天才テリー伊藤対談「八名信夫」(2)大スターばかりの現場は大変ですね (2/2ページ)
テリー お互い東映の大スターじゃないですか。何でですか?
八名 当時、俊藤浩滋さんというプロデューサーがいましてね。鶴田さんと兄弟分みたいな関係だったんですよ。その俊藤さんに健さんはものすごくかわいがられていたから、そういうところで鶴田さんの嫉妬もあったんじゃないかな。
テリー それは現場でも大変そうですね。
八名 そうなんです。正月映画はオールスター出演じゃないですか。セットの中にガンガンがあって、そこに片岡千恵蔵さん、市川右太衛門さんみたいな大御所が座っていて、さらに健さん、鶴田さん、若山(富三郎)さんもいる。
テリー すごい絵ですね。
八名 で、それぞれに若い衆が10人ぐらいついていて、餅を焼いて食べてたりしているわけですよ。
テリー すごい緊張感のある空間ですね。しかも誰かの近くにいたら、他のスターに「何だあいつ、向こうで餅なんか焼きやがって」って言われちゃったりするんじゃないですか。
八名 それをあからさまに言うのは、若山さん(笑)。一度、鶴田さんの手首をマッサージしてたら、若山さんに「お前、いつから鶴田の一派に入ったんだ」って怒られたことがあってね。その若山さんの一件があってから、俺はオールスター出演の時にセットへ入らないようにしたんだよ。入ったら絶対誰かのところに行かなきゃいけないし、他のスターにも気を遣うから。
テリー でも、そんなことも含めて、本当に「スター」と呼ばれる人が多かった、いい時代でしたね。
八名 うん、「活動屋っていうのはこういうことなんだ」ということを教えられたね。