「ガサ入れするなら令状を見せろ!」金正恩体制に抗議を始めた北朝鮮市民 (2/2ページ)

デイリーNKジャパン

このトンジュはおそらく、同様の被害に何度も遭ったのだろうが、「法のイルクン(官吏)が違法に人を逮捕、拘束、拘引したり、身体や家屋を捜索したり、財産を押収、没収した場合には、1年以下の労働鍛錬刑に処する」と定めた刑法241条のことを知り、大きく出たようだ。

なぜ人々の間で法に関する意識の変化が置きつつあるのか。情報筋は「韓国のラジオが情報源」だと言う。

「最近、町では『他の国では令状なしに家宅捜索をするのは人権侵害だと南朝鮮(韓国)のラジオで言っていた』『家宅捜索に来られたら、礼状を見せろと要求した方がいい。違法ではない』『保安員もまずいことをしているという意識はあるようだ』などと口々に話している。」(情報筋)

韓国には北朝鮮向けの放送を行っている放送局が10以上ある。中でも公共放送のKBSが運営する「韓民族放送」は、2つの周波数を使い、1500キロワットと出力も大きく、1日20時間の放送を行っている。ちなみに、日本のNHKラジオ第2放送の出力が最大で500キロワットであることを考えると、1500キロワットがいかに強力かがわかる。

現在放送されている番組の中に法律専門番組はないが、トークに出てくる法律の話を聞いた北朝鮮の人々の間で、法についての意識が高まりつつあるようだ。

さらに、中国から放送される朝鮮語のラジオ放送には法律番組はもちろん、「法制チャンネル」という局もある。「法治」を強調する中国政府の意向の反映だ。

米国は北朝鮮住民に対するラジオ放送を強化すると伝えられている。じまた、英BBCも、独自の対北朝鮮放送を検討している。それほどラジオは、北朝鮮の住民の意識変化に重要な役割を果たしているということだ。

ただ、「人権」や「法」とは何かを知った人々が、どんな場面でも権力に強く出られるわけではない。公開処刑や政治犯収容所に象徴される金正恩体制の恐怖政治は、いまなお続いているからだ。

「「ガサ入れするなら令状を見せろ!」金正恩体制に抗議を始めた北朝鮮市民」のページです。デイリーニュースオンラインは、高英起人権デイリーNK宗教ニュース海外などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る