フィリピンのドゥテルテ大統領が、10月25日に来日し、日本側は当惑しながら迎えた。同大統領がこれまで、暴言を繰り返してきたからだ。
例えば、9月30日には「ヒトラーは300万人のユダヤ人を虐殺したが、フィリピンには同じ数の麻薬中毒者がいる。彼らを虐殺できれば幸せだ」と記者団に語ったり、9月5日にラオスで開催されたASEAN首脳会議の際には、オバマ大統領を「くそったれ」と呼んで、首脳会談が中止になったりと、さんざん物議をかもしてきた。
そして、10月20日に北京の人民大会堂で行った講演のなかで、「私はプーチンに会いに行き、彼に『ここに世界に逆らう国が3カ国ある。中国、フィリピン、そしてロシアだ』と言うかもしれない」と発言し、会場を埋めた中国側出席者の拍手喝采を浴びた。さらに、「米国との決別を宣言する。米国は経済面でも軍事面でも(フィリピンを)失った」と言い放ったのだ。
これにはドゥテルテ大統領の周辺も大慌てで、火消しに躍起になった。
同行していたドミンゲス財務省は「我々は西側との関係を維持する。だが、隣国との融和も望んでいる」と軌道修正。ロペス貿易産業相も翌日になって、「大統領は経済的な見地から決別については話していない。我々が米国との貿易や投資を止めることはない」と発言して、不快感を示す米国に対し一定の配慮を見せた。
しかし私は、一連のドゥテルテ大統領の行動が、大きな試金石になると考えている。それは、“米国に逆らうと何が起きるのか”ということだ。
これまでも、ロシアと中国は、米国に逆らい続けてきた。しかし、ロシアも中国も大国で、しかも核兵器を保有している。逆に、大国でもない、核兵器も持たない普通の国は、米国か中国か、ロシアにこれまで従属してこざるを得なかったのだ。
日本はこれまで、もちろん米国全面服従の方針でやってきた。国内に多くの米軍駐留基地を置き、駐留費用の大部分を負担してきた。経済面でも、日米交渉のなかで米国の要求は何でも受け入れ、規制緩和・民営化や不良債権処理のなかで、米国資本に日本人が築き上げた貴重な財産を二束三文で売り渡した。そして、小学校での英語教育を義務化することで、日本語さえ、ないがしろにしようとしている。
森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 ドゥテルテは試金石
2016.11.10 14:00
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