一つの物語の中に、SF、ラブコメディー、そして社会批評までが注ぎ込まれ、それがちゃんとエンターテインメント作品としてまとめ上げられているこのインド映画。
スクーターで2人乗りをするシーンなど、名画『ローマの休日』へのオマージュを感じさせる演出は、ベタながら安心して感情移入できます。
153分という長さを感じさせないサービス精神はインド映画の特徴だそうですが、とかく技術力の張り合いに陥っているハリウッド映画を、もはや完全に凌いでいるんじゃないでしょうか。
冒頭に「特定の宗教をけなしたり、笑ったりするものではありません」といったクレジットが入ります。
日本のような宗教観の緩い国ならともかく、宗教をめぐる対立でインドはパキスタンとの間で紛争を起こしているというのに、宇宙人の視点とはいえ、宗教の矛盾に踏み込んだのは、相当に気骨あることではないかと思います。
今なお根強い宗教対立で恋愛すらままならないのは、「観光目的」で訪れた「常識知らず」の宇宙人から見れば奇妙なことと笑い飛ばすこの映画。インドや全米で記録的なヒットだそうなのですが、日本で「この男に常識は通じない」というキャッチコピーと『PK』という邦題で、この面白さが伝わるのか、ちょっと心配になりました。
目を見開いたまま、一切まばたきをしない演技で異星人らしさを表現した主人公PK役のアーミル・カーン。どこかMr.ビーンを思わせるひょうきんさです。
そして、「インド人女優に外れなし」の大法則。本作のヒロインもショートヘアが新鮮で、とてもチャーミングです。
自分はインドへ一度だけ行ったことがあります。ロシアや南米だとモデル級の美女がゾロゾロ歩いていますが、インドではこういう女優クラスの美女にはお目にかかれなかったなぁ(笑)。
それよりも鮮烈に記憶に残っているのは、ヒンドゥー教の最大の聖地バナラシの尋常でないカオスっぷり。
お祈りしている人、沐浴している人、飯食っている人、家族を火葬している人などが、渾然一体となってわけが分かりません。年末のアメ横の長さと幅を遥かに広くして、1平方メートル当たり10倍の人をぶち込んだような感じとでも申しましょうか。
やくみつるの「シネマ小言主義」 一皿で多様なカレーが味わえるような映画 『PK』
2016.10.31 16:00
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