金正恩氏の「核武装」を阻止するのに必要なこと

| デイリーNKジャパン
金正恩氏の「核武装」を阻止するのに必要なこと

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は13日、今年1月時点の核弾頭総数が世界で約1万5400個となり、昨年から約450個減ったとの推計を発表した。しかし全体の傾向とは逆に、昨年6〜8個だった北朝鮮は最大10個に増加したとしている。

また、この数字は寧辺の実験用黒鉛減速炉(原子炉)で生産できるプルトニウムの量から推計したもので、高濃縮ウランを用いた核兵器製造の可能性については「不明」としている。仮にウラン型原爆の製造に成功していれば、個数はもっと多いかもしれない。

核の暴走の裏に「虐殺」

まさに、戦慄すべき現実と言える。北朝鮮の3代にわたる世襲体制の中でも、最も対話に消極的に感じられる独裁者が、核武装を強化しているのだ。

だが、むしろ驚くべきは、もはやこんなニュースが大きく取り扱われなくなってしまった現状の方かもしれない。

1993年、北朝鮮が初めて中距離弾道ミサイル・ノドンを試射したときの大騒ぎは今も思い出される。第1次核危機が始まっていたこともあり、日本政府は北朝鮮のミサイル開発を直接の安保危機と認識。公安警察は在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)に対する捜査マニュアルを極秘裏に作成し、「600億円送金説」の解明に突き進んだ。

しかし当時と比べると、日本や国際社会の世論は、北朝鮮の核開発やミサイルにすっかり慣れてしまったようにも見える。

北朝鮮は最近、ノドンよりも射程が長く、日本全土とグアムの米軍基地までを射程に収めるムスダンの試射に連続して失敗しているが、それもいずれ技術力の向上につながるだろう。金正恩氏が試射と失敗を繰り返しているのは、メンツよりも核武装を優先させる強い意思の表れだ。

では、我々の側には、北朝鮮の核武装を拒否する強力な意思があるだろうか。マスコミの中には、北朝鮮の行動は、米国との対話を渇望するが故の一種のラブコールであると解説する向きもあるが、筆者の意見は違う。

国内外で残忍な人権侵害の責任を追及され、虐殺者のレッテルを貼られつつある正恩氏は、たとえ核を放棄しても、日米韓やEUなどの先進民主主義国からはまともに相手にしてもらえないことを知っている。

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