「ガサ入れするなら令状を見せろ!」金正恩体制に抗議を始めた北朝鮮市民

| デイリーNKジャパン
「ガサ入れするなら令状を見せろ!」金正恩体制に抗議を始めた北朝鮮市民

北朝鮮は、法よりも最高指導者の「マルスム」(お言葉)が優先される社会だ。金正恩党委員長の指示、命令、教示、あるいは「党の唯一領導体系確立の10大原則」などが事実上の法、あるいは宗教で言うところの「戒律」として効力を発揮する。法治主義とは程遠いお国柄なのだ。

「虐殺」の事例も

また人権についても、それがどんなものであるかという概念すら知らないから、自分の権利が侵害されても抗議する言葉を持てなかった。

しかし一部ながら、そのような状況に変化の兆しが見えてきた。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、人々の間で「法意識が高まりつつある」として、次のような事例を紹介した。

「保安署(警察署)は宿泊検閲という名目で、家宅捜索を行ってきた。今まではおとなしく従っていたが、最近様子が変わった。『捜索令状を見せろ』と要求するようになったのだ」

北朝鮮では、自宅に他人を泊める際に保安署に届け出なければならない。それでも無断で泊めたり、許可なしに自宅で宿泊業を営む人もいる。それを取り締まるための家宅捜索が宿泊検閲だ。保安員(警察官)は家に踏み込み、不審者がいないかを確認する際には捜索令状を見せなければならないのだが、これが完全に有名無実化していた。

情報筋は、流通の中心地、平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)市で起きたエピソードを紹介した。

「保安員が、あるトンジュ(金主、新興富裕層)の家を家宅捜索した。ところが、いくら探しても密輸品は見つからなかった。すると頭にきたトンジュは『令状なしのガサ入れは違法だ。人権侵害じゃないか』と大声で騒ぎ保安員に反抗したので、町中の人に知れ渡ってしまった」

北朝鮮で、一般の国民が権力に対して抗議するなど、かつてなら命がけだった。実際、当然すぎる主張をしただけで、虐殺の憂き目に遭った人々もいる。

保安員は、宿泊検閲を利用してトンジュの家を狙い、家宅捜索で難癖をつけてカネを巻き上げることが少なくない。

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