テリー 健さんと八名さんは、大学が同じだったんですよね。
八名 うん、2人とも明治大学の商学部で、かわいがってもらいました。ある時、「八名、お前にこれやるわ」って、着てるジャンパーを脱いでくれてね、「こんな高価なジャンパー、自分では買えないな」と思って、大切にしまってたんだけど、あるドラマのロケで、上野駅を逃げる犯人役をやった時に、役作りでそのジャンパーを着たんですよ。だけど隠しカメラで撮っていたもので、本物の犯罪者と間違えられて、ロケだと知らない人たちにボコンボコン殴られてね、ジャンパーがボロボロになっちゃった。
テリー せっかく健さんにもらったのに。それは報告したんですか。
八名 報告しました。「すみません、先輩にいただいた服がボロボロになりました」って。その時は「またお前にやるよ」って言ってくれましたけど、その約束はついに果たされませんでした。
テリー 僕は「唐獅子牡丹」以前の、まだ神格化される前の健さんも好きなんですよ。甘い二枚目の役が多くてね。
八名 サラリーマン役とかあったね。あの頃の健さんは、まだ芝居ってものを探ってたんじゃないかな。
テリー それはどういう意味ですか?
八名 演じるというより、「まず自分のいい顔を出さなきゃ」と思ってるように俺には見えたね。当時は、出演作品にも恵まれてなかったから。まずはそういう勉強から入ったんじゃないかな。
テリー 確かにその頃の出演作の主役は、江利チエミさんや美空さんでした。その頃、健さんは愚痴を言ったり、弱みを見せたりしたんですか。
八名 それは見たことないな。何でもこらえる人だから。ただ、健さんと鶴田(浩二)さんはあんまり仲がよくなくてね、お互いに険悪な雰囲気だった。