◎快楽の1冊
『青光の街(ブルーライト・タウン)』 柴田よしき 早川書房 1700円(本体価格)
小説を読んでいて、この先はページめくっていくとこのような展開になるんだろうな、と予測することがある。あまりに多くの読者に予測させてしまい、果たしてその通りになる小説は出来が悪いと言っていい。こんな展開なら俺だって書けるぜ、としらけさせてしまうからだ。
本書『青光の街』は予測させるような、させないような、微妙な中間地帯に立って読者を引き込んでいく小説だ。主人公・草壁ユナは小説家でありながら、探偵会社の所長でもある。もともと、担当編集者であった男性が、退職をして探偵会社を作る、と宣言した。協力してくれないか、と言われたのが所長になるきっかけだった。
小説家でありつつ探偵会社の所長。なかなかとっぴな設定である。基本的な立場は小説家なので、実際の調査は部下たちに任せている。報告書を読んで、判断、指示をする。
ストーリーの中心は連続殺人事件だ。東京で次々と殺された遺体が見つかる。いずれも、電飾が残されていた。クリスマス・ツリーに施されるような電飾のコードである。どうして犯人はこんな奇妙なことをするのか。警視庁の刑事たちは謎を解明しようと躍起になるが、ユナもこの事件に関わることになる。警察と探偵事務所、双方が連続殺人の解決に挑む。
本作は不思議なゆるやかさに包まれた小説だ。連続殺人に電飾、というと何か猟奇的な殺人ストーリー、と思わせるが、その解決のために刑事、探偵たちが一直線に猛突進していくわけではない。何となく、ゆるやかでもある。ユナがパンを焼いて喜びを感じる日常などが随所に盛り込まれる。読者は、そのシーンでは事件のことを忘れてしまう。本筋から付かず離れず、という不思議な魅力があるのだ。いい意味で読者の予測をはぐらかし、結末でいきなり裏切る巧みな作品だ。
(中辻理夫/文芸評論家)
【昇天の1冊】
かの山本晋也監督が執筆し、健在ぶりを示した書籍が刊行された。タイトルは『風俗という病い』(幻冬舎/800円+税)
山本監督といえば、深夜バラエティー番組『トゥナイト』(テレビ朝日系)で性風俗のリポートを担当していた。記憶に残っている読者も多いだろう。
本好きリビドー(130)
2016.11.19 18:00
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