「決断と実行」をウリに内閣発足から間を置かずに懸案の「日中国交回復」をやり遂げた田中角栄は、これに並行してすでにもう一つの政策課題に挙げていた“格差のない社会”を目指す「日本列島改造計画」の実践に着手していた。首相の私的諮問機関「日本列島改造問題懇談会」を発足させ、「角福総裁選」に向けて発表していた持論「日本列島改造論」に基づきながら、その改善に着手したということだった。
時に、高度経済成長の真っただ中にあり、物価上昇、公害、人口の過疎・過密など、さまざまな弊害が深刻化しだしていたことによるこの「列島改造懇」は、工場を過密な都市から過疎の寒村に移動させて労働力を過疎地帯に呼び戻す、日本列島全体を新幹線や高速道路などの交通ネットワークで結び地方に工業を興す、人口25万人規模の中核都市を全国に作りその都市を中心として公害のない住みよい空間を作るなどとまとめ、田中に提言したのだった。
田中は直ちに工業再配置計画に動き、工場移転促進地域を指定する促進法を政令で制定した。促進地域を東京を中心とする首都圏、大阪を中心とする近畿圏、名古屋を中心とする中部圏などの34地区を過密地帯と定め、逆に工場を誘致すると補助金が出る優遇措置が受けられる誘導地域に、北海道、東北、北陸、九州から27地区を指定した。ために、特に促進地域の地価は平均で18%上昇、誘導地域では軒並み20%を超え、合わせて東北新幹線や東北縦貫道路の計画も手伝って、例えばその“沿線”となる岩手県盛岡市などは実に40%近くの地価暴騰を見たのであった。
こうした中で、田中は「日中国交回復」の余勢とこの工業再配置計画に自信を見せ、この年11月、衆院の解散に打って出た。
しかし、田中の思惑とは異なり、12月の投開票で自民党は前回総選挙の300議席を大きく割り込み公認候補の当選271、無所属当選11人を入党させて、かろうじて282議席を確保したが、この271という数字は昭和30年11月15日の自民党結党以来、最低のそれであった。
ちなみに、この選挙で田中は延べ1万キロを率先遊説、33万人近くに語りかけたものであった。意気込みは知れたのである。
よもやのこの総選挙敗北が決まった直後、田中は首相就任後初のお国入りをした。
人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世 第55回
2017.02.10 10:00
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