【不朽の名作】妙な雰囲気がハマればクセになるかもしれない「キャバレー」

| リアルライブ
【不朽の名作】妙な雰囲気がハマればクセになるかもしれない「キャバレー」

 この作品、ひと言で言うと“珍作”だ。クソ映画とも名作とも言い切れない全体的に独特のトーンやムードがあり、どこか落ちつかない。ただ空気感を重視しただけの、特に本編とは関係ないオシャレ風会話なども、所々で挟まれるため、嫌いな人には全く耐えられない。今回扱う『キャバレー』(1986年公開)はそんな作品だ。

 メインのストーリーラインは、ジャズのサックス奏者で主人公・矢代俊一(野村宏伸)が、鹿賀丈史演じるヤクザの滝川と、滝川の昔の女である南部恵(倍賞美津子)さらに、複数のヤクザ者と寝て問題起こす英子(三原じゅん子)の3人と関わることで、裏の社会を体験するというもの。しかし、俊一はそこまで方々で起きている問題に積極的に首を突っ込まないので、時々周りに振り回されはするが、ギリギリ傍観者的立場を維持している。唯一、前半の波止場のシーンで、滝川を襲うために対抗勢力の組員が待ち伏せしているのを報告しにいく部分と、英子と肉体的な関係を少しでも持ってしまう点をのぞけば。

 実家が裕福で、趣味に生きているお坊ちゃんサックス奏者が、そういった人間の世界を知って、哀しみや怒りなどを糧として一人前のジャズメンを目指すような、ハードボイルド作品を目指しているのはわかる。だが、主人公がそこまで他の登場人物との関わりが強くないため、成長劇としてはイマイチなのだ。結局印象に残るのは劇中に頻繁に流れる『レフト・アローン』ばかり。最近の無難に作ろうとする邦画ではありえないような手法だ。ある意味斬新。ちなみに、主役を演じるに際し、野村はサックスの猛特訓をしており、吹き替えなしらしい。演奏の演技はかなり様になっているのだが、かわりに他のシーンでの演技がかなり酷い。そういった要素もこの作品の全体的な訳のわからなさに手を貸している。

 なお、セットはかなり凄い。このあたり、当時の角川映画の一点豪華主義がかなり出ている。ただ、雰囲気にこだわりすぎて、リアリティーという部分が非常に薄いのが難点だ。これが禁酒法時代のアメリカのハーレムが舞台ならば多少納得がいくのかもしれないが。演出もハーレムが舞台の作品『コットンクラブ』を強く意識している。そのせいで「関東連合」という日本名の架空ヤクザ組織の名前がどこか気の抜ける部分になってしまう。

ピックアップ PR 
ランキング
総合
カルチャー