北朝鮮、ジャガイモ豊作でも農民大損の訳

| デイリーNKジャパン
北朝鮮、ジャガイモ豊作でも農民大損の訳

北朝鮮の協同農場では、農民のモチベーションを上げるために、インセンティブ制度である「圃田担当制」が施行されている。しかし、北朝鮮当局がこの制度を守らず、農民が激しく反発している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、今年のジャガイモの収穫量は1ヘクタール当たり28〜30トンで、国の定めた計画量26トンを超過達成した。西隣の慈江道(チャガンド)の情報筋も、今年の収穫量は昨年比の2割増しを予想。仮に、全国的に2割の増産が達成できたとすれば、580万トンとなり、全国民に食料が行き渡ることとなる。

これだけの豊作ならば、協同農場の農場員は「圃田担当制」に基づき、かなりの量の農産物を分配してもらえる。さらに、余剰農産物を市場で売却して現金収入が得られ、それが新たな消費や投資へとつながり好循環になるはずだ。

しかし、そのあてが外れる。当局が、約束した分配の量を守らなかったのだ。

当局は、約束を守らないだけでなく、農場員に「収穫したジャガイモでデンプンを作って供出せよ」との指示を下す。1キロのデンプンを作るには、10キロのジャガイモが必要となるため、農場員は大損だ。

慈江道の情報筋によると、「(中央の指示は)生産量とは関係なく、農場員1人あたり1日550グラムの食料を配給せよ」というもので、圃田担当制が完全に反故にされた形になったと伝えている。

当然のことながら、農民からは強い不満の声が上がっている。

北朝鮮は、1946年の土地改革法令を皮切りに段階的に農業の集団化を進め、1962年に完了した。ところが、働いても働かなくても得られる配給の量は同じだ。全ての収穫物を国に供出することを求められることも少なくない。当然、農場員のモチベーションは上がらない。

こうしたなか、農場員は協同農場ではなく、自宅の周りや山の中に作った「個人耕作地」に重点を置く。そこで質の高いものを多く生産すれば市場で高値で売れ、現金収入が増えるからだ。

この状態を改善するために導入されたのが「分組管理制」「圃田担当制」だ。田畑の管理を家族単位に任せて、定められた量以上の収穫があれば、それだけ分配が増える。

ピックアップ PR 
ランキング
総合
海外