空から汚物に熾烈な水道水争奪戦…「金正恩住宅」の弊害

| デイリーNKジャパン
空から汚物に熾烈な水道水争奪戦…「金正恩住宅」の弊害

中国・丹東市の川向かいに位置する北朝鮮の新義州(シニジュ)市。中朝国境だけに物流も盛んなことから、平壌に次いで豊かと言われている新義州市で、昨年から建築ブームが起こっている。

金正恩党委員長は「カネの出処は問わない、投資者の利潤を保証してやれ」という方針を下し、ドンジュ(金主)と呼ばれる北朝鮮の新興富裕層は高層マンションの建設に投資。首都・平壌のみならず、各地方都市では不動産投資ブームが起きた。

投資ブームといえば、いかにもバブリーな話に聞こえるかもしれないが、裏では悲惨な事故が多発。2014年11月には、平壌市内の23階建てマンションが突然崩壊し、450人以上が犠牲となった。事故多発の一因は、北朝鮮特有の「速度戦」と呼ばれる突貫工事であり、北朝鮮当局の無謀な計画が引き起こした。

階下に汚物を…

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)や、その他の内部情報筋の話を総合すると、いくら新義州市に高層マンションが建築されようとも、実際に居住する人々はそれほど多くない。一体なぜか。

新義州の情報筋は、「具体的な売れ行きはわからない」と前置きしながらも、「マンションの半分以上が空き部屋のままだ。日暮れ時にマンションを見上げても、電気のついている家は3分の1ほどしかない」と述べた。

投資用に購入したことから住んでいないだけなのか、それとも売却されていないのかは不明だが、そもそも北朝鮮では一般的にマンションの高層階はさほど好まれない。10階から15階建てのマンションは、電力難でエレベーターが使えず、階段での登り降りを余儀なくされる。電気が来ないため、ポンプが使えず、水道が使えない。

水道が使えないことから、高層階の住民の中には、信じられない方法で「トイレ問題」を解決する人々がいるぐらいだ。

比較的豊かと言われている新義州市内ですら、電気はほとんど供給されず、水道の水が出るのも朝夕の1~2時間という家がほとんどだ。マンションの高層階に住んでいる人は、地上にある井戸で水を汲み、それを持って高層階まで運ばなければならない。

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