空から汚物に熾烈な水道水争奪戦…「金正恩住宅」の弊害 (2/2ページ)

デイリーNKジャパン

そんな重労働に耐えきれず、住民たちは、中国から水道ポンプを取り寄せて、地上の水道管と自宅のポンプを繋げて、水をくみ上げるという荒技まで駆使している。ただし、この荒技によって、町内全体の水圧が下がり、一般の民家で水道の水が出なくなってしまった。そして、今度は一般住宅が、同じ方法で水道管にポンプをつなげて、自宅に水を引っ張るという荒技で対抗。毎朝のように、熾烈な水道水争奪戦が繰り広げられている。

500人死亡の地獄絵図

こうしたドタバタ劇の原因は、水道施設の容量超過と老朽化によるものだ。

ある新義州市民によると、新義州の浄水場は国境を流れる鴨緑江の中洲、威化島(ウィファド)にあるが、日本の植民地時代に作られたものをそのまま使っており、老朽化が進んでいる。さらに、建設当時は5万人だった人口も、今では35万と7倍に増えたため、水圧が保てないのだ。

せっかくの新築高層マンションだが、それを支えるだけのインフラが北朝鮮の地方都市には存在しないのだ。

北朝鮮は、建国以来、社会主義体制の優位性を誇示するため、見栄えや計画完了を追究する国家事業を行ってきたが、その内実がお粗末きわまりないことを示すエピソードと言える。なによりも、こうした事業の裏には、常に人民大衆の犠牲が伴っているのだ。

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