とのささやきが漏れた。
8人は柱に縛りつけられたまま、自動小銃で数十発の銃弾を浴びた。銃声の残響がやむと住民たちがあちらこちらで「銃殺なんてひどいじゃないか」と騒ぎ出した。
ある中年女性はマイクを手に、こう叫んだ。
「こんなに無残に銃殺するなんて!生産を増やして偉大なる将軍様(金正日氏)に喜びを差し上げようという思いで幹部たちはトウモロコシを持ってきたのに、方法が間違っていたら処罰すべきとはいえ、銃殺までするのはあまりにもひどいです。